生活機能障害とは何か

 日常生活を行うには、基本的日常生活活動度(Basic ADL)と独居機能を支えるより進んだ手段的日常生活活動度(Instrumental ADL)が必要です。生活機能障害とは、筋骨格系、心肺機能、認知精神機能において、これらの日常生活動作を支えるために必要な最低限の能力を保てなくなった結果生じる、生活能力の障害をいいます。

生活機能障害の成因

 加齢現象、慢性疾患の臓器障害、廃用症候群によるものに大別できます。

 加齢による筋肉減少や関節変形などは、移動系の生活機能障害の原因となります。具体的には、階段の昇降や入浴などに、困難が生じやすくなります。

 また、加齢による脳萎縮、無症候性の脳梗塞、認知機能低下は、独居機能を妨げます。とくに、複雑な機能である料理、服薬管理などが阻害されやすくなります。

 慢性疾患によるものでは、たとえば糖尿病による下肢の血管の狭窄のため歩行困難になったり、神経因性膀胱のため尿失禁が起こる、などといったことです。

 廃用症候群とは、安静にしていることでさまざまな障害が起こることです。寝たきりになると、床ずれができるだけでなく、関節の拘縮、筋委縮、尿失禁、誤嚥など生活機能を妨げる多くの症候(老年症候群)が出現してきます。

生活機能障害をどう評価するか

 高齢者の病態を生活機能障害の側面から捉えた考え方に、高齢者総合的機能評価(CGA)があります。

高齢者の機能評価の意義

 高齢者では、疾患は臓器や運動器(筋肉、腱、骨関節)の障害を引き起こし、その結果として移動(起立、歩行)、排泄などの能力が低下します。この能力低下が職場復帰の妨げになることもまれではありません。そのため高齢者の機能評価方法を理解しておくことは、医療・介護に関わるすべての職種に必須といえます。

 また注意すべきは、この流れは逆の方向にも存在することです。つまり機能低下が疾患を引き起こす場合もあるのです。

 たとえば、妻に先立たれた夫がうつ傾向になることはよくあるのですが、高齢者の場合はこうしたことから床に伏しがちになり、嚥下性の肺炎を起こすことも少なくありません。

高齢者総合的機能評価の構成成分と意味

 高齢者総合的機能評価とは、疾患評価(普遍的評価)に加え、

(1)日常生活活動度(ADL):最低限の生活の自立

(2)手段的日常生活活動度(IADL):家庭での生活手段の自立

(3)認知機能:物忘れ、認知症の程度

(4)行動異常:いわゆる問題行動、認知症の周辺症状の評価

(5)気分:抑うつ、不安、意欲

(6)人的環境:家族・介護者の介護能力、介護負担

(7)介護環境:家庭の物理的、経済的環境、介護サービスの利用

 といった項目を総合的に検査、評価し、個人の生活の個別性を重視したケアを選択する方法です。

手段的日常生活活動度の評価

 生活機能障害が起こると、在宅や外来患者では、まず生活の自立が阻害されます。評価の方法は、手段的日常生活活動度の8項目が簡便です。

 これは、1.公共交通機関を利用する(通院)、2.薬を自分で分けて正しく飲める、3.買い物、4.料理など疾患管理上も重要な項目と、 5.身の回りの掃除、6.洗濯など清潔関連項目、7.電話、8.金銭管理からなっており、8点満点で評価します。

基本的な日常生活活動度の評価

 70歳以上の入院高齢者では、3分の2が何らかの生活支援が必要な状態です。

入院・入所者では、とくに脳血管障害、認知症、大腿骨頸部骨折、心不全などが認められる人が、基本的日常生活活動度が阻害されます。評価項目は、階段昇降、歩行、車椅子移乗、トイレ移動・動作といった移動に関する項目と、洗面・歯磨きなどの整容、更衣、入浴、食事、排尿、排便の 10項目が重要です(Barthel Index:100点満点)。

認知症の評価

 身体に障害をもつ高齢者では、もの忘れや気分の落ち込みの頻度も高くなります。老人保健施設の入所者の認知症合併率は87%、病院の入院者のうつ合併率は、30%を超えます。

 認知症の評価は、スクリーニングとしては、少し前に言ったことが思い出せるかどうかを調べる「遅延再生」で行うのがよいとされ、定量的な評価は改訂長谷川式簡易知能スケールやMini-Mental State Examinationが用いられています。長谷川式(30点満点)では20点未満が認知症の疑い、10点以下は高度の認知症とされます。

 また、認知症の周辺症状である問題行動の評価も重要です。28項目からなる認知症行動障害スケールがあります。このうち21項目は、要介護認定の一次調査シートと共通なので、代用も可能です。

うつの指標

 うつの指標は高齢者では、Geriatric Depression Scale(GDS, Yasavage)の15項目短縮版(GDS15:15点満点)が用いられ、6点以上がうつ傾向、11点以上がうつ状態と判定されます。

 意欲の評価は、起床、挨拶、食事、排泄、活動の5項目を自発的、要働きかけ、無関心の3段階(2、1、0)で評価する、「意欲の指標」が用いられます。7点以下では、生命予後が悪いとされています。

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 各老年症候群にどのような機能評価スケールが最もふさわしいか、またその症候群の重症度に応じた機能評価方法は何が適当であるかについて、2003年度に、ガイドラインが策定されました。簡易に測定する方法として、7項目で評価する高齢者総合的機能評価CGA7も開発されています。

(執筆者:鳥羽 研二