どのような状態か

 高齢者では「眠れない」という訴えが非常に多く、若年者と比べて睡眠薬を使用している人の割合が高いとされています。とくに、寝つきが悪い、真夜中や明け方に目がさめてしまう、ぐっすり眠った気がしない、昼間居眠りをしてしまうなどの訴えがよく認められます。

 しかし、これらの訴えが治療を必要とする病的な睡眠障害によるものか、あるいは生理的老化に伴う自然な睡眠の変化によるものかは、必ずしも明らかではありません。

 一般に加齢によって、入眠潜時(床に就いてから寝つくまでの時間)が延長し、徐波睡眠(脳波が遅くなる深い眠り)の割合が減少し、中途覚醒(夜中に目がさめる)が増加するといわれています。また、睡眠そのものには異常はなくても、夜間の排尿回数が増加するなどの高齢者に特有な原因により、しばしば睡眠が中断されます。

必要な検査と疑われる病気

 高齢者でよく認められる睡眠障害の原因には、精神的ストレス、身体疾患、精神科的疾患、薬物などがあります。

 精神的ストレスとしては、近親者が亡くなるなどの喪失体験、退職、社会的孤立、入院や転居などの環境変化などがあげられます。身体疾患では、心不全、慢性閉塞性肺疾患、耳鼻科疾患、睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害などが、精神科的疾患としては、うつ病、不安、認知症などが重要です。

 また、各種薬物、不適当な睡眠習慣、アルコールやカフェインなどの嗜好品も、睡眠障害の原因になります。

 原因を明らかにするために、就寝時刻(いつも同じか)、寝つくまでに要する時間、途中で目がさめる回数、いびきや呼吸停止の有無、夜間尿の回数、日中の眠気や居眠りの有無などを調べます。睡眠時無呼吸症候群などが疑われる場合には、入院して脳波を含む睡眠ポリグラフという検査を行う必要があります。

 自分では睡眠の異常は感じていない人も、自分の睡眠に満足しているか、居眠りや疲労感が活動を阻害していないか、いっしょに寝ている人からいびきや呼吸停止、下肢の異常な動きなどを指摘されたことはないか思い出してください。

家庭での対処のしかた

 原因が明らかな場合には、それを治療または除去することが第一です。とくにうつ病は、適切に治療すれば完治しうる疾患であることを忘れないでください。また、長期にわたり睡眠薬を服用していると、睡眠薬そのものが睡眠障害の原因になる場合もあります。アルコールも睡眠の質を損なうので寝酒は禁物です。

 就寝時刻と起床時刻を一定にする、寝る前に入浴したり軽い運動をしたりする、寝室の環境を整える、カフェインを避けるなどの適切な睡眠習慣を身につけることも大切です。

 精神的ストレスや入院などによる一過性の不眠の場合には、一時的に睡眠薬を服用してもよいでしょう。ただし、睡眠薬には、過鎮静、持ち越し効果、不穏(情動が不安定)、錯乱、脱力、転倒、依存、睡眠時無呼吸の増悪、物忘れなどの副作用があることを知っておいてください。漫然と睡眠薬を常用することは避けたいものです。

(執筆者:飯島 節