どのような状態か

 香水の香りがしない、食べ物のにおいや風味がわからないといった訴えは、嗅覚障害と呼ばれます。

 においを感じるためには、においの分子を含んだ空気がにおいを感じとる粘膜(嗅粘膜)に達し、その信号がにおいを伝える神経(嗅神経)を通して脳に伝えられる必要があります。したがって、鼻から脳に至る経路のどこかに障害が起こるとにおいを感じなくなったり、においが弱くなったりします。

必要な検査と疑われる病気

 前鼻鏡検査、鼻腔内視鏡検査で鼻腔の状態を観察します。また、嗅覚検査(T&Tオルファクトメーターや静脈性嗅覚検査)で、障害の有無や程度を診断します。

 蓄膿症や鼻アレルギーなど、鼻づまりを起こす病気で起きることがあります。これはにおいの分子が嗅粘膜まで十分に到達しないためで、鼻づまりの原因になっている病気を治すことで、嗅覚障害を改善することも可能です。

 一方、においの分子が嗅粘膜に達していても、嗅粘膜や嗅神経のはたらきが弱いために、においを感じなくなる場合もあります。これは嗅粘膜の急性・慢性炎症や、シンナーなどの刺激性ガスの影響などによって生じます。

 また、アルツハイマー病の早期に、においを感じなくなることがあることも知られています。

 鼻かぜをひくと、鼻がつまってにおいを感じなくなることがあります。大部分はかぜが治ると改善しますが、かぜが治っても嗅覚障害がよくならないことがあります。

 これは、感冒などのウイルスによって、嗅上皮や嗅神経が障害を受けやすいためです。嗅粘膜や嗅神経が完全に障害された場合には、治療が難しくなります。「かぜが治ればにおいもわかるようになるだろう」などと安易に考えず、嗅覚障害が続く場合は専門医への受診が必要です。

家庭での対処のしかた

 嗅覚障害の原因をはっきりさせ、適切な治療を早期に受けることが必要です。治療法としては、原因となっている鼻の病気の治療や、ステロイド薬の点鼻療法、ビタミン剤・神経賦活薬・循環改善薬などの内服療法が行われています。その際、専門医の指示に従ってしばらく続けることが重要です。

(執筆者:大前 由紀雄