どのような状態か

 医学的には「嚥下困難」といいますが、実際に物が飲み込みにくい場合と、飲み込みにくいと感じるだけの場合とがあります。また「飲み込みにくい」というよりも、「のどに物がつかえたような感じがする」ことがしばしばありますが、この場合も患者さんは「飲み込みにくい」と訴えることが多いようです。

必要な検査と疑われる病気

 最も気をつけなければいけない病気は食道がんです。この場合、一般的にほかの症状はなく、また徐々に進行するのが特徴的です。咽頭の腫瘍でも「飲み込みにくい」症状は出ますが、のどの違和感、痛みのほうが強く出ます。また喉頭がんでは、まず最初に声がかれてきます。一方、逆流性食道炎による食道狭窄では、かなり以前から胸やけや胸痛といった症状があるのが普通です。

 一方、お年寄りでは、食道の平滑筋の収縮力が落ちて嚥下能力が下がるために、「物が飲み込みにくくなる」ことがしばしばあります。また非常にまれですが、アカラシア、びまん性食道けいれん、強皮症など、食道運動の異常で、物が飲み込みにくくなることもあります。

 そのほか、実は何も食道に異常はないのに、物が飲み込みにくい、あるいはのどに物がつかえたような感じがするといった症状のある患者さんがかなりたくさんいます。これは中年以上の女性に多く、実は精神的なもので(心身症)、検査をして何もないとわかれば症状は軽快することが多いです。

 検査は何といっても、胃内視鏡、胃透視(X線)が最も重要で、食道がんやほかのがんの転移など重い病気はこれで見つかります。またアカラシア、びまん性食道けいれん、強皮症などの食道運動異常症も、胃透視でバリウムの動きを見て診断することができます。胃透視、胃内視鏡ともに異常がない時は、症状だけが生じる精神的なものの可能性が強くなります。

家庭での対処のしかた

 家庭で対処する方法はとくにありません。症状が1週間以上も続く時は、やはり近所の医療機関を受診したほうがよいでしょう。がんでは一般的に症状は進行性なので、途中でよくなったりした場合は、まずがんではないと考えてよいでしょう。

(執筆者:千葉 勉