どのような状態か

 呼吸は普通、無意識に何の不快感や苦痛を感じることなく、自動的に行われています。しかし、呼吸器の病気などがある患者さんは、しばしば呼吸に伴う不安や不快感、苦痛を、「息が苦しい」、「息切れがする」などの症状として訴えます。このような呼吸に伴う不快感を総称して「呼吸困難」といいます。

 一方、喘鳴は、吸気あるいは呼気に伴って、患者さん自身や他人が聞くことのできる異常呼吸音のひとつで、「ぜいぜい」とか「ひゅーひゅー」と表現され、息切れとともに起こることの多い異常な呼吸音です。いずれも高齢者によくみられる症状のひとつです。

必要な検査と疑われる病気

 図4に呼吸困難を起こす病気とその見分け方を示します。呼吸困難は、呼吸器系だけではなく循環器系、神経筋系、代謝系などのさまざまな病気に伴って生じます。

 呼吸困難が起きた場合、その発症の様子、進行性の有無、増悪因子の有無、発症してからの期間、咳・喀痰などの呼吸困難に伴って生じる症状の有無などで、ある程度原因を見分けることができます。

 とくに発症の様子が重要です。発症時刻を特定できる場合は、気胸、急性肺血栓塞栓症、過換気症候群、気道内異物などが、喘鳴を伴うものでは気管支喘息、うっ血性心不全(心臓喘息)などが疑われます。

 数時間から数日の間で急速に進行するもので、胸痛を伴う場合は心筋梗塞による急性肺水腫、肺血栓塞栓症などが、咳・喀痰(膿性痰)を伴う場合は急性重症肺炎が疑われます。

 慢性・進行性で、階段や坂道を登る時などの労作時に呼吸困難を自覚する場合には、多くは慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎などの慢性呼吸器疾患によります。しかし、このような慢性の呼吸困難は呼吸器疾患だけではなく、慢性うっ血性心不全などの循環器疾患、貧血などの血液疾患、重症筋無力症などの神経筋疾患などで生じることもあり、これらの非呼吸器疾患も念頭に置くことが重要です。

 一方、喘鳴は、息を吸う際に聞こえるストライダーと、主に息を吐く際に聞こえるフィーズの2種類があります。ストライダーは上気道異物や喉頭浮腫などの上気道狭窄により、フィーズは気管支喘息発作など気管支の狭窄により生じます。

受診のタイミング

 呼吸困難を治療するにあたっては基礎疾患を正確に見分け、その疾患に対する治療を行うのが原則です。そのため、呼吸困難が続く場合には原則として医療機関を受診し、診断を受けることが望ましいと思われます。

 とくに、呼吸困難が急性あるいは突発性に発症して急速に進行し、喘鳴、胸痛、膿性痰などの症状を伴う場合には、早めに医療機関を受診することが必要です。また、呼吸困難感には精神的な因子が深く関わる場合があるため、精神状態をできるだけ落ち着かせることも必要です。

 慢性の呼吸困難の場合、患者さん自身が「息が切れるのは年のせい」と考えていることがしばしば見受けられます。しかし、階段や坂道を登った際に休み休みになる時は何らかの疾患が基礎に隠れていることがあるので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

(執筆者:桂 秀樹