「転倒・骨折」は高齢者が寝たきりとなる主な原因のひとつです。年をとると若い時に比べて、筋力、バランス能力、反射力の低下などにより転びやすくなります。最近1年間に転んだことがある人は、そうでない人と比べて6倍以上も転倒の危険があるとの報告があります。また、歩く速さが遅くなった、階段で手すりを使うようになった、片脚立ちがしにくい、1kmも続けて歩けない、といった状態になると転びやすいので気をつけたほうがいいでしょう。

 自然な加齢変化以外で、転びやすくなる病気には次のようなものがあります。

(1)脳や脊髄の病気で体のバランスが悪くなる

 脳梗塞の後遺症、パーキンソン症候群、小脳の病気など脳に問題があると体のバランスが悪くなり、転びやすくなります。また、頸椎の変形で脊髄が圧迫されて起こる頸椎症性脊髄症になると、歩行時のふらつきが多くなり、転びやすくなります。数カ月の間に、歩く時のふらつきが出てきたり、増えてくるようなら要注意です。

(2)下肢の筋力が弱くなる、とくに足首や足の指が反りにくくなる

 下肢の筋力が衰えると、それだけで転びやすくなります。病気やけがなどで長く寝ていると筋力が落ちるので、急に元のように歩こうとすると転ぶおそれがあります。

 また、腰椎の変形や椎間板の問題で神経が圧迫される腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアでは、足首や足の指が反りにくくなることがあり、カーペットの端などのちょっとした段差でも、つまずきやすくなります。

(3)背中や腰が曲がってくる

 骨粗鬆症で脊椎が圧迫骨折を起こしたり、背筋が弱くなってくると背中が曲がってきて、体の重心が前に移って転びやすくなります。

 一般的に背中が曲がってきたり、身長が低くなってきた時(目安は若い時より2cm以上低くなった場合)は、骨粗鬆症の心配がありますので、医療機関で検査を受けてください。骨が弱くなった状態で転ぶと、脊椎圧迫骨折や大腿骨頸部骨折を起こしやすいので、とくに注意が必要です。

(4)股関節や膝関節が伸びなくなる

 変形性股関節症や変形性膝関節症のために脚がまっすぐ伸びなくなると、前傾姿勢になったり、体の重心が後方に寄ったりするため転びやすくなります。これらの病気は、脚の付け根や膝の痛みが伴うので、それも含めて整形外科で相談してください。

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 以上のように転びやすくなる原因はいろいろです。最近、転びやすくなったなと実感して、前述の病気の可能性がありそうなら、整形外科や神経内科を受診してください。そして、どのような場合でも、脚の筋肉を鍛えて、関節の動きをよくすることが、転倒予防には大切です。

 筋力を鍛えるためには、まず歩くことが大切です。姿勢をよくして、できれば普段よりすこし速いペースで、20〜40分程度歩きましょう。また、階段などをよく使うほうが転倒は少なくなります。

 さらにバランスをよくするために、片脚立ちの練習も効果的です。左右1分間ずつ、1日3回くらいしましょう。片脚立ちで転びそうな場合は、何かに軽く手をついても構いません。そして、日々の生活のなかでもよく動くことを心がけましょう。

(執筆者:石橋 英明