遺伝子のはたらき - 遺伝病と染色体異常

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分類ごとの病気の概論を解説しています。

 遺伝子の役割は蛋白質をつくることです。遺伝子の本体はDNAですが、すべてのDNAが蛋白質をつくるための情報をもっているわけではありません。たとえばヒトの1個の細胞には約60億塩基対のDNAがありますが、そのうち蛋白質の情報をもっているのは約2・5%といわれています。

 遺伝子のもつ情報は、蛋白質をつくるためのアミノ酸の順序と数を決定しています。細菌などの遺伝子の場合は、アミノ酸の配列を決定する情報はひとつながりの構造遺伝子という構造をとっています。ところが、ヒトなどの高等生物の遺伝子では、アミノ酸の配列順序を決めている部分(エクソンと呼ばれる)は、アミノ酸の配列の情報をもたないイントロンによって分断されています。

転写と翻訳

 遺伝子から蛋白質ができる過程は、まず遺伝子の情報を読み取ってメッセンジャーRNA(mRNA)が合成される転写と呼ばれる過程から始まります。

 細菌では不要なイントロンがないので、できたmRNAからすぐに蛋白質が合成されます。ヒトなどでは、このあとイントロンに対応する部分が除かれて、エクソンの情報がつなぎ合わされて完成したmRNAになり、細胞の核から外に出て蛋白質を合成する場所であるリボゾームに移動します(図2)。mRNAの情報に従って、トランスファーRNA(tRNA)という小さなRNAが末端にアミノ酸を結合してリボゾームまで運んできます。

 受け渡されたアミノ酸がリボゾームの上で順に結合してゆき、蛋白質ができ上がりますが、この過程は翻訳と呼ばれています。遺伝子から写し取ったmRNAの情報はどのようにしてアミノ酸の配列に翻訳されるのでしょうか。それは、mRNAの3つのヌクレオチドの並びがひとつのアミノ酸に対応するように翻訳されるのです。

 ヌクレオチドの種類は4つですから、3つのヌクレオチドの並び方は64通りあり、コドンと呼ばれています。蛋白質の構成ユニットであるアミノ酸は20種類で、たとえばmRNAの並びがAUGであればメチオニンというアミノ酸がtRNAによって運ばれてきます。ロイシンというアミノ酸の場合には6種類のコドンが対応します。

 このようにコドンとtRNAとアミノ酸の対応は均等ではありません。mRNAの3個ずつのヌクレオチドの順にコドンが読み取られてアミノ酸が結合していき、蛋白質ができ上がるのです。

遺伝子発現の制御

 蛋白質の合成が終了するのは停止コドンと呼ばれる3種類のコドンが出てきた場合です。この停止コドンには対応するtRNAが存在しないために合成が終了することになります。

 でき上がった蛋白質は細胞の構成成分として、また細胞内でのいろいろな代謝反応にはたらく酵素として機能します。前に述べたDNAの複製にはたらくDNAポリメラーゼや、DNAからmRNAを転写するRNAポリメラーゼも酵素の仲間です。

 細胞が生きていくのに必要なすべての蛋白質は、このようにして遺伝子の情報に従ってつくられていくのです。

 遺伝子はいつも蛋白質をつくっているわけではありません。また、体を構成するいろいろな細胞によっても、おのおのがつくる蛋白質の種類には違いがあります。1個の受精卵から細胞分裂と細胞の分化が行われ一人の人間が生まれてくるまでには、多くの遺伝子が時期を決め共同して蛋白質を予定どおりにつくっていくことが必要です。

 このような遺伝子から蛋白質をつくる時期と量の調節は、DNAからmRNAをつくる転写の過程を調節することによって行われています。RNAポリメラーゼがDNAの情報を読み取る段階で、それを助ける役目をもった蛋白質や、逆にそれを抑える役目の蛋白質があり、それらが総合的にmRNAをつくる時期と量を調節しているのです。

突然変異とは

 DNAのヌクレオチドの配列から蛋白質ができ上がるので、もしDNAの配列が変化した場合には、蛋白質のアミノ酸の配列に変化が起こったり、まったくできなくなったりします。このDNAのヌクレオチドの変化が突然変異です(図4)。突然変異はDNAを複製する時に酵素がエラーを起こしたり、DNAに損傷を与える放射線や化学物質が作用したりした時に生じます。

 ヌクレオチドの変化つまり突然変異は必ず蛋白質の機能を失わせるわけではありません。ヌクレオチドの変化がアミノ酸の配列に影響しない場合や、アミノ酸が変わったとしても蛋白質が機能を失わない場合も多くあります。また、蛋白質のアミノ酸配列の情報をもたない大部分のDNAに突然変異が起こっても、何も異常は起こりません。

 問題になるのは、遺伝子の前にあるmRNAの合成を調節している部分や、蛋白質の機能を決定している重要なアミノ酸に対応するDNAの情報が変化した場合などです。

 鎌状赤血球貧血症という重度の貧血を起こす遺伝病は、酸素を運搬するヘモグロビンという蛋白質のたったひとつのアミノ酸が変化して引き起こされます。これはヘモグロビンをつくるひとつの遺伝子のなかの1個のヌクレオチドが突然変異を起こし変化しているのが原因であることがわかっています。

 現在では遺伝病やがんなども、基本的には遺伝子に起こった突然変異が原因であることが多くの例で示されてきています。

(執筆者:山本 義弘

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