うっけつせいしんふぜんうっ血性心不全

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高齢者での特殊事情

 心不全とは、さまざまな原因により心臓のポンプ機能が損なわれた状態を指します。心臓は全身に必要とする血液を送り出すポンプですが、このポンプのはたらきが低下して肺や末梢の組織にむくみが生じて、息苦しく感じるのがうっ血性心不全です。
 うっ血性心不全の主な症状は、呼吸困難です。肺の病気でも呼吸困難の訴えは多いのですが、心不全では肺のむくみ(肺水腫(はいすいしゅ))に基づくため、就寝後しばらくしてから苦しくなるという″夜間発作性呼吸困難”や、上半身を起こすと少し楽になるという″起座(きざ)呼吸”の症状が特徴です。
 しかし、高齢者では、このような典型的な症状よりもむしろ、全身のだるさや食欲の低下、便秘、活動の低下などといった一般的な症状だけが表に出ることが少なくなく、注意しなくてはなりません。さらに、動脈硬化が進んでいる場合が多いために心臓から送り出される血液が少なくなり、脳への血流も損なわれやすくなります。このため、めまいや不穏(ふおん)(落ち着かない)、見当識(けんとうしき)障害(時間と場所など周囲を正しく認識する機能の障害)、錯乱(さくらん)などの精神・神経症状が出やすいことも高齢者の特徴です。
 高齢者でうっ血性心不全を起こす病気は、虚血性(きょけつせい)心疾患(狭心症(きょうしんしょう)や心筋梗塞(しんきんこうそく))、高血圧性心疾患、弁膜症(べんまくしょう)、心筋症(しんきんしょう)などさまざまですが、日本では高血圧性心疾患と虚血性心疾患が多いといわれています。

治療とケアのポイント

 急に呼吸困難が生じた場合や、血圧や意識の低下を伴うような重い場合には、CCU(心臓集中治療ユニット)に入院します。血圧や心電図、状態によっては心臓カテーテル検査を行い、酸素、利尿薬、心臓のポンプを強める強心薬などが使われ、重篤な状況を乗り切るために一時的に機械による呼吸(人工呼吸)が必要になることもあります。
 比較的ゆっくり症状が進行する場合は、内服治療が中心になります。以前から、余分な水分、塩分を排出するために利尿薬や、心臓のポンプ作用を強めて心拍を安定させるためにジゴキシンが使われてきました。さらに近年、心臓のポンプ機能を長持ちさせ、心不全の高齢者の生存率を高めるアンジオテンシン変換酵素阻害薬やβ(ベータ)遮断薬などが、効果のある薬として比較的早期から用いられるようになってきました。
 心不全の悪化を防ぐには、塩分の制限や体重の管理、激しい運動やお酒をひかえるなど、日常生活の管理が極めて重要であることはいうまでもありません。

その他の重要事項


(1)増える心不全の高齢者

 高齢になると、1回の心拍の間に心臓から送り出される血液量(心拍出量(しんはくしゅつりょう))は、年齢が1歳増えるごとに約1%ずつ減る、すなわち心臓の予備の力が少なくなっていくといわれています。若いころには心不全を起こさなかった心臓ポンプも、年を重ねるごとにその予備の力が少なくなり、ついには心不全を起こしてしまうこともあります。そのなかには、血液を送り出す収縮能は保たれていても、心臓の筋肉が硬くなり、拡張する力が低下することによって起こる拡張性心不全があり、高齢者、とくに女性に多いことが知られています。
 また、近年、飛躍的に治療法が進歩したために、心臓の病気を発症しても助かって、病気をもったまま高齢期を迎える人たちが増えています。
(2)寝たきりになりやすい
 うっ血性心不全の治療の原則は、一般には服薬、塩分制限と安静です。ただし、高齢者で注意しなければならないことは、安静を保つことで下肢の筋肉を使わなくなるために筋肉が萎縮を起こして、歩けなくなったり杖が必要になったりすることです。医師と相談しながら、心臓の機能にあった日常生活を送ることが大切です。
(3)心不全を悪くさせないために
 心不全の高齢者は、いったんよくなって退院しても、さまざまな原因で再び入院しなくてはならないことがたびたびあります。その原因には、感染や不整脈(ふせいみゃく)が起こるといった避けられないものもありますが、薬を規則正しく服用できなかったり、食事の制限が不十分であったり、ひとり暮らしのために活動が十分に制限できなかったりなど、病気以外の日常生活上の問題が原因になって心不全が悪くなることが少なくありません。
 したがって、心不全の高齢者は家族や地域のケアマネジャーといっしょに、とくに病気以外のこと、正確な服薬、食事、日常生活活動度などにも十分に気を配って、心不全という病気と付き合っていくことが大切です。

(執筆者:西永 正典

※初診に適した科を掲載しています。なお病院・診療所によって診療科目の区分は異なりますので、受診の際はよくご確認ください。

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