うぇるにっけのうしょうウェルニッケ脳症
ウェルニッケ脳症とはどんな病気か
ビタミンB1(チアミン)の欠乏による脳症です。ビタミンB1の欠乏のみでも発症しますが、アルコール多飲者に多く起こるため、アルコールも複合的に影響し発症するとも推測されています。
原因は何か
飢餓(きが)による栄養障害は現在では非常に少なくなりましたが、アルコールの多飲やインスタント食品の偏食による栄養の偏りなどが発症要因になります。最近、胃の全摘手術を行ったのち数年後に、欠乏状態が起こりやすいと報告されています。また妊娠悪阻(おそ)(つわり)で食事ができなくなって長期に点滴治療を受けたところ、点滴中にビタミンB1が入っていなかったために発症した例などの、医療過誤によるものも報告されています。
症状の現れ方
脳内の非常に特異的な場所(乳頭体(にゅうとうたい)、中脳水道周囲、視床(ししょう)など、図41)が病変の好発部位となります。したがって症状も特徴的であり、急性期には眼球運動障害、運動失調、意識障害が3主要症状です。
眼球運動障害は外直筋麻痺(がいちょくきんまひ)(外方に眼を動かせない)による内斜視(ないしゃし)の形をとることが多く、瞳孔(どうこう)の異常などを起こす内眼筋(ないがんきん)麻痺はまれです。回復してくると水平眼振(がいしん)(眼球が自動的に動揺する)が起こり、自覚的に複視やめまい感が生じます。失調症状としては、つかまり立ちで不安定な歩行といった症状が急性に始まります。意識障害および精神症状としては、無欲、注意力散漫、傾眠(けいみん)(すぐに眠ってしまう)といった軽い意識障害から昏睡(こんすい)まで起こりますが、いずれも本症に特異的というわけではありません。せん妄(もう)・錯乱(さくらん)状態だけが前面に出ていることもあります。
慢性期になると、見当識(けんとうしき)障害、健忘、記銘力(きめいりょく)障害など、いわゆる物忘れの症状が主体となります。
検査と診断
診断できるか否かは、この病気を思いつくかどうかで決まるといっても過言ではありません。典型的な3主要症状が現れた時には、治療を行っても後遺症を残すことが多いため、できるかぎり早期に診断し早期に治療を開始することが極めて重要です。
症状と神経所見から本症を疑い、ビタミン不足になりうる栄養不良状態が存在したかどうかを聴取し、MRIで病変部位を確認できれば、診断できます。
治療の方法
ビタミンB1測定の血液検査は結果が出るまで時間がかかるため、通常は結果が出る前に治療を開始します。ビタミンB1の欠乏は、ウェルニッケ脳症のみならず末梢神経障害も起こすため、四肢(とくに下肢優位)の対称性の手袋靴下型の知覚障害(ちょうど手袋や靴下をはいたように、ジンジン感が生じる)や腱反射の減弱なども伴うことが普通です。治療は早急にビタミンB1を投与することで、早ければ早いほど効果が期待できます。
ウェルニッケ脳症に気づいたらどうする
長期間のアルコール多飲者(中毒患者)が、通常の酔っ払った状態とは異なる意識状態の異変を感じたら、本症を疑うことが重要で、早急に救急患者として受診することが大切です。
(執筆者:栗山 勝)
※初診に適した科を掲載しています。なお病院・診療所によって診療科目の区分は異なりますので、受診の際はよくご確認ください。
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