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内痔核とはどんな病気か

 痔核は俗にイボ痔といわれる病気で、痔といえば一般にこれを指すほど、最もポピュラーな病気です。実際に男性でも女性でも、肛門疾患のなかで最も頻度の多いものです。
 痔核は、最初は直腸肛門部の静脈叢(そう)の静脈瘤(りゅう)であるという考えが一般的でした。つまり痔核は直腸末端と肛門という便の出口に網の目のように集まっている静脈(静脈叢)がふくらんでしまった病気(静脈瘤)であるという考え方です(図5)。原因としては排便時にいきむ癖が腹圧を上昇させ、それがついには静脈の血液の流れを悪化させ、静脈のうっ血を来し、血管をふくらませるとの考えでした。
 しかし、最近では痔核は単に静脈が網の目のように集まっているだけでなく、細かい動脈も吻合(ふんごう)しており、そのほかに筋肉や結合織などの細かい線維も含まれていること、そして痔核の症状のない正常の人を調べても肛門には痔核があることもわかってきました。
 このようなことから、痔核はどうも正常に存在するものであって肛門の閉鎖に役立っているクッションのような部分であり、それが大きくなって出血するようになったり脱出するようになると、病気として認識されるのだということがわかってきました。
 つまり肛門部への負担をかけていると、肛門を閉鎖するのに役立っている部分に力が加わって、うっ血を来すようになり、出血するようになります。そして、もっと負担が加わると、その部分を支えている組織を断裂させるようになってしまい、外へ脱出するようになるのです(図6)。
 痔核には大きく分けて直腸側の内痔核と肛門側の外痔核(がいじかく)があります。ただ外痔核は、ふつう内痔核と一緒に存在し、単独で問題となるのは血栓(けっせん)を生じた血栓性外痔核となった時だけです。そのため痔核というと一般には内痔核を指します。
 内痔核が進み、脱出するようになると脱肛(だっこう)といいます。また、内痔核だけでなく外痔核部分も合併するようになると内外痔核といいます。

原因は何か

 肛門部に負担がかかることが原因です(図7)。
 そのいちばんの原因は便秘です。便秘になると便が硬くなります。硬い便を外に出すことは肛門部を刺激し、負担をかける結果となります。また排便時にいきむようになってしまい、下腹部に力を加えるため、さらに肛門部に負担がかかる結果となります。便秘はこのような状態が長年にわたって続くので、痔核のいちばんの原因となります。
 便秘の逆といえる下痢もよくありません。下痢便は、ものすごい勢いで排便されるので、どうしても肛門部を刺激し負担をかける結果となります。
 長時間の同一姿勢もよくありません。肛門は体の下のほうに位置し、地球の引力がある関係で、同一姿勢が長くなると、どうしても肛門部にうっ血を来し負担がかかってしまいます。
 激しい力仕事、運動も原因となりえます。妊娠、出産も肛門部へ負担をかけてしまうため、内痔核の原因となります。
 嗜好品(しこうひん)ではアルコール、辛いものもよくありません。アルコールは肛門部のうっ血を来す元になりますし、飲みすぎれば下痢となり、やはり肛門部へ負担がかかります。唐辛子、わさび、こしょう、カレー粉などの辛いものも排便の際に肛門部へ刺激を加え、負担をかけます。

症状の現れ方

 初めは出血するだけで、痛みは伴わないのが普通です(図8)。出血の色は濁っていないで鮮やかな真っ赤です。
 量としては紙に付く程度のものからポタポタと出たり、ひどくなると、ほとばしるように出るものまでさまざまです。また出血の回数も初めは1カ月に1回とか、たまに出るだけなのが、1週間に1回とか2回、ひどくなると排便のたびに毎日出るようになります。
 出血するだけの状態から程度が進むと脱出するようになります。初めは排便でいきむ時だけ出ていて、排便が終わると自然にもどっていたのが、次第に指で押し込まなければもどらなくなります。もっと進むと歩いたり、運動をしたり、咳(せき)、くしゃみをするだけで脱出するようになり、最後はいつも脱出したまま(脱肛)となってしまいます。

治療の方法

 大きく分けて薬で治す保存療法、外来で行う注射、ゴム輪結紮(けっさつ)療法などの外来処置、そして入院して行う手術があります(表1)。
 日常生活で肛門に負担をかけることに注意しつつ薬で治療する保存療法が基本です。薬で治らず、症状・病状がひどいものに対して外来処置を行い、それでも治らないものや病状の進んだものに対して手術を行います。
 痔核の症状別にいえば、表1のように、どの痔核にもまずは保存療法を行います。そして出血を繰り返すものに対しては注射療法を、脱出する痔核にはゴム輪結紮療法を、外痔核まで含んで脱出するものに対しては手術を行います。
 次にそれぞれの治療法について説明します。
保存療法
 肛門の病気全般にいえることですが、とくに内痔核の場合は生活療法(コラム)を中心とした保存療法が基本です。保存療法に使われる薬には坐薬、軟膏などの外用薬と内服薬があります。
 坐薬、軟膏などの外用薬には出血を止めたり、痛みを止めたりする効果があり、痔核により生じる症状を緩和しますが、外用薬のいちばんの効能は、便が出るときに肛門部に負担をかけないでスムーズに出るようにしてくれることです。
 内服薬には痔核を萎縮(いしゅく)させたり痔核の血流改善を目的とするものがあります。そのほかに便秘を防ぐ目的で緩下剤の内服も効果があります。
注射療法
 出血が止まらない痔核に対して外来で行う処置です。痔核に硬化剤(5%フェノールアーモンド油)を注射し、痔核の血管周辺に炎症を起こし、その二次的な線維化により痔核の血流を低下させ、出血を防ぎます。
 外来で麻酔なしに簡単に行えますが、注射は痛みを感じない部位を選んで行う必要があります。内痔核に注射はできますが、外痔核を伴ったものに注射することは、痛みが生じるので不可能です。注射する深さにも注意が必要です。粘膜の下が理想的で、それより浅すぎると痔核の表面の粘膜がダメージを受けるし、深すぎると肛門周囲の組織に注射液が及び危険なことがあります。
 注射によって出血を抑える効果は絶対的ですが、永続性はなく、1年くらい有効です。
ゴム輪結紮療法
 痔核にゴム輪結紮器を使って輪ゴムをかけ、結紮する方法です(図9)。
 特殊な器具を用いて小さな輪ゴムを延ばし、結紮器の先に装着し、伸びた輪ゴムを痔核の根部にはめ込みます。輪ゴムは痔核の根部にはめ込まれてから徐々に痔核根部を締めていき、1〜2週間後に痔核は脱落します。
 麻酔なしで行う方法なので、やはり痛みを感じない痔核に行うようにします。内痔核だけが脱出するようになったものに有効な方法です。
手術
 保存療法や注射療法を行っても出血がどうしても止まらず繰り返す場合や、痛みを感じる痔核を含めて脱出するようになり、それが日常生活に支障を来すような場合に手術を考えます。手術は、痔核にそそぐ根部血管をしばって、痔核を放射状に部分的に切除する方法(結紮切除術)が行われています。

内痔核に気づいたらどうする

 たまたま出血した場合は、とりあえず腸に病気がないかどうかのチェックが必要です。真っ赤な出血であるからといって痔核によるものだと自己診断しないで、一度は診察を受けることが大切です。
 たまに出血するだけで、また脱出してもさほど日常生活上の支障を来さなければ、肛門を温湯で洗い乾燥させておくといった肛門衛生に留意し、肛門に負担をかけないように便通を整え、トイレで長時間いきむことや長時間の同一姿勢、激しいスポーツに注意し、アルコール、香辛料などをひかえめにします。
 出血をよく繰り返したり、脱出により痛みを生じるなどの症状を伴う場合は、坐薬、軟膏などの外用薬や内服薬を使ったほうが症状の緩解が早まります。
 以上の保存療法を行っていても出血がひどく貧血になりそうであったり、脱出により日常生活に差し障りがあるような場合は、外来処置や手術の適応となります。

(執筆者:岩垂 純一

※初診に適した科を掲載しています。なお病院・診療所によって診療科目の区分は異なりますので、受診の際はよくご確認ください。


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