たんせきしょう胆石症

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胆石症とはどんな病気か

 胆汁(たんじゅう)は食事で摂取した脂肪分やビタミンの消化・吸収を助ける黄褐色の消化液で、肝臓で1日に700ml〜1l作られています。この胆汁が通る道を胆道(たんどう)と呼びますが、胆道は肝内胆管(かんないたんかん)、肝外胆管(かんがいたんかん)、そして胆嚢(たんのう)に分けられます(図17)。
 胆汁は肝臓のなかの胆管(肝内胆管)を通って肝臓の外に出て、肝外胆管の途中にある胆嚢管(肝外胆管と胆嚢を結ぶ管)を通って胆嚢に貯められます。食事をとると、胆嚢内で濃縮された胆汁は胆嚢が収縮することにより肝外胆管に送り込まれ、十二指腸に流れ出します。胆汁の出口を十二指腸乳頭(にゅうとう)といいますが、乳頭には筋肉(乳頭括約筋(にゅうとうかつやくきん))があり、これにより乳頭が開いたり閉じたりして胆汁が十二指腸に出るのを調節したり、十二指腸のなかの食べ物や腸液が胆管のなかに入るのを防いでいます。
 胆道に結石(けっせき)ができる病気を総称して胆石症と呼び、結石ができる場所によって、肝内結石、胆管結石(肝外胆管にできた結石)、胆嚢結石に分類されます。
 日本人の胆石保有率は年々増加しており、現在では日本人成人の10人に1人は胆石をもっているとされています。その理由としては、食生活の欧米化や高齢化、また、検査が普及して発見される率が高くなったことなどがあげられています。性別では男性に比べ女性で多いといわれています。胆嚢結石は胆石症の約80%と最も多く、胆管結石は約20%、肝内結石は約2%を占めています。
 この項では胆嚢結石と胆管結石について説明し、肝内結石については別項で扱います。

原因は何か

 胆石はその成分により、コレステロール系結石、色素結石(ビリルビンカルシウム系結石、黒色石)、その他まれな胆石に分類されます。頻度はコレステロール系結石が70%、ビリルビンカルシウム系結石と黒色石がそれぞれ15%です。胆石の種類によってその原因も異なります。
コレステロール系結石
 体内の過剰なコレステロールは胆汁のなかに排出されます。元来、コレステロールは水に溶けませんが、胆汁のなかに含まれる胆汁酸の助けで、胆汁中ではコレステロールは溶けた形で存在します。しかし、あとで示すようなさまざまな理由で胆汁中のコレステロールの量が増えると、余分なコレステロールは溶けずに胆汁のなかで固まり(結晶化)、これを核にして結石ができます。
 胆汁中のコレステロールの増える原因としては、高脂肪食や肥満、脂質異常症高脂血症)、糖尿病、妊娠などがあります。
ビリルビンカルシウム系結石
 ビリルビンは胆汁の色素成分ですが、その由来は古い赤血球です。胆汁中ではビリルビンの大部分は水溶性です(抱合(ほうごう)型ビリルビン)。しかし胆汁中の細菌の酵素によりビリルビンが変化し(非抱合型ビリルビン)、これにカルシウムが結合して結石を形成します。また、胆汁のうっ滞(よどみ)は結石の形成を促進させます。
 胆汁中に細菌が入ったり、胆汁がうっ滞したりする要因としては、加齢や十二指腸乳頭近くの憩室(けいしつ)(ポケット状のくぼみ)があります。
黒色石
 胆汁中のビリルビンが過剰になったり、胆汁酸の濃度が下がったりすると、複数のビリルビンがカルシウムや銅などの金属元素と結合して複合体を作り、それが固まり黒色石となります。
 黒色石の原因としては、溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)や肝硬変(かんこうへん)、胃切除術などがあげられます。

症状の現れ方


(1)胆嚢結石

 胆嚢に結石があっても多くの場合は無症状で、症状が出るのは胆嚢結石のある方の20%程度といわれています。上腹部の違和感や腹部膨満感など、胃や腸の症状と区別が難しい症状を訴えることが多いのですが、胆嚢結石に特徴的な症状は胆石疝痛(せんつう)と呼ばれる腹痛です。これは脂肪分の多い食物をとったあとに起きる上腹部、とくに右季肋部(きろくぶ)(右の肋骨(ろっこつ)の下)あたりの周期的な痛みで、背中や右肩のコリや痛みを伴うことがあります。
 この症状は胆嚢結石が胆嚢の出入り口をふさいだり胆嚢管に詰まったりして、胆汁の流れを妨げることにより起きます。その状態で胆嚢内に細菌が感染すると、高熱を出します(急性胆嚢炎)。なお、特殊な状況を除き、胆嚢結石で黄疸(おうだん)になることはありません。
(2)胆管結石
 胆嚢結石とは異なり、胆管結石の多くは何らかの症状を伴い、無症状の方は10%程度とされています。胆管内の結石により胆汁の十二指腸への流れが妨げられ、腹痛(とくにみぞおち)、発熱などの症状が出ます。また、胆管内にたまった胆汁が血液中に逆流すると、黄疸を来します。日本人の皮膚はもともと黄色いので、よほどひどい黄疸でなければ肌が黄色くなったのに気づきませんが、そうなる前に尿の色がウーロン茶のように茶色くなります。
 さらに胆汁中の細菌が胆汁と一緒に血液に入り込む(敗血症(はいけつしょう)、菌血症(きんけつしょう))と、悪寒(おかん)を伴う高熱や意識障害、ショックを来し、極めて危険な状態になります(急性閉塞性化膿性胆管炎(きゅうせいへいそくせいかのうせいたんかんえん))。適切な処置をしなければ死亡する危険性があります。なお、高齢者では、腹痛を訴えずに急に高熱や意識障害を来す可能性があるため、注意が必要です。
 また胆管結石は、急性膵炎(すいえん)の最も多い原因です。これは胆管結石が胆汁の出口(十二指腸乳頭)にはまり込んだり、また結石が十二指腸に出た時に乳頭がむくんだりすることで、膵液の十二指腸への流れを妨げて膵炎を起こします。急性膵炎の症状としては心窩部(しんかぶ)(みぞおち)痛や背部痛、嘔吐(おうと)などがあります。

検査と診断


(1)胆嚢結石

 血液検査では胆嚢結石の診断はできませんが、白血球の増加や炎症反応であるCRP値の上昇をみることで胆嚢の炎症を評価することができます。
 胆嚢結石の診断に最も有用なのは腹部超音波検査です。この検査で胆嚢結石の95%は診断でき、しかも結石の性状もある程度把握することができます。
 腹部CT検査は、胆嚢結石自体の診断能は超音波検査に劣りますが、石灰化した結石の描出は優れています。
 経静脈的胆道造影検査(DIC)は胆嚢の機能をある程度把握することができ、治療方針を決めるのに役立ちます。最近ではこのDICとCT検査を組み合わせて行うことで、より鮮明に胆嚢と胆管の位置関係を立体的に把握することができます(図18)。
 磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP)も体の負担なく胆嚢や胆管を同時に描出することができます。しかし胆嚢結石の診断というよりは、胆嚢摘出術前に胆嚢と胆管の位置関係や胆管結石の有無を把握するために行われることが多いです。
 なお、以上の検査はすべて外来で行うことが可能です。
 内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)は、内視鏡を使って胆管や胆嚢に直接造影剤を入れて撮影する検査で、DIC‐CTやMRCPと同様に胆嚢や胆管の位置関係や胆管結石の診断に有用です。しかしERCP後に急性膵炎などの偶発症を起こす危険性があるため入院して行う必要があり、一般的には胆嚢結石があるだけで行うことはありません。
(2)胆管結石
 胆管結石により胆管が炎症を起こすことで、血液検査で胆道系の酵素(ALP、γGTP)や肝臓の酵素(GOT、GPT、LDH)が上昇します。
 胆管結石が疑われた場合、腹部超音波検査はまず行うべき検査ですが、この検査で胆管結石を診断できるのは40〜50%程度です。
 腹部CT検査も、石灰化した胆管結石では診断に有用ですが、従来の機種では腹部超音波検査と同様の診断能です。しかしCT撮影機械の改良によりその診断能は向上してきています。
 MRCPは前述したERCPに代わる胆管の精密検査で、胆管結石の診断に有用ですが3mm以下の小さい結石では診断できないことがあります。
 超音波内視鏡検査(EUS)は、先端に超音波をつけた内視鏡を口から入れて胃や十二指腸の壁越しに胆管を観察する検査で、DIC‐CTやMRCPと同等かそれ以上の胆管結石の診断能があります。EUSは胃の内視鏡と同様に外来で行うことができますが、胆管をきれいに描出するためにはある程度の技術を要し、どの医療機関でも行えるわけではありません。
 高性能のCTやMRCPあるいはEUSが登場するまでは、ERCPが胆管結石の診断に欠かせない検査でした。しかし検査に伴う偶発症もあり、MRCPやEUSなどの体への負担が少ない検査が外来で施行可能な現在では、胆管結石の診断目的のみでERCPが安易に行われることはなくなってきています。
 経皮経肝的胆道造影検査(PTC)は、超音波で肝臓のなかの胆管を見ながら針を刺して造影剤を入れ、造影する検査です。この検査もERCPと同様に入院が必要で、出血や腹膜炎(ふくまくえん)を起こす危険性があることから、胆管結石の診断のみで行われることはありません。胆管結石による胆管炎や黄疸の治療を前提にして、かつ以前に受けた胃の手術などでERCPができない方を対象に行われることが多いです。

治療の方法


(1)胆嚢結石

 胆嚢結石に伴う何らかの症状がある方は治療の適応となります。無症状の方の多くは定期的な検査(年に1〜2回程度の腹部超音波検査)を受けることが望ましいですが、積極的な治療の対象にはなりません。
 ただし無症状の方でも、(1)胆嚢の壁が厚くなっている、(2)胆嚢が縮んでいる(萎縮(いしゅく)している)、(3)胆嚢内の大きな結石や多数の結石のため腹部超音波検査で胆嚢の壁を正確に評価することができない、(4)胆嚢の壁が全体に石灰化している(陶器様胆嚢)、などの所見が認められる場合は治療の対象となります。
a.胆嚢摘出術
 胆嚢結石治療の第一選択となっている治療法です。とくに腹腔鏡下胆嚢摘出術は世界的な標準的治療法で、従来の開腹胆嚢摘出術と異なり、おなかの傷が小さく、手術後の回復も早く、早期に退院・社会復帰が可能です。ただし胆嚢の炎症のため周辺の臓器(肝臓や腸管など)と癒着している場合や、胃の手術を受けたことのある方では、開腹胆嚢摘出術を行わざるをえないことがあります。
 胆嚢を残して結石だけをとれないかという疑問をもつ方もいますが、結石だけをとるほうが胆嚢ごと摘出するよりもむしろ手間がかかりますし、結石ができるような胆嚢が病気のもとであるわけですから、胆嚢摘出術は胆嚢結石の根治的な治療といえます。
 また胆嚢を摘出した後の影響を懸念される方がいます。しかしほとんどの方においては日常生活にまったく影響ありません。脂肪分の多い食事を大量に摂取したあとに下痢を起こすことがまれにありますが、整腸剤などで対応可能です。
b.胆石溶解療法
 胆嚢の機能が保たれていて、大きさが1cm程度の石灰化していないコレステロール系結石が対象となります。ウルソデオキシコール酸を含む薬剤を内服して結石を溶解します。手術と異なりこの治療法には、体への負担がほとんどない、胆嚢を残せる、などの利点があります。一方で長期間(数カ月〜数年)にわたって毎日薬を内服する必要があり、また結石が消失するのは30〜50%で、消失しても数年で30〜50%の方が再発すると報告されています。
c.体外衝撃波結石破砕療法
 体外から衝撃波を当てて結石を細かく砕く治療法です。胆嚢の機能が保たれていて、結石の大きさが2cm以下で数が1個のコレステロール系結石が対象となります。胆石溶解療法を併用することもあります。結石の消失率は60〜80%と報告されていますが、この治療には特殊な装置が必要なため、どこの病院でも行えるわけではありません。
(2)胆管結石
 無症状の胆嚢結石とは異なり、胆管結石は、たとえ無症状でも将来的に重症の急性胆管炎急性膵炎を起こす危険性があるため、原則として治療の対象になります。その治療法は内視鏡的治療法と外科的治療法に分かれますが、最近では体への負担がより少ない内視鏡的治療が主流になってきています。
a.内視鏡的治療法
 内視鏡を使って胆管から結石を取り出すためには、まず十二指腸乳頭を広げておく必要があります。この方法には電気メスで乳頭を切開する内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)(図19)と、風船(バルーン)で乳頭を広げる内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)(図20)があります。
 内視鏡的治療の経験が豊富な施設では、いずれかの方法を用いて90%以上の方で結石を完全除去することができます。ただし、結石が大きくて数が多い場合には1回の内視鏡的治療ではすべての結石を取りきれず、複数回の治療を要することがあります。
 ESTとEPBDのどちらが良い治療法なのかは、現在でも議論の分かれるところです。EPBDに比べESTのほうが乳頭を大きく広げるので、大きな結石を取り出すのはESTのほうが簡単です。ただし、ESTは乳頭を切開する手技ですので術後の出血や十二指腸に穿孔(せんこう)(孔(あな)があく)の危険性がありますが、EPBDは単にバルーンで乳頭を広げるだけなので出血や穿孔の心配はほとんどありません。術後の急性膵炎の頻度はESTとEPBDで同等か、EPBDで多いと報告されています。また、胆汁の流れを調整する乳頭の機能は、EST後には高度に低下あるいは廃絶しますが、EPBDではある程度温存されます。
b.外科的治療法
 内視鏡的治療が胆管結石の標準的治療法となる十数年前までは、多くの施設では開腹手術が第一選択の治療法でした。しかし開腹してメスで胆管を切開して結石を取り出す治療法は、内視鏡的治療に比べると明らかに体への負担は大きく、現在では、内視鏡的に除去することが困難な胆管結石が開腹手術の対象となってきています。
 腹腔鏡下で胆管結石を取り除く治療法は、開腹手術に比べ体の負担が少なく、また一度の手術で胆嚢結石と胆管結石の治療ができるという点で有用な治療法です。しかし非常に高度な技術を要し、安全に行える施設は限られているのが現状です。

胆石症に気づいたらどうする

 胆嚢結石のある方が典型的な胆石疝痛発作を起こした場合には、すみやかに医療機関を受診し、治療を受けなければなりません。疝痛発作までいかなくても、上腹部の軽い痛みや違和感、膨満感などを自覚する場合には、消化器内科あるいは外科を受診して適切な治療方針について話し合う必要があります。無症状の胆嚢結石でも、定期的(半年〜1年)に外来を受診し、胆嚢結石の状態および胆嚢の壁の評価を受けるべきです。
 胆管結石と診断された方で腹痛、発熱、黄疸といった症状がある場合には、放置すると命に関わるので、緊急で医療機関を受診しなければなりません。症状がなくても血液検査で肝臓や胆管の酵素が異常値の場合には、すみやかに治療を受ける必要があります。それ以外のまったく症状がない方でも、専門施設を受診して治療方針について相談してください。
 とくに胆管結石の治療法や治療成績は医療機関によって異なるので、時間を十分にとって医師と話し合うことが必要ですし、場合によっては他施設の医師の意見を聞くことも大事です。
 日常生活で重要なことは、脂肪分の多い食物や過食を避け、規則正しい食生活を身につけることです。魚中心のいわゆる和食がよいでしょう。また過労やストレスを避けて、定期的に適度な運動をし、穏やかな日常を送ることも大切です。

(執筆者:辻野 武

※初診に適した科を掲載しています。なお病院・診療所によって診療科目の区分は異なりますので、受診の際はよくご確認ください。


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