心理学用語「認知的不協和」theory of cognitive dissonance

ビジネス界ではマーケティングの分野においても注目、活用されている人間心理の法則。アメリカの心理学者であるレオン・フェスティンガーが提唱した、社会心理学用語である。
 主な定義としては、以下の通り。
・ 認知に不協和が存在すると、人間はその不協和を低減させるために、なんらかの圧力を起こす
・ 不協和を低減させる圧力の強度は、不協和の大きさに影響される

この「認知的不協和」の理論を理解する上で、有名な例えとして喫煙者の例がある。たいていの喫煙者は、喫煙が身体に悪いことを知っている。身体に悪いことを知って禁煙できれば不協和(不快感)は起きないが、タバコをやめられないために不協和が起こる。人間は矛盾する認知を持ち続けることは難しいので、この不協和をなんとか低減しようと試みる。結果、「タバコを吸うことでストレス解消になっている」「タバコを吸わなくても肺ガンになる人はいる」etc.の認知を持つに至る。“禁煙”という行動を新しく起こすことより、自分の認知を変更することの方が、必要なエネルギー量が小さくてすむからだ。

このように人間は、自分の選択した道が“良いはずだ”と思いたいというメカニズムを持っている。そして、その証拠を集めようとする。例えば自分が先日購入したデジカメに関して、「これを買って正解だった」と思いたいために、そのデジカメの良い点を探し出しては友人に説明する。こういった行動も、「認知的不協和」で説明のつく行動といえる。そして購入した製品が高額であればあるほど、不協和低減の努力は強度を増していく。

職業生活を例にあげると、次のような例が考えられる。自ら希望して異動、あるいは転職したが、異動先・転職先での業務がつまらなかったり、かえってつらかったりした場合、不協和が起こる。この不協和を低減させるために、前の職場のあら捜しをしたり、「今しんどいのは慣れてないからだ」と重要度の引き下げを行ったりする。

異動や転職のために遠い土地へ転居したり、単身赴任せざるをえなかったり、家族の大反対を押し切っての異動・転職だったりといったように、そのために払った犠牲が大きければ大きいほど、この傾向は強くなる。それで一時的にでも不安が軽くなったり、心が落ち着くようであれば、不協和の低減も意味あるコーピングとなり得る。しかし、不協和の低減に固執するあまりに自分を追い詰めたり、真実を見誤るようであれば、ストレスの増大を招くことにもつながる。

上述の異動・転職の例でいけば、新しい職場がストレスに満ちていて、業務もつまらなく、自分にとって有意義ではないということが真実なのかもしれない。しかしそう認めてしまうと、払った犠牲が無意味に思えてしまうために、「いや、そんなはずはない」「もっと頑張ればきっと楽しくなる」と固執し、どんどんストレスをためていく・・・といった現象が起きかねないことになる。

このような状態に陥らないためにも、「認知的不協和」というメカニズムが人間にはあるのだ、ということを知ることによって、自分の状態の客観視に役立てられたら良いかもしれない。

健康用語(メンタルヘルス編)

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