インプリンティング(imprinting)

記憶は、何度繰り返し覚えても使わないでいると薄れてくる、といったことがあるかと思いますが、発達のごく初期の時期に、「覚えた記憶が、その後それを変更しようとしてもなかなか変更できないほど強固な記憶となる現象」があります。それを、心理学用語で「インプリンティング」といいます。

このインプリンティングは、発達心理学の分野などでもよく取り上げられていますが、元々は、動物行動学者のローレンツが提唱した概念です。あるとき、ローレンツがハイイロガンの卵を孵化させていたところ、自分の目の前で孵化した雛鳥だけが、なぜか親鳥ではなく、自分を追いかけてくることに気づきました。
ガンの仲間の雛は、生まれつき親の後を追いかける習性を持っていますが、雛は親の顔を知りません。そこで雛は、生まれた直後に目の前にある、自分より大きな動くものを親として記憶し、その後を追うのです。通常記憶は、時間をかけて学習されるものですが、雛鳥が瞬時に親を記憶する現象をみて、ローレンツは、「まるで雛の頭の中に瞬時に印刷されたかのようだ」という意味で名づけました。
生まれたばかりのか弱い雛鳥にとって、自分を敵から守り育ててくれる親から離れずにいることは、生死に関わる大問題です。その為このような特殊な技能があるのかもしれません。

同じように人間の乳幼児期もインプリンティングの時期にあたるといわれており、この時期に養育者から教えられたことが、その子どもの基盤となるとも考えられています。しかし、動物のインプリンティングほど強烈ではなく、後で覚え直しができるとも言われています。
また、人間の場合は、インプリンティングの応用編とも言えるような時期があります。それは、初めて社会人となるときです。このときの「上司や先輩」と「新社会人」の関係は、親鳥と雛鳥の関係と似て、ある意味、「養育する立場」と「される立場」になります。そして、その時期に一緒に過ごした上司との関係で、その人のその後の社会人生活が大きく左右されると言われることもあります。
新社会人ですから、ミスをしたり悩んだりと苦労の連続かもしれません。注意や指摘は大切ですが、あまり否定的なことばかりを言い上司を怖いものとして印象付けるのではなく、子育てをする親鳥のように、暖かい心で新社会人と接してみてください。

健康用語(メンタルヘルス編)

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