内発的動機づけ

部下を持ったマネージャーであれば、どうすれば部下が仕事を積極的に取り組んでくれるかと考えたことが、一度や二度はあることでしょう。こういったことを考える際、参考となるものに「内発的動機づけ」があります。

人が何かをしようとする意思を、動機づけと言います。この動機づけには、外的な報酬や物品ではなく、その人にとっての達成感や充実感など内的な要因に基づくものがあります。それを、内発的動機づけと言います。

この分野の研究者として有名なエドワード・L・デシは、動機づけによる行動を、「人がそれに従事することにより、自己を有能で自己決定的であると感知することのできるような行動である」と定義しています。つまり、自分の行動を自分で決めるという「自己決定感」と、その行動の結果、自分が役に立っていることを認識できている「有能感」の二つが必要であると言及しています。そして、その後の研究では、内発的動機づけの三つ目の要因として「対人交流(重要な他者からの受容感)」を挙げています。そもそもこの分野の研究は、1970年代にデシが金銭など外的な報酬を提示することで、内発的動機づけが低下することを実証したことがきっかけとなり、その後多くの研究が生まれています。例えば、ハーバード・ビジネススクールのテレサ・アマビルら研究者は、専門スキルや創造性は、内発的動機づけが大きく影響していることを発見しています。産業分野においては、外発的動機づけに従い、出来高払いで報酬を与えようとする「科学的管理法」に対して、自由裁量度を大きくして企業の意思決定に参加させる「参加型管理法」という内発的動機づけに基づく方法が考えられてきました。

これらの考えを実際の職場に応用するとしましょう。仕事の成果を単に報酬に反映させるという評価の仕組みだけだと、従業員の内発的動機づけが抑制される可能性があります。例えば、自分がしたい仕事や自分の成長を目標にした仕事などへの欲求が低下する場合があります。長期的には、社員への権限委譲などにより、自分で決め行動する自己決定感と、その結果として成果を出した、という有能感を助長していくことで、自律的な組織へ変わると考えられます。そして、高い成果を出した場合は、報酬を与える以外に、有能感を高めるようなフィードバックや評価が大切となります。また、管理者としては、動機づけの3つの機能(行動を起こさせる、行動を継続させる、目的達成に対する評価をする)の内、どこに焦点を当てて動機づけするかという視点も大切です。

参考資料:エドワード・L・デシ『内発的動機づけ』、安藤延男・石田梅男訳、誠信書房、1980年

健康用語(メンタルヘルス編)

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