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新米に秋刀魚、栗やサツマイモやカボチャ、ブドウ、柿、梨……挙げればキリがないほど、美味しい食材が勢ぞろいする秋。暑さで食が細る夏とうってかわって、ついつい食べすぎて体重が増えやすい季節でもあります。肥満を遠ざけ、健康的な身体を維持するために大切なことは何か、『死ぬまで健康でいられる5つの習慣』の著者である脳神経外科医の菅原道仁先生にお話を伺いました。

肥満が連鎖する恐怖のメカニズム

家族で何となく体型が似てくるというのはよく聞く話です。家族の影響因子として肥満遺伝子の存在を突き止めた論文がよく知られていますが、血縁関係に限らず、社会的なつながりによって肥満が連鎖するという研究結果もあるそうです。

「肥満が感染すると聞くと驚かれるかもしれませんが、まるで感染するかのように肥満が連鎖するという研究結果をハーバード大学のニコラス・クリスタキス教授が発表しています。その論文によれば、配偶者が肥満な場合は肥満が37%増加し、兄弟姉妹だと40%増加、友人だと57%増加します。社会的につながっている相手との地理的な距離は関係がなく、たとえ離れて暮らしていたとしても影響するというのです」

ここでいう肥満とはBMI(=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))が30以上のこと。肥満は摂取カロリーが消費カロリーを上回り、かつ太り過ぎた体重を維持できるだけのカロリーを継続的に摂取していることで至ります。

「肥満になると血管内皮細胞が炎症を起こし、脳梗塞などを引き起こす動脈硬化が悪化します。痩せたいと相談してくる患者さんに『なぜ太ったと思いますか?』と尋ねると、運動不足を挙げる方が多いのですが、原因はそれではありません。確かに運動と消費カロリーは深くかかわりがあります。しかし、太る根本的な原因は摂取カロリーが消費カロリーを上回っているからです。要は食べ過ぎているということです」

ときどきランチを共にする会社の同僚が大食漢であっても、一緒に大盛りを食べはしないのではないでしょうか。しかし、仲の良い友達や兄弟、配偶者といった社会的なつながりが強い人の食習慣には強く影響を受けます。「友達がお菓子を食べるから私も食べる」「兄や姉と同じ量の食事が出てくる」「配偶者が食後のデザートを用意する」。「だから私も食べていいのだ」という具合に食べ過ぎる理由を正当化してしまうことが肥満を招くのです。

「肥満だけでなく、低身長も社会的なつながりの影響が大きいと言われています。親が小食だったり、菓子パンやお菓子ばかり食べていたりすると、子供も似た食習慣になりますから、成長期に必要な栄養素が不足し、低栄養性の低身長になるリスクが高まります。人間の身体は食べたものから作られます。子育て中の方には特に食べることへの意識を高めていただきたいと思っています」

周囲に良い影響をもたらす存在に

社会的なつながりが強い相手の影響を受けることは事実ですが、全員が全員とも周囲の影響で肥満に至るのではありません。周囲に関係なく、自分に合った食生活を選択できる人たちも大勢いるのです。

「この研究成果を『太るのは他人のせい』とネガティブに受け止めるのではなく、『自分の良い行動が他人にも影響を与えることができる』とポジティブに捉えるべきでしょう。自分自身が健康的な食習慣、禁煙、運動習慣などを心掛けることで、社会的なつながりのある人たちに良い影響を及ぼすことができます。良い影響がどんどん連鎖すれば、社会全体を良い方向に変えることになるかもしれませんよね」

ダイエットは消費カロリーよりも摂取カロリーを減らすことが重要です。夕食にお代わりしたご飯150kcal分を消費するには早歩きを約30分間行わなければなりません。それよりも、お代わりを我慢する方が手軽にできます。

「食事は直接的にカロリーの収支に影響しますが、運動は筋肉量を増やして基礎代謝を上げることがポイントです。基礎代謝量が増えれば、カロリーを消費しやすくなります。また、筋肉は熱を生み出す器官ですから、冷えや血行不良の改善にも有効です」

菅原先生は日々、腹八分目を心掛けているそうです。また、学生時代からラグビーなどのスポーツに親しみがあり、身体を動かすことも大好きなのだとか。

太らない健康的な身体づくりのためには、やはりダイエットの王道とも言うべき、食と運動が重要です。良い習慣を取り入れることで、自分も周囲も健康にしていきましょう。