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映画やテレビでも取り上げられる「10%説」は根拠がない

人の脳は全体の10%しか活動しておらず、それを100%活用できるようになれば超人的な力が発揮できる……そんな設定の映画やテレビドラマなどを見たことがありませんか? 普段、疑うことなく受け入れている「10%説」ですが、実は明確な根拠はありません。
こうした、脳の働きに関して脳科学をよそおった非科学的な理論を「神経神話」と言います。神経神話は広く信じられており、根拠がないにも関わらず、さも真実のように語られたり、テレビや映画などの題材などになったりすることで、誤解を広げる傾向にあります。

脳に関する俗説の多さにOECD(経済協力開発機構)も警鐘

最近のテクノロジーの進歩は目覚ましく、ヒトの脳の働きを目に見える形でとらえることが出来るようになってきました。脳の機能がとてもよく分かるようになってきたわけですが、その一方で、研究結果を拡大解釈したような俗説が広まってしまっていることも事実です。こうした風潮に、OECD(経済協力開発機構)も警鐘を鳴らしています。2007年にまとめた報告書(『脳からみた学習-新しい学習化学の誕生』)では神経神話について1章を設け、下記のような神経神話には根拠がないことを明記しています。

●脳に重要なことはすべて3歳までに決まる
●私たちは脳の10%しか利用していない
●眠りながら学習できる

神経の働きを知って、脳の働きを正しく理解するには

神経神話にまどわされないためには、脳の働きを正しく理解することが大切です。そのためには、まずは神経とはどういうものかを知ることが基本となります。
体の全ての器官と同様に、神経系も神経細胞といった細胞でできています。神経細胞は長い突起を伸ばして神経細胞同士ネットワークを形成しています。

神経は中枢神経系と末梢神経系に分かれる

神経系は「中枢神経系(脳と脊髄)」と、そこから全身に分布する「末梢神経系」の二つに分けられ、末梢神経は体全体に広がっています。
中枢神経系は情報処理の中心的存在です。一方、末梢神経系は脳から出る「脳神経」と、脊髄から出る「脊髄神経」に分類されます。また、末梢神経系はその働きから、皮膚や筋肉などの感覚や運動に関係する「体性神経」と、内臓の筋肉や、消化液を分泌する腺の働きなどをコントロールする「自律神経(交感神経と副交感神経)」に分けることもできます。

脳は、大脳・小脳・間脳・中脳・橋・延髄からなり様々な機能が

大脳の表面は大脳皮質といわれ、運動・感覚・言語などの様々な中枢があります。大脳皮質のうち前頭葉は特に知的活動に関連が深い部位です。また大脳辺縁系といわれる部位は摂食や生殖といった本能的な行動や、喜びや怒りなどの情動に深いかかわりがあります。
一方、小脳は運動機能の調節に働いています。間脳のうち視床下部は本能行動の中枢であると同時に、自律神経や内分泌とも深く関係しています。中脳・橋・延髄は脳幹と言われ、呼吸・体温調節・血圧調節など生命維持の根源の機能の中枢があります。

このように脳には様々な機能があります。何かを考えたり判断している時だけが「脳を使っている」わけではありません。
もし脳が10%しか働いていなかったら、私たちの生命活動はとても維持できないことでしょう。脳に関する俗説に触れたら、神経の仕組みを思い浮かべてみてください。

【参考】
医師に聞けないあんな疑問 医師が解きたいこんな誤解