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はしかや水ぼうそうに二度かからないのはリンパ球の記憶のおかげ

子どもの頃にはしかや水ぼうそうにかかった人は、通常大人になってからかかることはありません。一方で、インフルエンザは、同じシーズンに何度もかかることもあります。その違いはどこにあるのでしょうか。

はしかや水ぼうそうの原因は特定のウイルスです。こうした病原体が体の中に侵入すると、白血球のリンパ球が抗体などを作って、病原体を排除します。この時、病原体と戦ったリンパ球の一部は免疫記憶細胞となって残り、同じ病原体が再び侵入してきた時には素早く大量の抗体を作って病気の発症を防ぎます。はしかなどに二度とかかることがないのは、このように原因ウイルスをリンパ球が記憶しているからです。

インフルエンザウイルスは常に目印が七変化するのが特徴

インフルエンザの場合も、リンパ球が病原体であるインフルエンザウイルスを排除する仕組みは同じです。ただ、違うのは、インフルエンザウイルスにはA型とB型があり、さらにA型の中にもH1N1,H3N2などの亜型があること、また、同じ亜型でも,リンパ球が目印とするウイルス表面のとげ状の構造(抗原性)が遺伝子の突然変異によって常に少しずつ変化していることです。そのため、以前インフルエンザに感染したことのある人でも他のタイプのインフルエンザウイルスが流行すると以前のリンパ球の記憶が役に立たず、再び感染してしまうことがあるのです。

大流行の陰には人類が経験したことのないインフルエンザの出現が

インフルエンザといえば、2009年の新型インフルエンザの大流行が記憶にある人も多いことでしょう。これは、それまで流行していたH1N1亜型とは抗原性が大きく異なるH1N1亜型のインフルエンザが発生したために起きたものでした。
ただし,この時のインフルエンザウイルスは、人類にとって全く未体験の亜型ウイルスではなく,病原性も当初心配されたほどには高いものではありませんでした。より警戒が必要なのは、インフルエンザウイルスがフルモデルチェンジをして、人類が全く経験したことのない新型インフルエンザ,それも病原性の高い新型インフルエンザが発生した場合です。

新型インフルエンザが怖いのは「誰もかかったことがない」から

インフルエンザウイルスはヒト以外のほ乳類や鳥類にも感染しますが、動物の種類によって受容体のタイプが異なるため、亜型ごとに感染する動物が決まっています。ところが、ブタなどに鳥とヒトのインフルエンザウイルスが同時に感染して、両者の遺伝子が混じった遺伝子再集合体が出現したり、鳥インフルエンザウイルスが突然変異によってヒトへの感染性を獲得したりすると,今までヒトがかかったことのないインフルエンザウイルスが現れる可能性があるのです。これが、新型インフルエンザです。
新型インフルエンザには誰もかかったことがない、つまり、誰も免疫を持たないわけですから、新型インフルエンザが発生すると感染が拡大し、地球規模での大流行が起こることが懸念されているのです。

【参考】
医師に聞けないあんな疑問 医師が解きたいこんな誤解