昨年、バケツに入った冷水をかぶる「アイスバケツチャレンジ」が流行したことで、よく耳にするようになった難病「ALS」。しかし、ALSとはどのような病気かを知っている人はまだまだ少ないのが現状です。そんな中、ALSに関連したアメリカ映画が話題を呼んでいます。

そもそも「ALS」とは

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、体を動かす運動系ニューロンと呼ばれる神経系が変成する進行性の病気。筋肉の萎縮と筋力低下が起こるため、徐々に全身の筋肉を動かすことができなくなります。患者の90%に関して遺伝性が認められないと言われ、突然発症して、短期間で体の自由が利かなくなるという指定難病です。

進行が早い病気でもあり、病気の発症から3年から5年ほどで呼吸筋麻痺が起こり、人工呼吸器装着が必要になります。呼吸不全により亡くなることもあります。

現在のところ有効な治療法は確立されていませんが、iPS細胞を使って障害を受けた神経細胞そのものを再生させる再生医療などの研究が進んでいます。

天才物理学者の愛の物語

このALS患者で有名なのは、ブラックホールの研究で著名なスティーブン・ホーキング博士です。

この2014年に制作された『博士と彼女のセオリー』(日本では現在公開中)は、ホーキング博士と最初の妻であるジェーン・ワイルドの物語。2015年のアカデミー賞やゴールデングローブ賞などを受賞した話題作です。

201503_11_300a

「博士と彼女のセオリー」
http://hakase.link/

理論物理学者としての第一歩を踏み出そうとした矢先のケンブリッジ大学大学院時代にALSを発症したホーキング博士は、同じ頃、妻のジェーンと出会いました。「余命2年」といわれながらも愛を貫き、研究者として世界的に知られる存在となるまでの夫妻の歩みが描かれています。

ALSを患ったギタリストの半生

201503_11_300b

「ジェイソン・ベッカー Not Dead Yet ~不死身の天才ギタリスト~」
http://notdeadyet.jp/

もうひとつが、今年2月末に日本公開となった『ジェイソン・ベッカー Not Dead Yet ~不死身の天才ギタリスト~』(2012年制作)。

ジェイソン・ベッカーは、日本で活躍中のギタリスト、マーティ・フリードマンと17歳のときに『カコフォニー』というメタルバンドを結成してデビュー。その後、ジェイソンのギターテクニックに惚れ込んだデイヴ・リー・ロスのバンドに大抜擢されるも20代前半でALSを発症し、アルバム1枚だけを残してバンドを去ることになってしまいます。

医師から告げられた余命は3~5年。筋力の低下により自らギターを弾くことはできなくなりますが、音楽への情熱が衰えることはなく、その後も仲間や家族の支えを受けて作曲家・音楽家としての活動を続けています。

この映画には、日本で人気のミュージシャンも多数出演。現在も闘病中であるジェイソン・ベッカーのバイオグラフィとも言える作品です。

サブタイトルの「Not Dead Yet(まだ死ねないぜ)」に彼の思いが込められています。

ALSを患いながら作品を作った映画監督も

201503_11_300c

「アリスのままで(2014年)」
http://alice-movie.com/

また、ALSを患いながら映画を撮り続けた映画監督リチャード・グラッツァーが2015年3月10日に死去しました(享年63)。

若年性アルツハイマー病を発症した女性を描いた『アリスのままで(2014年)』は、iPadを使いながら作ったという作品です。主演したジュリアン・ムーアは、2015年のアカデミー賞・主演女優賞を受賞しています。

このような映画を通して物語として観ることで、本や関連文書を読むよりも、よりALS患者やその周りの人の気持ちに感情移入し、身近に感じることができます。

「ALSを知ろう」という堅苦しい気持ちではなく、「良い映画、話題の映画を観よう」というところからALSを知ることができる映画の紹介でした。