健康ニュース「革新的新薬を迅速に患者へ届ける」−BMSの戦略を語るブリン社長
ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)の日本法人は昨年、設立50周年を迎えた。後発医薬品や一般用医薬品の開発に取り組むなど、多様な戦略を採る製薬企業が現れる中、同社は「次世代のバイオファーマへの変革」を企業戦略に掲げ、革新的な医薬品に特化して、研究・開発や販売を行っている。今後、上市予定の新薬やそれに伴う国内展開の見通しなどについて、エマニュエル・ブリン社長に聞いた。
―BMSが掲げている企業戦略である「次世代のバイオファーマへの変革」とは、具体的にどのようなものでしょうか。
大規模な製薬企業と革新的なバイオテクノロジー企業の双方が持つ特長を取り込んでいくことを目指すというものです。大規模な製薬企業の特長とは、リソースを豊富に持っており、それを研究・開発に費やすことができるということ、革新的なバイオテクノロジー企業の特長は、創薬につながる革新性や俊敏さを有していることです。これらを融合させることで、革新的な新薬を迅速に患者へ提供することが可能になります。
数年前、製薬業界は困難な状況に直面していました。研究・開発コストが上昇する一方で、薬価を下げようとする圧力が強まるなど、規制が重要な意味を持つようになりました。そのような状況下で、製薬業界は戦略的な決断を迫られていました。
各社の戦略はさまざまで、医療用医薬品以外にも医療機器や一般用医薬品、後発医薬品を扱うといった多様なビジネスを展開する企業も出てくる中、BMSは革新的な医薬品に特化する戦略を採りました。わたしたちが掲げる「次世代のバイオファーマへの変革」という戦略上、研究・開発を進め、イノベーションに専念することは最も重要な要素です。
開発する新薬は、単に「既存の治療薬とは異なる医薬品」ということでは不十分です。われわれは常に新薬について「患者の満たされていない医療的なニーズを満たすものかどうか」を念頭に置いています。
現在は、BMSの革新的な新薬を日本の患者の元にいち早く届けることにフォーカスしており、日本のR&D(Research&Development、研究・開発)組織を数年前の2倍超に大幅増員し、研究・開発を進めています。過去5年間で、新規の作用機序を持つ、関節リウマチ治療に用いる生物学的製剤やB型肝炎治療薬、骨髄性白血病治療薬といった3つの主要製品を発売するに至りました。
こうしたイノベーション戦略が実を結び、今年は2005年以降、国内での売上高がプラス成長に転換した初めての年になりました。
―BMS米国本社のランベルト・アンドレオッティ最高経営責任者(CEO)は9月の記者会見で、15年に国内の医療用医薬品市場で20位以内の売上高を目指すと述べていましたが、これに向けた具体策をお聞かせください。
これからの4年間で、2つの大きな目標があります。
1つ目は、循環器・代謝領域でフランチャイズを展開していくことです。昨年12月に、心房細動に伴う脳卒中や全身性塞栓症の発症を抑制する抗凝固薬(ファクター a阻害薬)を承認申請しました。現在、標準治療薬として用いられているワルファリンは出血のリスクがあるため、常に治療効果をモニタリングする必要がありますが、この新薬はワルファリンと比較して、出血のリスクが大幅に低いほか、脳卒中、全身塞栓症のリスクや死亡率も有意に減少させることが臨床試験で示されています。
また、2つの糖尿病治療薬が現在、国内フェーズ3試験段階にあります。糖尿病については、さまざまな治療薬が発売されていますが、それでも患者は増え続けています。また、日本人の糖尿病患者では、HbA1c(過去1-2か月間の平均血糖値を反映させた血糖コントロールの指標)が適切にコントロールできていないという現状があります。多くの糖尿病治療薬は、常に変動している血糖値を全体的に低下させるため、低血糖を引き起こすリスクがありますが、現在この領域でシェアを拡大しているDPP-4阻害薬は、血糖値が高い時のみ作用するため、低血糖を起こしにくいという特長があります。われわれは既存のDPP-4阻害薬に代わる新しい選択肢としての新規DPP-4阻害薬を持っています。もう一つは新しい作用機序を持つSGLT2阻害薬と呼ばれる糖尿病治療薬です。従来の2型糖尿病治療薬はインスリンを増やしたり、効きやすくしたりするといった、インスリンに依存した作用機序であったのに対し、SGLT2阻害薬はインスリンに依存することなく血糖値を下げることが特長です。
循環器・代謝領域でフランチャイズを展開していくことは、BMS日本法人にとって新しい取り組みとなるため、12年は約200人の組織の拡大を見込んでいます。
もう一つのプライオリティーは、肝臓疾患領域で日本でのトップ企業になることです。既存のB型肝炎治療薬に加え、新たな肝がん治療薬とC型肝炎治療薬を上市していく予定です。C型肝炎については、既存のインターフェロンαとリバビリンの併用療法が不適格または不耐容の患者さんでは有効な治療薬がないのが現状ですが、この治療薬は選択肢になり得る可能性があります。
これらの取り組みが成功すれば、今後4年以内に国内製薬企業トップ20社に入れる可能性があると期待しています。
―15年以降の中長期的な展望についてはどのようにお考えでしょうか。
15年から20年にかけては複数の新規抗がん剤を上市する予定で、このがん領域で成長していきたいと考えています。また、中枢神経系領域で、アルツハイマー型認知症やうつ病、統合失調症の治療薬が現在フェーズ1、2試験の段階にありますが、これらの開発を進めていきたいと考えています。がんやアルツハイマー型認知症の領域で成功できれば、それに合わせた組織の拡大を行っていきたいと思います。
日本の医薬品市場は世界の医薬品市場で10%を占めるといわれていますが、BMSに関しては日本法人の売上高がBMS全体の売上高に占める割合は3%です。このため、日本市場はわれわれに大きなチャンスを提供してくれる市場だと考えています。今後は、さらに日本市場の成長のために投資をしていくとともに、積極的に人員も採用し、新薬の上市に伴う強化を行っていきたいと思います。
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