乳がんのリスクが高い人は? 15の危険因子|検診や検査方法

日本女性の16人に1人が、生涯で一度は乳がんになる時代

確実な予防法がない現状では、検診の習慣をつけ早期発見することが、乳がんに対する最大の防御です

乳がんの現状

 近年、日本での乳がん罹患率は急増し、毎年新しく6万人近い人が乳がんにかかっています。年齢別に見ると、乳がんの罹患率は30歳代後半から増え始めて40歳代に急増し、40歳代後半でピークに達します。続いて、50歳代、60歳代が乳がんにかかりやすい年代です。まれではありますが、男性でも乳がんにかかることがあります。

 国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によると、わが国での生涯で乳がんにかかるリスク(2005年データ)は、女性で16人に1人(臓器別では第1位)、乳がんで死亡するリスク(2009年データ)は、女性の74人に1人(臓器別では第5位)と発表されています。
 乳がんは罹患者数の多いがんですが、治療成績のよいがんで、早期発見・早期治療を行えば、生存率が高く、完治も可能ながんです。

乳がんの危険因子

 乳がんの発生や増殖には、女性ホルモンの1種であるエストロゲンが大きくかかわっていることが多いことがわかっています。わが国で乳がんが増えている背景には、食生活の変化や晩婚少子化、経口避妊薬の使用、閉経後のホルモン補充療法など、欧米化してきた女性の生活スタイルそのものが深く影響していると考えられています。

 ただし、乳がんはもはや誰がかかってもおかしくないがんです。リスクに該当しないからと安心はできません。下記のリスクは一応の目安です。予防のために少しでもリスクを軽減したり、早期発見に気をつける上で、参考にしてください。

○40歳以上
○母親や姉妹など家族に乳がんになった人がいる
○良性の乳腺疾患がある(あった)
○出産経験がない
○初産年齢が30歳以上
○放射線被曝が頻回または高線量
○初潮年齢が早い(11歳以下)
○閉経年齢が遅い(55歳以上)
○授乳経験がない、または短い
○閉経後の肥満
○身長が高い
○ホルモン補充療法(HRT)を長期間続けている
○経口避妊薬(ОC)を長期間使用した
○強い飲酒習慣がある
○高カロリー、高脂肪の食事をとっている など

乳がん検診(一次検診)の主な検査

 「国民生活基礎調査」によると2010年の乳がん検診受診率は、24.3%、前回調査の2007年の20.3%に比べると、4%アップしたものの、国の目標である50%にはまだまだ届いていません。
 乳がんの早期発見のためには、自治体や職場が実施している「乳がん検診」を定期的に受けることが大切です。自治体を中心とした集団検診としては、40歳以上の女性は2年に1回、乳がん検診を受けることがすすめられています。健康保険組合などによっては、毎年の検診をすすめている場合もあったり、35歳からの検診が可能なこともあります。

 家族に乳がん経験者がいる場合などは40歳になるのを待たず、20歳代のうちに、一度乳腺の専門クリニックなどで、自主的に乳がん検診を受けておくと安心です。その後の検診の受け方や、日常生活の注意点などを相談しておくとよいでしょう。家族歴がなくても、30歳代の乳がんも増加しているので、30歳になったらかかりつけ医と相談して、自分に合った検診を始めたほうがよいでしょう。

 また、乳がんは、自分で乳房を触って発見することができるがんです。定期的に自分で乳房をチェックしていれば、乳がんを早期発見できる可能性が高くなるので、20歳以上の女性は毎月1回、自己検診(自己チェック)を必ず行いましょう。日常の自分の乳房の状態を知っておくことが、異常に気づくための第一歩です。

【乳がん検診(一次検診)】
●問診
 年齢、月経周期、妊娠・分娩・授乳の経歴、家族の乳がん歴などや、体調などを尋ねます。

●視触診
 視診は、医師が乳房を観察して、以下のような乳房の異常はないかをチェックします。
・皮膚の陥没/乳房の異常な膨らみ/むくみ(浮腫)/皮膚の潰瘍/乳頭陥没/乳頭びらん(ただれ)
 触診は、医師が指で乳房と脇の下を触れて、以下の点をチェックします。
・腫瘤(しこり)の有無・大きさ・位置・硬さ・動くか/分泌物の有無/脇の下のしこり
 視触診のチェック項目は、自己検診(乳房の自己チェック)のときの参考になります。

●マンモグラフィ検査
 乳房専用のX線装置を使った検査です。透明のプラスチック板で乳房を挟み、平らに延ばして撮影します。乳房を上下から挟む場合と、左右から挟む場合の2方向からの撮影が基本ですが、1方向からの撮影としているところもあります。
 X線撮影なので、妊娠している人や妊娠の可能性のある人は受けられません。
 医師の視触診や自己検診では発見できない小さなしこりや、微細石灰化と呼ばれる状態(非常に小さな白い点)の発見に適しています。
 若い人では乳腺が発達しているため乳房全体が白く映り、白く映るしこりを判別しにくい場合があります。

●超音波(エコー)検査
 超音波を使って乳房をチェックします。医師の視触診や自己検診では発見できない小さなしこりを発見したり、発見したしこりが良性か悪性かの診断を行います。ただし、微細石灰化を映すことは不得意です。
 放射線の被曝を避けたい妊婦、乳腺が発達している若年者、乳房に痛みや炎症や外傷などがあってマンモグラフィの圧迫に耐えられない場合など、超音波検査が適しています。

精密検査の主な検査

 乳がん検診(一次検診)で乳がんの可能性が疑われると、精密検査(二次検診)が必要になります。

【病理検査】
 乳がんの存在が疑われる部分(しこりや微細石灰化の存在する部分)から、細胞や組織を採取して、顕微鏡で詳しく調べることを病理検査といいます。細胞の形状や並び方などから、良性か悪性か、また悪性の度合いの診断を行います。

●細胞診
 細胞診には、細い針を刺して細胞を採取する穿刺(せんし)細胞診と、乳頭からの分泌液を採取する分泌液細胞診があります。穿刺細胞診は手で触れるしこりに細い針を刺して、ごく少量の組織を採取します。

●組織診
 しこりや微細石灰化の部分の組織をやや太めの針で採取する「針生検」と、小さなメスでしこりの一部を切り取る「外科的生検」があります。細胞診より採取量が多いので、確実に診断を行うと同時に、治療方針に必要な乳がんの性質診断を行うことができます。組織診では、局所麻酔を行います。

●吸引式針生検
 マンモグラフィや超音波の画像を確認しながら、やや太目の針を刺し、吸引をかけながら、針の側面にある吸引口から組織を採取します。1回の穿刺で多くの組織を採取でき、より詳しい診断を行うことができます。局所麻酔の上、行います。

【画像検査】
 しこりや石灰化の有無、大きさや形、周囲への広がり、乳房以外の臓器、例えば肺、肝臓、脳などや骨への転移の有無を調べるために画像検査を行います。

●CT検査
 コンピューター断層撮影検査ともいいます。X線を体の外周から照射し、組織に吸収されたX線量をコンピューターで処理し、体内の断層像(輪切り像)を描き出す画像検査です。

●MRI検査
 磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。

●骨シンチグラム検査(アイソトープ検査)
 骨への転移の有無を調べる検査法です。ごく微量のアイソトープ(放射性同位元素)を血液内に注入し、それが組織に集積する様子をガンマ線カメラで撮影します。骨折や炎症、がんの転移などで、骨の再生が活発に起きている箇所にアイソトープが集積します。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
福田 護先生


聖マリアンナ医科大学附属研究所
ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニック院長
1969年金沢大学医学部卒業後、国立がんセンターを経て74年に聖マリアンナ医科大学第一外科助手に。米国Memorial Sloan-Kettering Cancer Center、バージニア大学外科を経て、78年聖マリアンナ医科大学に復職。92年同大学第一外科助教授、2002年同大学外科学教授、09年に現職就任。日本乳癌検診学会理事長、日本乳癌学会名誉会員、日本がん検診・診断学会理事、NPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会監事、NPO法人キャンサーリボンズ理事長、認定NPO法人乳房健康研究会副理事長ほか、要職多数兼務。著書に『乳がん全書』『乳がんの人のためのレシピ』(法研)ほか多数。

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