肺がんの基礎知識 一次検診と二次検診の主な検査方法|危険因子

日本男性の12人に1人が、生涯で一度は肺がんになる時代

男性に多く、たばことの関係が深いとされています。喫煙者本人だけでなく、受動喫煙も要注意

肺がんの現状

 年齢別にみた肺がんの罹患率は、40歳代後半から増加し始め、高齢になるほど高くなります。その傾向は男性ほど顕著で、罹患率・死亡率ともに男性は女性の3倍から4倍となっています。

 国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によると、わが国での生涯で肺がんにかかるリスク(2005年データ)は、男性で12人に1人(臓器別では大腸がんと並んで2位)、女性で26人に1人(臓器別では第5位)。肺がんで死亡するリスク(2009年データ)は、男性の16人に1人(臓器別では第1位)、女性で47人に1人(臓器別では第4位)と発表されています。

肺がんの危険因子

 肺がんと関係が深いとされるのは、喫煙習慣です。日本人の肺がんによる死亡者のうち、たばこが原因であったのは男性70%、女性20%とする報告があります。一般に、喫煙期間が長く、1日の喫煙本数が多い人ほど、肺がんのリスクが高まります。「1日のたばこの本数×喫煙年数」の数値が600以上の場合は、肺がんのハイリスク群とされます。日本人男性では、喫煙者が肺がんになるリスクは非喫煙者の4~5倍。喫煙と肺がんの関係がいかに深いかを示しています。

 そのほかのリスク要因としてアスベスト、シリカ、砒素(ひそ)、クロム、コールタール、放射線、ディーゼル排ガスなどにさらされやすい職業や、一般環境での曝露などがあげられます。
 また、喫煙者本人だけでなく、ほかの人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙によっても、肺がんリスクが高くなることがわかっています。

肺がん検診(一次検診)の主な検査

 「国民生活基礎調査」によると2010年の肺がん検診受診率の全国平均は21.2%。前回調査の2007年の21.1%に比べると、ほぼ横ばいです。国の目標である50%にはまだまだ届いていません。

 定期検診(集団検診)としての「肺がん検診」は、一般的に胸部X線検査と、痰の出る人や喫煙者には喀痰(かくたん)検査が加わります。40歳以上が肺がん検診の対象になり、毎年1回が基本です。
 なお、先述したような肺がんのハイリスクの患者さんを対象にした胸部CT検診の臨床試験の結果が、昨年秋に米国で報告されました。これによると、CT検診を1年に1回受けることで、死亡率が20%減少するという結果が示されました。今後、胸部CTが一次検診のプログラムに組み込まれるかもしれません。

●胸部単純X線検査
 肺の腫瘍(肺がんや良性腫瘍)や炎症(肺炎や肺結核)のほかに、心疾患、胸部大動脈瘤、縦隔腫瘍、胸水などを発見することができ、このような疾患の評価や経過観察にも広く用いられます。ただし、CTに比べて小さな病変を発見することは苦手なため、胸部CT検診で発見可能な早期肺がんレベルを胸部単純X線検査で見つけることは非常に困難です。そのため、検診を受診する際は、その限界を知っておく必要があります。

●喀痰(かくたん)検査
 肺や気管支、気管の分泌物である喀痰には、呼吸器のさまざまな情報が含まれています。例えば、感染症にかかるとたんの量が増え、色が濃くなります。ぜんそくではさらっとしたたんが出ます。がんの場合には、痰の中に糸をひくような血液が混じることがあります。
 喀痰の検査にはがん細胞が入っていないかを見る喀痰細胞診と、たんに混じっている細菌や真菌(カビの一種)を調べる細菌検査があります。細菌検査には顕微鏡による観察と培養検査があります。通常、肺がんの検査としては、細胞診のみが行われます。
 気管や肺の入り口付近の気管支にできる肺がんは、最近ではたばこのフィルターなどの改良により発生数が減りましたが、この部位の肺がんはX線画像に写らなくても、この喀痰検査で発見されることがあります。

精密検査(二次検診)の主な検査

 肺がん検診(一次検診)で肺がんの可能性が疑われると、精密検査(二次検診)が必要になり、主に下記のような検査が行われます。

【視診】
●気管支鏡検査
 気管や肺の入り口あたりにある太い気道(気管支)の内部を観察する検査です。ライトのついた気管支鏡という細い管(ファイバースコープともいう内視鏡)を、鼻あるいは口から気管と肺に挿入して、観察します。
 ただし、気管支鏡で観察できるのは、一般には肺の入り口から3~4cmまでの範囲です。

【病理検査】
 精密検査における病理検査は、下記のような方法で、細胞や組織の一部を採取し、顕微鏡で観察して異形成(細胞の形や並び方)の程度やがんのタイプを詳しく調べます。
 ただし、検査のための採取時に、がん細胞を散布(ばらまき)するリスクがあるので、手術可能な病期(がんの進み具合のこと。進行期やステージともいう)で、特に病巣が小さい場合は、手術で病巣を中心にその周辺も含め肺を部分切除しますので、その切除組織を病理検査することで確定診断を得るほうが多くなっています。

●気管支鏡下検査(生検・擦過細胞診・洗浄細胞診)
 気管支鏡検査では、観察だけでなく、がん(腫瘍)が見える場合には、そこから直接細胞を採取(生検)したり、がんの拡がりが怪しい場所は、こすって細胞を採取(擦過)したりします。
 最近では、機器の発達もあり、肺の端(末梢)の影の診断も、気管支鏡検査でつけられるようになっています。2cm以下の小さい影でも、場所によっては超音波気管支鏡やバーチャル気管支鏡などの技術を駆使して細胞・組織が採取できるようになりました。

●針生検
 気管支鏡検査で細胞が採取できない場所あるいは試みたけど診断がつかなかった場合、局所麻酔を行った上で、肋骨の間から肺の病巣を狙い定め、細い針を刺してその針から注射器などを使って病巣の一部や組織を吸引・採取し、顕微鏡で調べてがん細胞の有無を確認する検査です。これを穿刺(せんし)吸引細胞診といいます。
 このとき、病巣の位置を正しく探し当てるために、X線や超音波、CTなどの画像を併用します。特にCTを用いる肺の針生検を「CTガイド下肺針生検」といいます。

●胸腔穿刺
 胸郭内と肺の間の空間にたまった液体(胸水)を、局所麻酔を行った上で針を刺してそこから吸引して細胞を採取し、顕微鏡で調べてがん細胞の有無を調べる検査です。

●胸膜生検
 胸腔穿刺で使う針より太い針を使い、局所麻酔を行った上で胸膜(昔でいう「肋膜」のこと。肺あるいは胸壁をつつんでいる膜)の病巣の一部や組織を採取し、顕微鏡で調べてがん細胞の有無を調べる検査です。

●リンパ節生検
 首のリンパ節がはれている場合、リンパ節に針を刺して細胞を採取したり、局所麻酔を行った上で、メスで切開してリンパ節を採取、切除し、顕微鏡で調べてがん細胞の有無を調べる検査です。

【画像検査】
 診断が確定した場合、下記のような画像検査を行って、臨床病期(がんの進行状態、拡がり具合)などを総合的に判断します。

●CT検査
 コンピューター断層撮影検査といいます。X線を体の外周から照射し、組織に吸収されたX線量をコンピューターで処理し、体内の断層像(輪切り像)を描き出す画像検査です。最近ではむしろ早期の肺がんはCT検査で見つかるようになっていますので、診断の際にこの検査が行われることもあります。

●MRI検査
 主に、頭部あるいは骨への転移の有無を調べる検査です。磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。縦隔腫瘍(左右の肺と胸椎、胸骨に囲まれた部分にできた腫瘍)などでは、その性状を知るためにこの検査を行うことがあります。

●骨シンチグラム検査(アイソトープ検査)
 骨への転移の有無を調べる検査法です。ごく微量のアイソトープ(放射性同位元素)を血液内に注入し、それが組織に集積する様子をガンマ線カメラで撮影します。骨折や炎症、がんの転移などで、骨の再生が活発に起きている箇所にアイソトープが集積します。最近では、下記のPET/CT検査が増えてきたことから、骨シンチグラム検査が行われるケースは少なくなっています。

●PET/CT検査
 PETとはがん細胞で糖の分解(代謝)が活発になることを利用した検査で、がんがあるかどうか、リンパ節など肺以外に転移があるかどうかなどの診断に用いられます。これに、CTの画像を同時に合わせることで、より精度の高い画像が得られます。
 また、デジタルデータ化されるので、さまざまな角度の断面を表示することが可能で、目的に応じた画面を観察することができます。ただし、胸部の高分解能CT検査に比べ、CTの画質が劣るので、肺がんの早期診断には有用ではありません。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
坪井 正博先生


神奈川県立がんセンター 呼吸器外科医長
1987年、東京医科大学卒。同年、東京医科大学病院にて研修。91年、国立がんセンター(現在の国立がん研究センター)にてレジデント、94年、同センターにてがん専門修練医。その後、会田病院ほか一般病院を経て、97年から東京医科大学病院呼吸器外科勤務。2008年から現職。日本外科学会専門医・指導医、日本呼吸器外科学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構暫定教育医・認定医、日本臨床腫瘍研究グループ肺がん外科グループ代表など。主な著書に、『肺がん診療を安全に行うために』(編集)、『徹底ガイド肺がんケアQ&A (ナーシングケアQ&A 19) 』(編纂)、『肺がん (よくわかる最新医学) 』(著)など多数。

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