肝臓がんの基礎知識 4つの危険因子|肝臓がんの主な検査方法

多くはウイルス性の慢性肝炎や肝硬変の後に肝臓がんを発症

発症しても自覚症状に乏しい肝臓がん。男性は40歳代、女性は50歳代から徐々に増えています

肝臓がんの現状

 国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によると、わが国での生涯で肝臓がん(「肝がん」ともいう)にかかるリスク(2005年データ)は、男性で26人に1人(臓器別では第5位:大腸がんを結腸がんと直腸がんに分けた場合。以下同様。臓器別罹患数でも第5位)、女性では50人に1人(臓器別では第6位。臓器別罹患数でも第6位)。肝がんで死亡するリスク(2009年データ)は、男性で37人に1人(臓器別では第3位。臓器別死亡数でも第3位)、女性では76人に1人(臓器別では第6位。臓器別死亡数でも第6位)と発表されています。
 年代別の罹患率をみると、男性では40歳代から、女性では50歳代から徐々に増え、男女ともに70歳代でピークを迎える傾向が見られます。

肝臓がんの危険因子

 日本での肝臓がんの原因の約90%はウイルス感染で、C型肝炎ウイルス(HCV)によるものが全体の約70%、B型肝炎ウイルス(HBV)によるものが約20%です。これらの肝炎ウイルスに感染しても必ずしも肝がんになるとは限りませんが、一部がC型肝炎やB型肝炎から慢性肝炎、肝硬変に進み、肝がんになるリスクが高くなることから、肝炎ウイルスの感染者は、肝がんのハイリスク者とされます。

 C型およびB型の肝炎ウイルスは、主に血液を介して感染します。感染ルートは、輸血や血液製剤などの医療行為、針刺し事故や注射の回し打ちなどがあり、B型ウイルス肝炎では、これらのほか性行為や出産時の母子感染があります。
 現在では母子感染や輸血・血液製剤などでの感染については、感染防止対策が徹底されており、新しく感染する人はほとんどいませんが、それ以前に感染し、無症状のままに持続感染者(キャリア)となり、感染を知らずに過ごしている人がまだ多いのが現状です。感染しているかどうかを調べたことがない人は、血液検査を受けて確かめるとよいでしょう。

 このほか、アルコール性肝疾患や、高エネルギー・高脂肪といった食生活が原因で肝障害を起こす非アルコール性脂肪肝炎から、肝がんになる場合もまれですがあります。
 肝がんのハイリスク者に当たる人は定期的に検査を受け、がんの早期発見に努めることが重要です。

【肝臓がんのリスク】
・肝硬変
・慢性C型肝炎や慢性B型肝炎
(肝炎の活動性がなくてもウイルスキャリア状態はリスクとなります。またC型肝炎では抗ウイルス療法でウイルスが消えた人でも、発がんのリスクが低いながらも残りますので“治癒”しても要注意です)
・非アルコール性脂肪肝炎
・アルコール性肝疾患

肝臓がんの主な検査

 肝臓がんは、厚生労働省のガイドラインによる「がん検診」の対象にはなっていません。肝臓がんのハイリスク者になっているかどうかは、まずは血液検査でわかる肝機能検査や肝炎ウイルス検査などで調べるとよいでしょう。
 またC型・B型肝炎ウイルスに持続感染している人(キャリア)は、定期的な検査を受けて肝臓の調子をチェックする必要があります。B型肝炎では、キャリアは多くの場合肝機能は正常で、肝炎や肝硬変がなくても肝臓がんが発生することがあります。一方C型肝炎では慢性肝炎から肝硬変になると肝臓がんの発症リスクが高まります。
 肝臓がんにはいくつかの種類がありますが、日本では肝臓がんのうち「肝細胞がん」が90%を占めるため、肝臓がんといえば、ほぼ「肝細胞がん」を指します。

【血液検査】
●一般肝機能検査
 慢性肝炎や肝硬変の発見や経過を見るため、定期的に肝機能をチェックします。一般肝機能検査は、特定健診などの定期健診の血液検査の項目にも入っていますが、肝炎の活動性を示すASTやALTが正常範囲でも肝臓がんが発生していることがあるので、これらの数値だけを見ていたのでは不十分です。
・AST(GOT)とALT(GPT)
 肝細胞が破壊されると、血液中に流出する酵素。炎症の程度の目安になります。慢性肝炎の病状には波があるため、病状が進行していても数値が上がらないこともあります。またこれらの数値が高ければ肝炎の活動性が高い状況で、C型肝炎では肝臓がんの発症するリスクも高まります。しかしB型肝炎では、これらの数値が正常でも肝臓がんが発生する頻度はC型肝炎より高めです。
・γ-GTP
 肝臓内の胆管で作られる酵素。アルコール性の肝炎や肝硬変、非アルコール性脂肪肝炎のときは、高値になります。大きな肝臓がんができると上昇しますが、2cm未満の肝臓がんではほとんどの場合、正常範囲です。
・血小板数
 血液を固める働きをする血液成分。進行した慢性肝炎や肝硬変のときは数値が下がります。

●肝炎ウイルス抗体検査
 感染の有無や感染の既往、予後の判定などに重要な血液検査です。
・C型肝炎ウイルス検査
 まずC型肝炎ウイルスの抗体を測定するHCV抗体検査を行い、陽性(+)か陰性(-)かを判定し、陽性の場合はその量(HCV抗体価)を調べます。さらに現在感染している人(HCVキャリア)と、過去に感染して治癒した人(感染既往者)とを区別するために、HCVコア抗原検査(C型ウイルス肝炎の抗原を調べる検査)とHCV-RNA定量検査(C型肝炎ウイルスの遺伝子の一部を増幅して、血液中のごく微量のC型肝炎ウイルスを検出する検査)を組み合わせて判断します。
 C型肝炎ウイルスに一度かかってウイルスがいなくなった人(感染既往者)やインターフェロン治療などでウイルスが駆除できた人でも、HCV抗体は陽性のままで続くので、ウイルスの定量検査は鑑別に重要です。
・B型肝炎ウイルス検査
 血液中に存在するB型肝炎ウイルスのS抗原(HBs抗原)を測定し、陽性(+)であればB型肝炎ウイルスの持続感染が疑われます。HBs抗原が検出された場合は、肝臓内でB型肝炎ウイルスが増殖しており、血液中にも存在することを示唆しています。さらにHBe抗原やHBe抗体、B型肝炎ウイルスの核酸定量検査などを行い、ウイルスの活動性を評価します。

●腫瘍マーカー検査
 腫瘍マーカーとは、体内にがんが存在すると血液中に大量に増える物質をいいます。肝臓がんの有無を調べる際や、肝臓がんの治療経過を見るときに用います。
 肝臓がんが3cm以上の大きさになると、8割以上の患者さんで上昇します。一方、2cm未満の小さい肝臓がんの場合、8割以上の患者さんでは上昇しないため、早期診断にはあまり有効ではありません。しかし、2cm未満の肝臓がんでも腫瘍マーカーが上昇してくることがあるため、定期検査では重要な項目です。特に肝臓がんでは他の臓器のがんと違って以下の腫瘍マーカーの上昇が特徴的です。
・AFP
 慢性肝炎で肝細胞が再生するときや、肝細胞ががん化すると作られます。
・PIVKA-II
 正常な細胞は完成品である凝固たんぱくを作りますが、がん化した肝細胞は完成品を作れず、中間産物であるPIVKA-IIという物質を作ります。
・AFP-L3分画
 AFPを分離させてさらに詳しく調べる検査。再発肝臓がんの経過を見る場合に、用いられることが多い検査です。

【画像検査】
 異常の起きている箇所を確定したり、臨床病期(がんの進行状態、拡がり具合)などを総合的に判断します。

●超音波検査(エコー検査)
 プローブという装置を直接体表に当て、超音波を体内の臓器などに発射し、反射してきた超音波を検出して映像化する検査です。B型肝炎およびC型肝炎の患者さんの定期検査として、最も簡便で有用な検査です。40歳以上のB型慢性肝炎やC型慢性肝炎の患者さん(キャリアを含む)では半年に一度の検査を行うべきです。

●CT検査
 コンピューター断層撮影検査ともいいます。X線を体の外周から照射し、組織に吸収されたX線量をコンピューターで処理し、体内の断層像(輪切り像)を描き出す画像検査です。肝臓がんは血流が豊富な腫瘍で、診断には造影剤を用いることが重要です。

●MRI検査
 磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。従来は腹部CT検査と比べ画像の質が劣っていましたが、最近では画質も改良し特殊な造影剤を用いることで、肝臓がんの早期診断に有用な検査となってきています。

●腹部血管造影検査
 足の付け根の動脈からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、肝臓の血管まで到達させて造影剤を流し、X線撮影を行います。その画像からがんに栄養を与えている動脈の特定や、肝臓内を走る血管に異常はないかなどを調べます。また血管造影検査にCT画像を併用することで、通常のCT画像では発見が困難な小さながん(肝内転移、多中心性発生がんなど)を発見することがあります(CTAP検査)。

【病理検査】
●腫瘍生検
 肝臓がんか否か診断が困難な場合は肝臓の腫瘍の組織の一部を採取し顕微鏡で観察して、良性か悪性か、悪性であればその性質や悪性度を詳しく調べます。超音波画像を併用して肝臓の位置を把握しながら行ったり(超音波ガイド下肝生検)、腹腔鏡を用いて生検用の針を肝臓に刺し、肝臓の腫瘍の組織の一部を採取する方法があります。
 しかし腫瘍を生検した後、まれですが腹腔内に腫瘍が散らばったり(播種)する危険もあるため、大部分の場合は、造影CT検査などで診断が確定すれば腫瘍生検は行いません。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
石川 隆先生


丸の内クリニック理事長・院長
1981年東京大学医学部医学科卒。1983年東京大学医学部附属病院第三内科、都立駒込病院などで臨床研修の後、88年東京大学医学部附属病院第三内科文部教官助手に。90年カルフォルニア大学サンフランシスコ校ポストドクトラルフェロー。94年に帰国し、東京大学医学部附属病院第三内科に復職。98年同第三内科医局長を経て、99年東京大学保健センター講師に就任。2011年丸の内クリニック理事長・院長に就く。専門は内科学・消化器病学・肝臓病学・健康管理など。主な所属学会は、日本内科学会、日本消化器病学会、日本肝臓学会、日本消化器内視鏡学会、日本超音波医学会など。

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