脳腫瘍の基礎知識 早期に現れる9つの症状 腫瘍部位別症状

脳腫瘍の早期発見は画像検査が有効。気になる症状が続いたら

「不治の病」というイメージを持つ人が多いかも知れない。しかし、きちんと治療すれば完治する可能性が高い

脳腫瘍の現状

 頭蓋骨内にできた腫瘍を総称して「脳腫瘍」といいます。頭蓋骨内の組織そのものから発生した「原発性脳腫瘍」と、ほかの臓器・部位にできたがんが転移した「転移性(続発性)脳腫瘍」に大別されます。

 国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によると、わが国で1年間に新しく「脳・中枢神経系のがん」にかかる人は約5,063人(2005年データ)、1年間に「脳・中枢神経系のがん」で亡くなる人は約1,810人(2009年データ)と発表されています(数値は原発性のみ)。年次推移では、男女ともに罹患率も死亡率も増加傾向にあります。
 年代別の罹患率をみると、他の多くのがんの傾向は40歳代や50歳代以降から徐々に増え始め、高齢になるほど高くなるのですが、「脳・中枢神経系のがん」は、乳幼児から一定数があり、40歳代や50歳代から加速上昇する傾向が見られます。罹患率・死亡率ともに80歳代がピークとなっています。

脳腫瘍の特徴

 原発性脳腫瘍は悪性(がん性)・良性、小児特有・成人特有など約20種類に分かれ、種類によって発症しやすい年齢、できやすい部位、発症頻度、治療の効果、予後のよしあしなどが異なる傾向があります。
 良性腫瘍はかたまりの状態でゆっくり増殖しますが、悪性腫瘍は成長が早く、周囲に広がって大きくなり、正常な組織との境目が明確ではありません。

 脳のように硬い骨に囲まれて容量の決まった部位では、腫瘍が増殖すると全体に圧力が加わるため、腫瘍ができる部位によっては、良性であっても、めまい・視力障害などといった神経症状や、突然意識不明になったり、呼吸停止が起こったりするなど命にかかわることも起こりうるので、症状に気づいたら早めに受診・検査を行い、治療につなげていくことが大切です。
 原因は遺伝子の変異と考えられていますが、それ以上のことは、現在でも明らかになっていません。ですから、リスク回避をして、予防を心がけるのは難しいといえます。

●主な脳腫瘍
【悪性】
・神経膠腫(しんけいこうしゅ)
 グリオーマともいう。原発性脳腫瘍の約30%を占める。
・転移性脳腫瘍
 がんにかかった人の約10%に発症するとされる。

【良性】
・髄膜腫(ずいまくしゅ)
 原発性脳腫瘍の約25%を占める。女性ホルモンとの関係が深く、女性に多く発症する。
・下垂体腺腫
 原発性脳腫瘍の約15%を占める。ホルモン分泌に異常が起こりやすい。
・聴神経腫瘍
 原発性脳腫瘍の約10%を占める。前庭神経鞘腫(しょうしゅ)とも呼ばれ、ほとんどが前庭神経より発生する。聴力低下や耳鳴り、顔の知覚低下などが起こりやすい。

 画像検査の精度が高くなったことから、小さな腫瘍も発見しやすくなり、脳ドックで無症状の腫瘍が見つかることも多くなりました。
 従来はどの脳腫瘍も手術による切除が治療の中心でしたが、最近では正確で安全なガンマナイフ(放射線療法の一種)の実績により、治療成績が向上しています。

脳腫瘍の主な症状

 脳腫瘍の症状は、頭蓋内圧亢進症状と局所症状に大別されます。いずれも比較的早期に症状が現われることがあります。

【頭蓋内圧亢進症状】
 頭蓋骨の中に腫瘍ができることによって脳が圧迫されると、次のような症状が現われます。
○早朝に頭痛がよく起きる
○頭痛が徐々に重くなる
○吐き気(食事に関係なく頻繁に)
○おう吐(食事に関係なく頻繁に)
○視界がぼやける(外転神経麻痺<まひ>)
○意識低下することがある
○てんかん発作が起こることがある
○突然激しくけいれんすることがある
○もの忘れが多くなる

【局所症状】
 脳のどの部位に脳腫瘍ができたかにより、全身にさまざまな症状が現れます。
○前頭葉後部の運動野の腫瘍・・・腫瘍ができた部位と反対側の手足が麻痺したり、しびれたりする
○優位半球(言語中枢がある側。多くは左半球にある)の前頭葉側方の言語中枢(ブローカ中枢)・・・言葉がでにくい(発語困難)、または言葉の意味がわからない
○後頭葉の視覚野・・・視野欠損・視覚障害が起こる
○小脳・・・ふらつき、歩行困難が起こる
○脳幹・・・手足の麻痺、複視、顔面麻痺、しびれ、嚥下(えんげ)障害など

脳腫瘍の主な検査

 脳腫瘍は、厚生労働省のガイドラインによる「がん検診」の対象にはなっていません。
 前述のような症状がある人は、脳腫瘍の可能性を考えて、脳神経外科や神経内科を受診し、頭部画像検査を中心とした検査を受けることをすすめます。

【画像検査】
 腫瘍の存在する位置、腫瘍の大きさを調べます。

●頭部CT検査
 コンピューター断層撮影検査ともいいます。X線を頭の外周から照射し、組織に吸収されたX線量をコンピューターで処理し、頭蓋骨内の断層像(輪切り像)を5mm~1cm間隔の画像で映し出す検査です。病変の大きさ、位置、広がりを把握することができます。

●頭部MRI検査
 磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。2~3mmの小さな病巣を発見することができ、また腫瘍の形から良性か悪性かをある適度推測することもできます。画像検査で最も有効とされる検査です。
 MRIの二次元画像(断層画像)をコンピューターにより解析し、高精度な三次元画像を描出したものをMRI三次元画像(MRI3D画像)といいます。

*冠状断とは、前額に平行な断面、つまり前から患者さんを見ているような撮像法のこと。


●頭部MRA検査
 頭部MRIの原理を利用して、頭部の血管の様子を詳しく立体画像化するのが、頭部MRA(磁気共鳴血管造影)です。コンピューターの画面上で、方向を変えて三次元に画像を表示することができます。

●頭部血管造影検査
 頭部アンギオグラフィーともいいます。頸部の血管にカテーテルを挿入し、造影剤を注入してX線撮影し、動脈、静脈、毛細血管の異常を観察する検査です。デジタルサブトラクション血管造影(DSA)という装置を用いると、血管がくっきりと浮き上がって見え、より鮮明な映像を表示すことができます。

●PET検査
 必要に応じて、PET検査が行われることがあります。「陽電子放射断層撮影法(Positron Emission Tomography)」ともいいます。ブドウ糖に似た糖に放射性同位元素を結合させた検査薬を注射し、その薬が放出する放射性同位元素を特殊なカメラで外部から検出し、画像化します。がん細胞は正常の細胞より増殖速度が速いために、多量のブドウ糖を必要とします。検査薬の取り込み具合(放射性同位元素の放出具合)を見て判別する検査です。

【その他の検査】
●ホルモン検査
 下垂体腺腫の中には、ホルモンを過剰に分泌するホルモン産生型腺腫があります。プロラクチン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンの量を調べて、ホルモン産生型の下垂体腺腫かどうかを診断します。

●視野検査
 下垂体腺腫では、視機能障害が起こることがあります。一点を注視したときに周囲が見える範囲を、視野計を用いて左右別々に測定します。

●聴力検査
 聴神経腫瘍では、耳鳴りが起こることがあります。防音室に入ってヘッドホンをつけ、オージオメーターという機械から発する音を聞き、聞こえる音の大きさ(単位はデジベル=DB)、聞こえる音の高低(波長、単位はヘルツ=Hz)の範囲を調べます。左右の耳を別々に調べます。

【病理検査】
●生検
 必要に応じて、頭蓋骨に開けた小さな穴から、超音波内視鏡を用いて病変組織の一部や脳室の髄液を採取し、顕微鏡で観察して、良性か悪性か、悪性であればその性質や悪性度を詳しく調べます。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
林 基弘先生


東京女子医科大学医学部脳神経外科講師・ガンマナイフユニット治療責任者
同大先端生命医科学研究所 先端工学外科兼務
1991年群馬大学医学部卒業後、東京女子医科大学脳神経外科入局。99年より仏マルセイユ・ティモンヌ大学に留学。2001年帰局、ガンマナイフユニット治療責任者。07年より現職。さいたまなどのガンマナイフセンター・台湾秀傳紀念醫院ガンマナイフセンターで治療アドバイザーを務める。専門は機能性疾患と頭蓋底腫瘍に対するガンマナイフ治療。世界脳神経外科学会連盟(WFNS)・定位放射線治療部門副会長、日本脳神経外科学会認定専門医・評議員・国際教育委員、日本ガンマナイフ研究会会員(同事務局兼任)など。「たけしのみんなの家庭の医学」などテレビ出演多数。セカンドオピニオンクリニックCMA神楽坂開設中。

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