胆のうがん、胆管がんの基礎知識 危険因子は?|主な検査方法

胆石や胆のうポリープなど胆道系の病気のある人は要注意

画像診断技術の進歩により早期発見も可能に。超音波検査などを定期的に受けることが大切

胆のうがん、胆管がんの現状

 国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によれば、わが国で1年間に新たに胆のう・胆管がんと診断される人は、男性9,237人、女性9,399人となっています(2005年データ)。また、1年間に胆のう・胆管がんで亡くなる人は、男性8,598人、女性9,001人です。この数値は、すべてのがん死亡の約5%を占めています(2009年データ)。
 このように、胆のう・胆管がんは他のがんに比べて発生率の低いがんですが、国際的に見ると、日本人は他の東アジアの国の人やアメリカの日系移民、欧米人に比べて罹患率が高い傾向があります。

 また年齢別にみると、胆のう・胆管がんの罹患率および死亡率は、どちらも50歳代から増加し、高齢になるほど増加しています。罹患率の推移を年代を追って見ると、男女とも1975年から80年代後半まで増える傾向にありましたが、80年代後半から2000年にかけて男性は横ばい、女性は減少する傾向になっています。

胆のうがん、胆管がんの危険因子

 胆のうは肝臓のすぐ右下にある8×4cmほどの小さな袋で、肝臓と十二指腸の間をつなぐ胆管の途中に位置しています。胆のうの役割は、胆汁という脂質消化液の貯蔵庫です。肝臓で作られた胆汁は胆管を通って胆のうで濃縮され、脂質を含んだ食事が腸に入ってくると胆のうは収縮し、胆汁は十二指腸に向けて押し出されます。
 胆管は肝臓の中の肝内胆管と肝臓の外の肝外胆管に分かれます。肝内胆管は枝葉のように分かれており、肝外胆管には太い総胆管と、胆のうにつながる細い胆のう管があります。胆管のどの部分でもがんが発生しますが、肝内胆管で起こったがんは、肝臓がんの1つとして診断・治療が行われています。

【胆のう・胆管がんの特徴】
 胆のうがんは、初期では自覚症状がないため、早期発見の難しいがんです。胆のうにできたがんは肝臓に浸潤しやすく、食欲不振や体重減少などの症状が出たときにはすでに進行しており、肝切除などの大きな手術が必要となる場合もあります。
 胆のうにできるポリープは10ミリを超えるとがんの可能性が高くなるとされ、摘出手術の適応となります。胆のう摘出術などによる治療は、胆のう・胆管がんのリスクを低下させるという報告もあります。

 胆管がんは、はっきりした腫瘍のかたちを作らず、周りの組織に染みこむように広がる(浸潤性)タイプが多く、その姿を初期のうちに見つけ出すことは簡単ではありませんでした。しかし画像検査の進歩により最近では早期発見も可能になってきています。

【胆のう・胆管がんのリスク】
・胆石や胆のうポリープがある。
・原発性硬化性胆管炎、膵胆管合流異常症など胆道系の病気がある。
・潰瘍性大腸炎、クローン病がある。
など

 このほか、50歳以上、肥満である、高エネルギー・高脂質の食生活で野菜や果物をあまり食べない、出産回数が多いなどは、胆のう・胆管がんのリスク要因の候補であるとされています。特殊なところでは、ある種の農薬、有機溶剤が胆のう・胆管がんの発症に関係するのではないかと指摘されています。
 胆のう・胆管がんのリスクがある人は、定期的に検査を受けることをおすすめします。

胆のうがん、胆管がんの主な検査

 胆のう・胆管がんは、厚生労働省のガイドラインによる「がん検診」の対象にはなっていません。40歳を超えた人は、年に一度は腹部超音波検査を受け、胆石や胆のうポリープが見つかったときは専門医に相談しましょう。人間ドッグなどで腹部超音波検査による「肝・胆・膵検診」が行われています。
 最近は超音波(エコー)などの画像診断の技術が進歩したことで、胆のう・胆管がんをより早期に発見し、またその存在部位や広がりをかなり正確に診断できるようになりました。また、胆のうにがんがあると、胆石を併発している場合が多く見られますが、画像診断により症状が出ていない胆石や腫瘍の存在がわかるようになり、そこからがんの発見につながる例も増えてきています。

【画像検査】
 異常の起きている箇所を確定したり、臨床病期(がんの進行状態、広がり具合)などを総合的に判断します。

●腹部超音波検査(エコー検査)
 プローブという装置を直接腹部の体表に当て、超音波を体内の臓器に向けて発射し、反射してきた超音波を検出して映像化する検査です。
 さまざまな画像検査の中でも、超音波検査は苦痛が少なく何度でも行えるので、胆のう疾患のスクリーニングとして最適です。この検査により、胆のうの検診として、または胆石や胆のうポリープがある人の経過観察としても用いられ、胆のう・胆管がんの早期発見に役立っています。

●EUS検査
 超音波内視鏡検査ともいいます。先端に超音波装置(プローブ)が付いている内視鏡を口から胃や十二指腸に挿入し、胃壁や腸壁越しに超音波(エコー)を胆のうに当て、反射してきた超音波を検出して映像化する検査です。胆のう・総胆管のすぐ近くから超音波を当てることで、より精密な画像が得られます。胆のう・胆管がんの進達度診断に役立ちます。

●CT検査(造影CT検査)
 コンピューター断層撮影検査ともいいます。X線を体の外側から照射し、組織に吸収されたX線量をコンピューターで処理し、体内の断層像(輪切り像)を描き出す画像検査です。
 超音波検査で胆のうや胆管に何らかの異常が疑われるときや、患部がよく見えないときに行われ、胆のうの病変の大きさ、位置、がんの周辺臓器への転移・浸潤の有無などが確認されます。

●内視鏡的逆行性胆管造影(ERC)検査
 十二指腸まで内視鏡を挿入し、胆管の十二指腸への出口である十二指腸乳頭から造影チューブ(カテーテル)を入れて造影剤を注入し、胆管をX線撮影します。
 がんの疑いがあるときのほか、胆石症の診断や砕石治療などに使用されています。

●MRI検査
 磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。CT検査同様に周辺臓器への転移・浸潤の有無を把握します。

●MRCP検査
 磁気共鳴膵胆管造影検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。膵管と胆のう・胆管を映し出します。

●骨シンチグラム検査(アイソトープ検査)
 骨転移が疑われたときに行われる検査です。ごく微量のアイソトープ(放射性同位元素)を血液内に注入し、それが組織に集積する様子をガンマ線カメラで撮影します。骨折や炎症、がんの転移などで、骨の再生が活発に起きている箇所にアイソトープが集積します。その部分は黒く写り、一度に全身の骨のチェックが可能です。

●PET/CT検査
 がん細胞ではブドウ糖の代謝が活発になることを利用した検査で、がんの有無や他の臓器や骨、リンパ節などに転移があるかどうかなどの診断を行います。これに、CTの画像を同時に合わせることで、より精度の高い画像が得られます。再発や転移の発見に極めて有効な方法とされています。

【血液検査】
 胆のうがんの初期では血液検査で異常は出ません。がんが進行した場合に異常が出る場合がありますが、あくまで画像検査の補助的検査として使用されます。

●胆道系の酵素
 胆のうや胆管にできたがんが大きくなり、胆道を圧迫するようになると、胆汁のうっ滞や黄疸、胆管の炎症などが起こります。逆流した胆汁が血中に入ることによりBil(血清ビリルビン)、ALP(アルカリホスファターゼ)が異常高値となります。

●腫瘍マーカー
 腫瘍マーカーとは、体内にがんが存在すると血液中に大量に増える物質をいい、がんの存在やその後の治療経過、再発の有無を見るために使われます。
 胆のうがんでは、CEA(がん胎児性抗原)やCA19-9(糖鎖抗原19-9)が50~80%で高値になります。早期にはあまり高値にはならないこともありますが、高値のときは治療のモリタニングマーカーとして有用です。ただし、CA19-9は黄疸の影響を受けるのでBil値を見ながらの判断が大切です。

(編集・制作 (株)法研)

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【監修】
伊藤 鉄英先生


九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学 准教授
肝臓・膵臓・胆道内科副科長 膵臓研究室主任
1984年九州大学医学部卒業。96~99年米国国立衛生研究所(NIH)消化器部研究員。九州大学大学院医学研究院病態制御内科学講師、九州大学病院肝臓・膵臓・胆道内科副科長を経て、2010年同病院同科診療准教授。11年より現職。日本消化器病学会指導医、医学博士。日本膵臓学会評議員、日本消化器病学会評議員などを務める。厚生労働省 難治性膵疾患に関する調査研究班班員、同省癌研究助成金指定研究班(JCOG)肝胆膵グループ班員、慢性膵炎・急性膵炎・自己免疫性膵炎などの診療ガイドライン作成委員、消化管膵神経内分泌腫瘍疫学調査責任者などを務める。

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