腎がんの基礎知識 病気の特徴と危険因子|主な検査方法

画像診断による早期発見で、腎臓を残して完治も可能に

50歳代から高齢期に増えるがん。初期では症状もなく自覚しにくいため、早期発見には定期的なエコー検査を

腎がん(腎細胞がん)を中心とする腎臓がんの現状

 腎臓は、尿を作る細胞組織である「腎実質」と、尿が集まり尿管へとつながっている「腎盂(じんう)」から主に構成されています。腎実質にできるがんを腎がん(腎細胞がん)、腎盂にできるがんを腎盂がんといいます。

 国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によれば、わが国で1年間に新たに腎臓がん(腎がんおよび腎盂がん)と診断される人は、男性9,758人、女性4,884人となっています(2005年データ)。また、1年間に腎臓がんで亡くなる人は、男性4,586人、女性2,582人です(2009年データ)。

 腎臓にできるがんのうち大半を占めるのは腎がんで、腎がんによる死亡の割合は、腎臓のがん全体の約8割を占め、男性が女性の約3倍と高くなっています。以下は、腎がんを中心に説明します。
 年代別にみた腎がんの罹患率は50歳代から増加し始め、60~70歳代がもっとも多い年代です。腎がんの患者数は90年代から急増しています。これは、まず好発年齢である高齢期の人口が増えたことが影響していると考えられます。同時に、超音波検査などの画像診断が進歩し、人間ドッグなどで早期のがんが発見されやすくなったことも影響しています。

腎がんの特徴

 腎臓は腰より少し上の高さの背中側にあり、体の左右に1つずつある握りこぶしほどの大きさの臓器で、血液中の老廃物をろ過して尿を作り、体外に排出する働きをしています。同時に、血圧を調整するホルモンや赤血球を作るホルモンを分泌したり、ナトリウムなどの電解質の濃度を調整して、体内の細胞環境を整える機能などを持っています。

 腎臓は表面を被膜でおおわれ、さらにその周りを厚い脂肪で包まれています。このため、がんが被膜の内側(腎実質の内部)にとどまっている初期の段階では自覚症状がほとんどなく、早期に気づきにくいがんです。
 がんがかなり大きくなると、血尿や腹部のしこり、腰痛、腹部の静脈が目立つなどの症状が見られるようになります。がんが進行すると、発熱や貧血、食欲不振、倦怠(けんたい)感、体重減少など全身症状が見られることもあります。
 しかし、画像検査で早期発見が可能になったことで、症状のない小さながんの段階で見つかる患者さんが増えています。

 腎がんの進行は通常緩やかで、1年で1~2mm程度大きくなります。そこで腹部超音波検査(エコー)などの画像検査を定期的に受けることによって、腎がんを早期に見つけることができ、腎臓を残しながら手術を行い根治できる可能性も上がります。

【腎がんのリスク】
●確立した腎がんのリスク
・喫煙
・肥満
・高血圧
・人工透析(長期の透析患者では、後天性嚢胞性腎疾患に合併して腎がんが起こりやすい)

●リスク要因として候補に上がっているもの
・石油由来の有機溶媒
・アスベスト
・カドミウム

●腎がん発生のリスク要因とされる基礎疾患
・フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL病)
・バート・ホッグ・デューベ病(BHD病)
・結節性硬化症
・多発性嚢胞腎

 最近の研究で、VHL病の原因となるVHL遺伝子に異常のある家系で腎がんが多く起こることがわかってきました。

腎がんの主な検査

 人間ドックやほかの疾患を調べるためのエコー検査やCT検査などで無症状の初期の腎がんが偶然に見つかるケースが増えています。
 腎がんの場合、腫瘍に針を刺す針生検はがんを周囲に広げるリスクも危惧され、我が国ではあまり行われません。ほとんどの場合、腎がんの確定診断は、病巣の摘出後の病理検査で行われます。

【画像検査】
 がんあるいはがんが疑われる部位を確定したり、臨床病期(がんの広がりの程度)などを総合的に判断します。

●腹部超音波検査(エコー検査)
 プローブという器具を直接腹部の体表に当て、超音波を体内の臓器に向けて発射し、反射してきた超音波を検出して映像化する検査です。さまざまな画像検査の中でも、超音波検査は苦痛がなく何度でも行えるので、腎がんのスクリーニングとして最適です。人間ドックや腹部のほかの臓器の病気で超音波検査を受け、たまたま腎がんが発見されるというケースも珍しくありません。
 腫瘍の有無を調べるだけでなく、がんや腎嚢胞(腎臓に水のたまる袋ができるもの)や良性腫瘍などとの鑑別診断にまずエコー検査が行われます。

●CT検査
 コンピューター断層撮影検査ともいいます。X線を体の外側から照射し、組織に吸収されたX線量をコンピューターで処理し、体内の断層像(輪切り像あるいは縦断像)を描き出す画像検査です。
 発見された腫瘍が良性か悪性かもおおよそ診断することができます。また、がんの広がりや近隣臓器およびリンパ節への転移の有無についてもこの検査が有用であり、特に腎がんでは、静脈から造影剤を急速に注入し、短時間に多くの画像を撮影するダイナミックCTにより、診断がより確実になります。
 最も多い肺への転移については、胸部CT検査で調べます。

●MRI検査
 磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。CT検査同様にがんの広がりや近隣臓器およびリンパ節への転移の有無を把握します。
 腎がんと診断されたら、肝臓や大動脈周囲のリンパ節などへの転移の有無を調べるために行うことがあります。また、腎がんは血管の中に進展することもまれではなく、腎静脈や大静脈への進展の診断にはMRIが優れています。

●胸部X線検査
 一般の診療や健診などでもよく行われるレントゲン検査です。ただし肺転移の診断能は胸部CTより劣るため、腎がんと診断されたら、肺への転移の有無を明らかにするには、胸部X線検査だけではなくCT検査を行うことが必要です。

●骨シンチグラフィ(アイソトープ検査)
 ごく微量のアイソトープ(放射性同位元素)を静脈内に注入し、それが組織に集積する様子をX線撮影します。骨折や炎症、がんの転移などで、骨の再生が活発に起きているところにアイソトープが集積してその部分が黒く写るため、一度に全身の骨をチェックすることができます。
 腎がんであることがわかったら、骨への転移がないかをこの検査で調べることがあります。

【尿検査】
 健診(検診)での尿検査は蛋白尿、血尿、糖尿などをチェックしますが、腎がんの初期では顕微鏡的な血尿がみられることがある程度で、通常あまり異常は見られません。
 がんが進行し、腎臓内部の壁を破って腎杯や腎盂に浸潤すると、肉眼的な血尿が起こるようになります。

【血液検査】
 腎がんの治療方針(手術、薬剤治療)を決める上で、腎機能の評価は必須です。評価には、血液中の尿素窒素、クレアチニン、クレアチニンクリアランス、あるいは推算糸球体濾過量(eGFR)を求めます。最近は、肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病が増加しており、治療前から腎機能が低下している患者さんが少なくありません。
 腎がんでは貧血あるいは反対に赤血球増多症が見られることがあります。また、肝転移がないにもかかわらず、肝機能異常を示すことがあります。
 また、がんの成長速度が速い患者さんでは、赤沈亢進、CRP上昇、α2グロブリンの上昇などが見られることがあります。

(編集・制作 (株)法研)

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【監修】
木原 和徳先生


東京医科歯科大学大学院腎泌尿器外科学教授
1977年東京医科歯科大学医学部卒業。同大学医学部附属病院泌尿器科講師、米国ピッツバーグ大学医学部客員助教授を経て、99年東京医科歯科大学泌尿器科助教授、2000年同大学院泌尿器科学教授。11年より同大学医学部附属病院低侵襲医学研究センター長を併任。12年より同大学附属病院副院長。専門は泌尿器科、特に泌尿器がん、ミニマム創内視鏡下手術(ガスレス・シングルポート・ロボサージャン手術)、泌尿器がん部分治療。日本泌尿器科学会理事、11年より日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会理事長を務める。

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