膀胱がんの基礎知識 病気の特徴と進行の仕方|主な検査方法

気づきにくいがん。年に一度は健康診断などで尿検査を

主なリスクは喫煙と職業性発がん物質への曝露、慢性炎症などで、男性は女性の4倍。約8割は浸潤のないがん

膀胱がんの現状

 膀胱は、腎臓で作られた尿が腎盂(じんう)から尿管を通じて運ばれ、一時的にためておかれる臓器です。内側を移行上皮細胞という伸縮性のある粘膜でおおわれた袋で、尿がたまってこの袋が伸びると尿意を感じます。排尿すると、膀胱は尿を押し出しながらまた小さく縮みます。

 国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によれば、わが国で1年間に新たに膀胱がんと診断される人は、男性12,619人、女性3,858人と男性は女性の約4倍多くなっています(2005年データ)。また、1年間に膀胱がんで亡くなる人は、男性4,478人、女性2,147人です(2009年データ)。
 膀胱がんは高齢者に多いがんで、男女とも罹患率は60歳代から増加します。腎盂、尿管、膀胱の3つの部位にできるがんを尿路がんと総称しますが、この中では膀胱がんが死亡数、罹患数とももっとも多く、膀胱がんによる死亡数が7割以上(罹患数は約5割)を占めています。

膀胱がんの特徴

【膀胱がんのタイプ】
 膀胱の内壁は、内側から「粘膜」「粘膜下層」「筋層」「漿膜(しょうまく)」の4つの層によってできています。膀胱がんは、進行によって内壁の粘膜層(上皮細胞)から筋層へと入り込んでいきます。ほとんどは粘膜・粘膜下層にとどまり初期の状態である「表在性膀胱がん」です。

●表在性膀胱がん
 がんが上皮細胞である粘膜・粘膜下層にとどまり、筋層には広がっていない初期のがんで、「乳頭状」といってカリフラワーのような盛り上がりが膀胱内腔に向かって見られます。膀胱がんの8割はこの状態で発見されます。表在性膀胱がんは浸潤や転移を起こすことはあまりありません。主な症状は、排尿痛や下腹部痛などの自覚症状を伴わない肉眼的血尿が多いとされています。

●浸潤性膀胱がん
 筋層まで広がっている膀胱がんで排尿障害や膀胱刺激症状(頻尿、排尿時痛など)を生じることがあります。膀胱の外側へ広がりやすく転移しやすい傾向があります。

●上皮内がん
 粘膜層である上皮細胞にとどまりますが、乳頭状の盛り上がりがなく、粘膜に沿ってがん細胞がばらまかれた状態に広がります。膀胱がんの中では悪性度が高いとされ、くり返す膀胱炎や頻尿、血尿などの症状が見られます。

 どの膀胱がんでも、もっともよく見られる症状は肉眼でわかる血尿です。血尿時に痛みはなく、一度出た後、しばらくたってからまた現れる場合もあります。肉眼でわかる血尿を認めたら、いったん治まったからと安心せず、泌尿器科を受診することをおすすめします。
 また、膀胱がんが見つかった場合、上部尿路にあたる腎盂や尿管にもがんが発見されることがあります。

【膀胱がんのリスク要因】
 膀胱がん発生のリスク要因として、喫煙、職業性発がん物質への曝露(ばくろ)、膀胱内の慢性炎症や、特定の抗がん薬や放射線治療に伴う二次発がんなどの医学的要因があげられています。
 もっとも重要なリスク要因は喫煙です。喫煙者は、非喫煙者に比較して2~4倍、膀胱がんの発生リスクが高まるとされ、男性の膀胱がんの50%以上、女性では約30%が、喫煙によるものであるという試算があります。しかしながら、喫煙がどのように膀胱がんの発生にかかわっているのか、その詳細はいまだ明らかではありません。

 そのほかのリスク要因としては以下のことが挙げられます。
・ナフチルアミン、ベンジジン、アミノビフェニルなどの化学物質への職業性曝露
・発展途上国におけるビルハルツ住血吸虫症の感染
・骨盤部の放射線治療歴

 リスク要因の候補としては以下のことが挙げられていますが、疫学研究によるはっきりした結果は出ていません。
・フェナセチン含有鎮痛剤
・シクロフォスファミド(抗がん剤)
・コーヒー
・塩素消毒した飲料水

膀胱がんの主な検査

 肉眼的血尿があった場合、膀胱がんを疑い、尿細胞診検査、腹部超音波検査(エコー)、膀胱鏡検査などを行います。
 異常の起きている箇所を確定したり、臨床病期(がんの進行状態、広がり具合)などを総合的に判断するためには、排泄性腎盂造影、膀胱粘膜生検、CT、MRIなどの検査を行います。乳頭状の腫瘍で茎を伴い尿細胞診が陰性の表在性膀胱がんは悪性度が低く、筋肉に浸潤するような膀胱がんは極めて少ないので、これらの検査を省略することがほとんどです。
 浸潤性膀胱がんと診断された場合、ほかの臓器への転移を調べるため、胸部X線、CT、 MRI、骨シンチグラフィなどの検査を行います。

●尿検査
 一般の健診などでもよく行われ、尿の成分の内容・量を調べることで病気のサインを見つけます。尿中に赤血球や白血球が見つかり、膀胱がんが疑われることがあります。
 50歳以下で、特別な膀胱がんの発生リスクもない顕微鏡的血尿あるいは尿潜血陽性の場合、腹部超音波画像診断、尿細胞診で異常を認めなければ、経過観察(検尿と尿細胞診をくり返す)することがほとんどです。

●膀胱鏡検査
 尿道から内視鏡(先端にライトとカメラのついた柔らかく細い管)を入れて膀胱まで挿入し、膀胱の内壁をカメラで観察します。この検査により、がんがあるかどうか、その箇所、大きさ、形状などを見ることができます。通常は外来で、局所麻酔をして検査します。

●尿細胞診検査
 尿の中に脱落した細胞を顕微鏡で観察し、がん細胞や炎症性疾患がないかを調べます。ただし、がんの悪性度の低いタイプの腫瘍では、がん細胞があるか判断できない場合もあります。排泄された尿を使って検査をするので、患者さんの負担はほとんどなく、何度でも検査が可能です。

●膀胱粘膜生検
 膀胱がんの確定診断のために行います。下半身麻酔をかけて尿道から内視鏡を挿入し、病変部の組織を電気メスで採取します。採取した組織を顕微鏡で観察して、がん細胞があるかないか、がん細胞のタイプ(顔つき)、悪性度などを判定します。

【画像検査】
●腹部超音波検査(エコー検査)
 プローブという装置を直接腹部の体表に当て、超音波を体内の臓器に向けて発射し、反射してきた超音波を検出して映像化する検査です。血尿や潜血反応が出たときは、膀胱や腎臓に異常がないか調べます。膀胱がんでは、膀胱に隆起しているタイプのものは診断できることがあります。

●排泄性腎盂造影(IVP)
 膀胱がんが見つかったとき、膀胱やその上部の尿路(腎盂、尿管)の状態を確認するために行われます。静脈に造影剤を注入し、それが腎臓から腎盂・尿管を通って膀胱に排泄される状態をX線(レントゲン)撮影することにより、がんの有無や大きさ、数、箇所、尿路に異常がないかどうかなどを描き出します。表在性膀胱がんの場合は、この検査の替わりに超音波画像検査により診断することが多くなっています。

●コンピューター断層撮影(CT)
 X線を体の外側から照射し、組織に吸収されたX線量をコンピューターで処理し、体内の断層像(輪切り像)を描き出す画像検査です。膀胱がんが見つかったとき、病変部の広がりや周辺臓器への転移などを調べるためにこの検査が行われます。

●胸部X線撮影
 一般の診療や健診などでもよく行われるレントゲン検査です。浸潤性膀胱がんと診断されたら、肺への転移の有無を調べるために、CTやMRI検査などと合わせてこの検査を行います。

●MRI検査
 磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。CT検査同様に周辺臓器への転移・浸潤の有無を把握します。浸潤性膀胱がんと診断されたら、がんがどの深さまで浸潤しているか(深達度診断)、あるいは骨盤の中のリンパ節転移の有無を調べるために行います。

●骨シンチグラフィ(アイソトープ検査)
 ごく微量のアイソトープ(放射性同位元素)を静脈内に注入し、それが組織に集積する様子をX線撮影します。この検査は、がんの骨への転移がないかを調べるものです。骨折や炎症、がんの転移などで、骨の再生が活発に起きているところにアイソトープが集積してその部分が黒く写るため、一度に全身の骨をチェックすることができます。
 浸潤性膀胱がんの全例に骨シンチグラフィを行うかは異論のあるところで、腰痛や骨の痛みなどの症状がある場合を中心に行われています。

(編集・制作 (株)法研)

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【監修】
橘 政昭先生


東京医科大学泌尿器科学教室主任教授
1976年慶應義塾大学医学部卒。同大学医学部にて研修ののち、80年泌尿器科学助手、83年米国ニューヨーク医科大学泌尿器科研究員などを経て、86年慶應義塾大学病院診療科医長、88年同大学医学部専任講師、99年同大学医学部助教授に就任(いずれも泌尿器科)。2000年東京医科大学主任教授(泌尿器科)に就任し、現在に至る。日本泌尿器科学会(評議員・指導医・幹事)、日本ヒト細胞学会(理事・評議員・編集委員)、日本透析医学会(認定医)、日本腎臓学会(認定医)、日本癌治療学会(代議員)、日本癌学会、日本ロボット外科学会(理事)、国際泌尿器科学会、アジア泌尿器科学会などに所属。

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