胃腸をストレスから守る-スローテンポの音楽が自律神経を整える

音楽を聴くと胃腸の具合がよくなるのはなぜ?

心身をリラックスさせると、胃腸など内臓のはたらきが活性化する

胃腸はストレスの影響を受けやすい

 「胃が痛くなる」とか「断腸の思い」といった言葉もあるように、昔から、ストレスは胃腸の調子を左右すると考えられてきました。それを裏づけるように、テスト前に胃がキリキリ痛んだり、仕事の納期が近づくとおなかの調子が悪くなったり食欲が低下するといったことは、多くの人が経験するところです。

 では、どうして胃腸はストレスの影響を受けやすいのでしょうか。
 その答えをひと言で言うと、胃腸は自律神経によってコントロールされているからです。自律神経には体を活動モードにする交感神経と、反対にリラックスモードにする副交感神経があり、この2つの神経のバランスが適度に保たれていることで、体は正常に機能します。

 ところが、大きなストレスがかかったり、ストレスを感じるような状態が長く続くと、このバランスは崩れ、交感神経のほうが優位になります。すると、主に副交感神経にコントロールされている胃腸のはたらきは低下して、胃の痛み、下痢や便秘、食欲低下といった症状が起こりやすくなります。つまり、自律神経にコントロールされている胃腸は、ストレスの影響を受けやすい臓器だといえるのです。

音楽で自律神経をコントロールする

 胃腸のさまざまな症状の原因が、交感神経と副交感神経のバランスの崩れにあるとしたら、正常なバランスを取り戻すことが症状の改善につながります。心理的ストレスを緩和して交感神経の緊張を解き、副交感神経のはたらきを優位にするのです。そうすることによって、食欲を増進させたり、おなかの調子を整えて、胃腸を中心とした内臓のはたらきを活性化させることができます。

 心理的ストレスを緩和して副交感神経優位の状態にするリラックス法として、いま、音楽療法が注目されています。胃腸の不快な症状の原因に何か病気がある場合には、薬物療法や食事療法が必要ですが、補助的療法として音楽をとり入れると、心身をリラックスさせておなかの調子を整えることができるのです。

 音楽が心身をリラックスさせることは、医療の現場で、すでに実証されています。例えば、歯の治療中、あるいは手術のとき、音楽が流れていることに気づいた方もあるでしょう。どれも心身をリラックスさせることによって痛みを軽くしたり、手術の際の麻酔効果を増強するといった、音楽の持つ効果を生かしたものです。最近では、手術中に好みの音楽を流してくれる病院も増えてきています。

親しみやすく美しいメロディが心身をリラックスさせる

 音楽には人それぞれ好みがあります。ロック調の激しいテンポの曲が好きな人もいれば、静かな音楽が好きという人もいるでしょう。

 数ある音楽の中で、胃腸によいのはスローテンポの曲です。というのも、激しい音楽を聴いて心拍数が増えると交感神経の緊張が高まり、胃腸のはたらきを低下させてしまうからです。副交感神経を優位にして胃腸のはたらきを促すには、スローテンポの音楽で心身をリラックスさせる必要があります。
 よく、デパートやホテルのトイレに入ると、スローテンポの音楽が流れていて、ゆったりとした気持ちで排便がスムーズになることがあります。これも、スローテンポの音楽が心身をリラックスさせ、胃腸をスッキリさせるのに一役買っていることの証拠です。

 スローテンポの音楽の中でもおすすめなのは、ビートルズの曲です。もちろん、すべての曲ではありませんが、ビートルズの曲には次のような特徴があり、心拍数を下げて心身をリラックスさせる効果が大きいのです。
(1)メロディが親しみやすく美しい
(2)アコースティック楽器中心のシンプルなサウンドで、不協和音が少ない
(3)歌詞が英語なので意味を考えなくてすむ(言葉の意味を考えてしまうとリラックスできない)
(4)ハーモニーが美しい

 さらに、誰もがどこかで耳にしている、耳になじんだ曲であることなども、心身をリラックス・モードに導いてくれます。
 とくに「イエスタデイ」、「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」、「ミッシェル」、「イン・マイ・ライフ」、「レット・イット・ビー」などの曲は、心身ともにリラックスさせてくれること請け合いです。

 逆に「ヘルプ」、「シー・ラヴズ・ユー」、「ア・ハード・デイズ・ナイト」など、ビートのきいたアップ・テンポの曲は、交感神経の活動を高めることで、過敏性腸症候群など、活発になりすぎた胃腸の働きを抑えてくれます。
 あなたもビートルズの曲を聴いて、胃腸をスッキリさせてみませんか。

(「ビートルズでおなかスッキリ」法研より)

【監修】
松生 恒夫 先生


松生クリニック院長
1980年東京慈恵会医科大学卒業後、同大第三病院内科助手、松島病院大腸肛門病センター診療部長などを経て、2003年より現職。医学博士。日本内科学会認定医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本消化器病学会認定専門医、日本東洋医学会専門医、日本大腸肛門病学会専門医。専門領域は、大腸内視鏡検査(現在までに2万件以上施行)、生活習慣病としての大腸疾患、地中海式食生活(地中海式ダイエット)、漢方療法、ストレス対策としてのポップ・ミュージック。著書に『腸内リセット健康法』(講談社)など多数。

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