自覚症状がないまま進行する糖尿病‐予防のための4つのポイント

食事や運動不足、あなたの生活習慣は大丈夫?

糖尿病のこわさは合併症。健診で血糖値が高かった人は生活習慣を見直そう

日本人は糖尿病になりやすい?

 11月14日は国連の「世界糖尿病デー」。世界中で糖尿病患者が増加し、10秒に1人が糖尿病の合併症で亡くなるといわれるほど問題は深刻化しています。糖尿病の啓発活動の推進を呼びかけるこの日、世界各地でさまざまなイベントが開催されます。
 厚生労働省「平成14年糖尿病患者実態調査」によると、日本人の糖尿病患者は約740万人、予備群も含めると1,620万人以上と推測され、その後も増え続けています。「平成18年国民健康・栄養調査速報」では40歳以上の3人に1人が糖尿病または糖尿病予備群であるというショッキングなデータが発表されました。

 糖尿病は、血糖値(血液中のブドウ糖の量)が異常に高い状態が続く病気です。食事からとった糖質(ご飯、パン、果物など)は、消化されてブドウ糖となり、血液に混ざって全身に運ばれ、脳や筋肉などを動かすエネルギー源となります。
 このブドウ糖(血糖)を細胞内に取り入れてエネルギー源として利用したり、余ったブドウ糖を肝臓や筋肉に一時的に貯蔵したりするのに必要なのが、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンです。このインスリンの分泌量が少なかったり、うまく働かなかったりすると、血液中のブドウ糖が有効に使われず、常に血糖値が高くなる高血糖の状態になり、全身の血管が障害を受けてさまざまな症状を起こします。

 糖尿病には、インスリンがほとんど分泌されない「1型」と、インスリンの分泌量が低下するか、分泌量は十分でも作用が低下する「2型」があります。1型は子どものころ発症することが多く、「2型」は遺伝的素因に食べすぎや運動不足、ストレスなどが誘因となって発症、以前は中年以降に多かったのですが、最近は子どもにもみられるようになっています。日本人の糖尿病の95%が2型です。

 「遺伝的素因」がある人が糖尿病になりやすいというと、「私には関係ない」と思うかもしれませんが、一般に日本人は欧米人に比べるとインスリンを分泌する能力が低く、栄養をとりすぎると糖尿病になりやすい体質をもっています。おいしくてカロリーが高い食べものがあふれている現代、糖尿病になるリスクは誰にとっても他人事ではありません。

症状がなくても安心はできない

 糖尿病の症状として「のどのかわき、尿量の増加、強い疲労感、体重の低下」などが知られていますが、こうした兆候がなくても安心はできません。これらの症状は、病気がかなり進行しないと現われないからです。
 健診で血糖値が高めだとわかったなら、放置しないことが大切です。糖尿病のこわさは自覚症状がないままに悪化して、全身の血管や神経が障害を受け、次のような「3大合併症」といわれる病気をはじめとする深刻な合併症を引き起こすことです。

●糖尿病神経障害(末梢神経の異常)
 体の末端の神経から障害を受け、手足の先の冷たい感じ、しびれや痛みなどの症状が出る。神経の損傷が進むと感覚がなくなり、足の小さな傷などに気づかず放置したことが原因で足を切断しなければならない人もいる。

●糖尿病腎症(腎機能の低下)
 腎臓は血液中の老廃物を尿として体の外へ排泄する役割をしている。腎臓の細い血管(細小血管)が損傷されると、体に有害なものが体内に残り、逆に必要なたんぱく質が尿中に捨てられてしまう。重症になると尿毒症を起こし、人工透析が必要になる。

●糖尿病網膜症(視力の低下や失明)
 目の網膜の細小血管が詰まったり、出血したりして視力が低下する。重症化すれば失明のリスクが高まり、成人になってからの失明原因の第1位となっている。白内障や緑内障にもなりやすい。

 高血糖が続くと、細小血管だけでなく、太い動脈も傷んで動脈硬化を起こしやすくなります。糖尿病の検査では、異常がない「正常型」と、糖尿病の疑いが強い「糖尿病型」との間にグレーゾーンの「境界型」がありますが、境界型のレベルであっても、動脈硬化が進んで心臓病や脳梗塞のリスクが高くなることがわかってきました。境界型、つまり予備群のうちから、血糖値のコントロールが必要なのです。

今から予備群にならない生活習慣を

 生活習慣によって発症する「2型糖尿病」の治療の基本は、食事療法と運動療法で血糖値をコントロールすることです。こうした食事や運動への配慮は、高血糖でない人にとっても、健康で長生きするための生活習慣となります。長い人生を元気で楽しくすごすために、次のようなことに気をつけましょう。

●食べ過ぎない
 食べ過ぎると血糖値が上がるため、1日に必要なエネルギー量を知っておくことが大切。1日の必要エネルギーは、デスクワーク中心の人なら「適正体重*×25~30kcal**」が目安。「食品交換表」などを参考に、一度おおよその感覚をつかんでおくとよい。お菓子やジュースもエネルギー量に含めて考える。

*適正体重は「身長(m)×身長(m)×22」で求める。
**立ち仕事が多い人は30~35kcal、肉体労働をする人は35~40kcal

●食事のバランスに注意
 一汁三菜の献立をこころがけ、主食(穀類)、主菜(肉・魚・豆など)、副菜(野菜・海藻、きのこなど)を毎食食べるようにしたい。主食とおかずの割合をだいたい1対1に、おかずの3分の2は野菜中心の副菜と考えて。食物繊維はエネルギー量が少なく血糖値の急上昇を抑えてくれるので積極的にとろう。精製していない穀物や野菜、いも、豆などに豊富。主食を白米から玄米に替えるのもおすすめ。

●1日3食を規則正しく食べよう
 まとめ食いは食後の血糖値を急上昇させ、食事と食事の間隔が短いと血糖値が高い状態が続くなど、血糖値の変化が乱れるため、1日3食をできれば一定の時間にとりたい。3食それぞれのエネルギー量も同じくらいになるようバランスがとれれば理想的。

●有酸素運動を週に3回以上
 運動をした後は血糖値が下がり、運動を習慣にすると肥満が解消して、インスリンの働きもよくなる。1日20分くらいの運動を週に3回以上すると効果的。ウオーキングや水泳、サイクリングなど、酸素をとりこみながら全身の筋肉を使う有酸素運動を無理なく続けることをめざそう。運動の程度は「ややきつい」と感じる程度を保つ。

(「徹底図解 新版・糖尿病 これで安心、最新治療と生活の知恵」相磯嘉孝監修、法研より)

【監修】
相磯嘉孝先生


糖尿病専門クリニック あいそ内科 院長
京都府立医科大学卒業後、1967年より東京都立豊島病院内科勤務。1982年千葉大学医学部にて学位取得後、1974年同病院内科医長(内分泌、代謝担当)、1993年糖尿病専門クリニック「あいそ内科」開設、現在に至る。日本糖尿病学会認定医。日本糖尿病学会学術評議員、日本糖尿病学会研修指導医、東京都糖尿病協会学会側理事を勤める。著書に『糖尿病に克つ生活読本』(主婦と生活社)、『糖尿病を治すらくらくレシピ(監修)』(法研)など多数。

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