糖尿病は万病のもと!合併症による命の危険も

三大合併症だけでなく、心臓病、脳卒中の原因にも

今や国民病、自覚症状がなく進行し、全身の血管が傷ついてさまざまな合併症が命取りになりかねない

血糖値が高い状態が続くのが糖尿病

 世界中で糖尿病の患者が増加し、深刻な問題として捉えられています。一説には10秒間に1人が糖尿病の合併症で亡くなるといわれており、日本でも、患者と予備群を合わせると1,870万人と推測され(平成18年「国民健康・栄養調査」)、国民病といってもいいくらいの状況です。こうした実状を広く知ってもらい、予防のための啓発活動を進めようと、国連は11月14日を「世界糖尿病デー」に定め、世界各地ではいろいろなイベントが開かれることになっています。

 毎日の食事でとったご飯やパン、めん類などの糖質は消化されてブドウ糖に変わり、血液とともに全身に運ばれて体を動かすエネルギー源になります。これをコントロールするのはすい臓から分泌されるインスリンというホルモンです。しかし、インスリンの働きが不十分だと、エネルギー源として利用できなかったブドウ糖が血液中にダブついてしまいます。こうして血液中にブドウ糖の量(血糖値)が異常に多くなり、その状態が長く続くのが糖尿病です。

 それでは、どれくらいブドウ糖が多いと糖尿病とされるのかというと、日本糖尿病学会の診断基準では、12時間ほど絶食した後に採血して測る「空腹時血糖値」が、血液1デシリットル中に126ミリグラム(126mg/dl)以上が2回の検査で認められれば糖尿病と診断しています。また、110mg/dl以上126mg/dl未満は糖尿病になる可能性が高い「境界域」(いわゆる予備群)とされてきましたが、最近新たに100~109mg/dlは正常域であっても糖尿病に移行する危険度が高いため、「正常高値」とすることが定められました。

高血糖状態が続くと多くの病気の危険性が高まる

 血糖値が高いだけでは、初めのうちは何の自覚症状もありません。ここが糖尿病の恐ろしいところなのですが、自覚症状がないために高血糖の状態を放っておくと、知らないうちに全身の血管や神経が侵され、やがて全身にさまざまな合併症を引きおこします。これらのうち、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症を糖尿病の3大合併症と呼んでいます。

 糖尿病性神経障害は体の末端の神経から侵されます。手足の先の冷たい感じやしびれ、痛みなどから始まり、症状が進むと感覚そのものがなくなってしまいます。けがややけどに気がつくのが遅れるうえ傷が治りにくく、最悪の場合は細胞が死んでしまう壊死(えし)をおこし、足を切断せざるを得なくなることも少なくありません。

 糖尿病性網膜症は、目の奥にある網膜の細い血管に詰まりや出血などの異常がおき、重症化すると網膜はく離などから失明する危険度が高まります。

 糖尿病性腎症は、腎臓の細い血管に異常がおきて、体中から運ばれてきた老廃物の処理ができなくなります。腎臓は、血液を濾過する働きをしていますが、その網の目が粗くなり、体内のタンパク質が尿中に漏れ出てしまいます。進行すると最終的には尿毒症となって命が危険にさらされるため、人工透析で腎臓の替わりに血液中の老廃物処理を一生涯、定期的に続けなくてはなりません。

 これら3大合併症は、どれも細い血管が高血糖状態によって障害を受けるためにおこります。しかし、高血糖状態で傷つくのは細い血管だけではありません。脳や心臓、手や足に酸素や栄養を運んでいる太い動脈も傷つき、動脈硬化をおこします。

 これに加えて、血糖値が高いと中性脂肪値が高くなりやすく、中性脂肪値が高いと血管内の余分なコレステロールを回収するHDLコレステロール値が低くなりやすいという相関関係から、動脈硬化はますます進んでしまいます。この行き着く先は、脳梗塞や心筋梗塞という命を直接脅かす重大な病気であることはもうおわかりでしょう。

糖尿病になってからでは後戻りできない

 糖尿病の一つの特徴は、血糖値が高くなっても自覚症状がほとんどないため、それまでの生活習慣を改善するなどの対策が後手に回りがちなこと。明らかに糖尿病を発症していても本人にまったく自覚がない場合が多く、健康診断で高血糖を指摘され、医療機関で詳しく検査を受けた結果、糖尿病と診断されるケースが多いのです。

 そしてもう一つの特徴は、いったん発病すると元の健康な状態には戻らないということ。発病がわかった時点でできるのは、今以上に状態や症状を悪化させないように血糖をコントロールしていくことなのです。ですから、健康診断やその後の精密検査で高血糖や糖尿病が指摘されたら、すぐにも治療を開始し、医師の指示を守って生活習慣を見直すことに着手しなければなりません。

【監修】
岩岡 秀明先生


船橋市立医療センター内科外来部長
1981年千葉大学医学部卒業後、同大学第2内科に入局し、内科各科を研修。その後、国立佐倉病院内科、成田赤十字病院内科、国家公務員共済組合三宿病院内科などを経て、2002年船橋市立医療センター内科副部長。2006年同センター内科外来部長に就任、現在に至る。専門は、糖尿病・内分泌疾患の臨床。日本内科学会認定内科医・認定総合内科専門医・指導医、日本糖尿病学会認定専門医・研修指導医、日本内分泌学会認定専門医。

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