見逃されやすい「仮面高血圧」脳卒中や心筋梗塞のリスクも

病院で測ると正常なのに、家庭や仕事中の血圧が高い人も多い

発見が難しく治療が遅れがち。正常血圧とされる人の1割以上にみられ、リスクの高い人がいる

診察室では正常なので医師も見逃しやすい

 病院や診療所などで血圧を測ると正常なのに、家庭や職場などふだんの生活のなかで測ると高い値を示す人がいます。このようなケースも実際は高血圧と呼ぶべきなのに、医療機関での測定ではまるで正常血圧という“仮面”をかぶっているようにみえることから、「仮面高血圧」と呼ばれます。

 医師が測定するときは正常値を示すために見逃されがちで、治療が行われないままに動脈硬化や心臓肥大が進行。やがては脳卒中や心筋梗塞をおこす危険が高まるので、健診などで正常血圧であっても必ずしも安心はできません。

 日本高血圧学会では、治療の指針となる「高血圧治療ガイドライン」を策定しています。その最新版(2009年版)では、次のようなケースを仮面高血圧としています。

(1)診察室で何回か測った血圧の平均値が、最高血圧140mmHg/最低血圧90mmHg未満であって、さらに、
(2)家庭で測った値や携帯型血圧計で自由に行動しているときに測った値の平均が135mmHg/85mmHg以上の場合か、または、
(3)24時間測定した平均血圧が130mmHg/80mmHg以上の場合

 つまり、(1)をベースに(2)または(3)も当てはまる場合が仮面高血圧です。

目ざめるころに急激に上昇する早朝高血圧

 仮面高血圧にはいくつかのタイプがあります。一般的に血圧は、日中の活動しているときは上昇し、睡眠中は下がります。そして、眠りから目ざめるころにかけてまた上昇するのですが、この上がり方が急激なのが「早朝高血圧」と呼ばれるタイプです。

 血圧の変動には自律神経がかかわっています。昼間は心臓の働きを活発にする交感神経が優位で、夜間から朝にかけては心臓の働きを抑える副交感神経が優位になります。眠りから目ざめるときは、再び交感神経が優位になって体は休息モードから活動モードに切り替わり、血管は収縮して誰でも血圧が上がるものです。

 この上昇ぶりが急激であるほど、血管が傷ついたり血液のかたまりである血栓ができやすくなります。このため朝は脳卒中や心筋梗塞などがおこりやすい危険な時間帯とされ、その危険度は診察室で高血圧とされた場合より早朝高血圧のほうが高いといわれています。

夜間高血圧や職場高血圧も仮面高血圧

 また、夜間の睡眠中にも血圧が下がらずに朝も高いままの状態が続く場合や、夜間になって血圧が上昇するタイプを「夜間高血圧」といいます。高血圧が続いている時間が長いぶん、血圧が血管や心臓に与える負担も大きくなり、脳卒中や心筋梗塞で夜間に突然死する危険性が高まります。

 さらに、早朝や夜間、休日などでの血圧は正常なのに、職場で仕事をしているときや、家庭で家事や育児、介護などをしているときに血圧が上がるタイプを「職場高血圧」と呼びます。職場や家庭でストレスにさらされて血圧が上昇するもので、肥満していたり家族に高血圧の人がいる場合に多いという特徴があります。

リスクがある人は血圧の自己管理を

 これら仮面高血圧は、診察室での血圧が正常とされる人の10~15%、治療が良好で正常値内におさまっていると思われている高血圧患者の約30%にみられ、脳卒中や心筋梗塞をおこす危険は診察室で測った場合の高血圧患者と変わらないとされています。
 仮面高血圧になるリスクが高いのは以下のような人たちです。

●仮面高血圧になるリスクの高い人
・高血圧で薬による治療中の人
・正常高値血圧(130~139/85~89mmHg)の人
・喫煙者、アルコール多飲者
・職場や家庭で精神的ストレスが多い人
・身体活動度が高い人
・肥満がある人
・メタボリックシンドロームと診断されている人
・糖尿病の人
・心拍数が多い人
・起立性高血圧、起立性低血圧がある人
・臓器障害(特に左心室肥大、頸動脈内膜壁肥厚)のある人
・動脈硬化が原因の心臓や血管の病気のある人

 これらに当てはまる場合は診察室での測定が正常血圧であったとしても油断せず、家庭用血圧計で毎朝、できれば就寝前にも、決まった時間に血圧を記録し、自分の血圧の変動を知っておくことが大切です。
 同時に、食塩摂取量を減らす食生活、ウオーキングやジョギング、水泳など適度な有酸素系の運動習慣、禁煙、節酒などを心がけて血圧の自己管理にも努めてください。

(参考:『健診で血圧が心配ですよと言われた人の本』苅尾 七臣著、法研)

【監修】
苅尾 七臣先生


自治医科大学内科学講座循環器内科学部門教授
1987年自治医科大学卒業。米国国立衛生院(NIH)プログラムプロジェクト共同研究員、米国マウントサイナイ医科大学循環器センター客員助教授、自治医科大学内科学講座循環器内科学部門講師などを経て、2005年より現職。米国コロンビア大学内科客員教授(兼任)。主な専門・研究分野は循環器内科学、高血圧、血栓症。著書に『やさしい早朝高血圧の自己管理』(医薬ジャーナル社)など。

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