禁煙を無理なく確実に成功させるには-補助薬を上手く利用して

3種類の禁煙補助薬から自分に合ったものを活用するのが近道

ニコチンガムやニコチンパッチに、「飲む」タイプの経口禁煙補助薬が加わり、効果を上げている

経口禁煙補助薬の登場で禁煙方法の選択肢が増えた

 「タバコが健康に悪いことは十分わかっているけれどもやめられない」と、これまで何度も禁煙に失敗してきたという人たちの間で、禁煙補助薬を利用したり、医療機関の禁煙外来に通って禁煙治療を受ける方法が効果を上げています。

 ニコチンガムやニコチンパッチといった禁煙補助薬は、薬局・薬店で入手して利用することができます。さらに2008年5月から、日本でも「飲む」タイプの経口禁煙補助薬がニコチン依存症の人に対して使えるようになりました。バレニクリンを主成分とするこの薬(商品名「チャンピックス」)は医師の処方によって服用するもので、薬局・薬店では入手できません。

 この薬の登場によって禁煙方法の選択肢が増えたことになります。ガムのかみ方が難しい、肌が弱くてパッチが貼れない、という人は飲み薬に、逆に薬を飲むことに抵抗がある人は、従来のガムやパッチを使えばよいわけです。

バレニクリンがタバコによる快感も、イライラ感も抑える

 そもそも禁煙したいと思っても、なかなか成功しないのは「ニコチン依存症」があるからです。タバコを吸うと、その主成分であるニコチンが短時間で脳に達し、脳内報酬回路とも呼ばれる神経系にあるニコチンの受け皿「ニコチン受容体」に結合し、ドパミンという物質を放出させます。このドパミンが脳にとっての快楽物質であるため、なかなか喫煙習慣をやめられない。これが「ニコチン依存症」です。このため、意志の力だけに頼った禁煙は非常に困難を伴うといわれています。

 ニコチンガムやニコチンパッチには、いずれもニコチンが含まれています。これらの補助薬は少量のニコチンを体内に補充することで、ニコチン切れによるイライラ感などの離脱症状を緩和しながら、禁煙を助けることを目的としています。

 一方、バレニクリンはニコチンを含みませんが、その構造がニコチンに似ているため、ニコチンと同じようにニコチン受容体に結合してドパミンを放出させます。ただし、ニコチンが結合したときよりもドパミンの放出量は減少します。
 もし、バレニクリン使用中にタバコを吸ってもニコチンは結合する受け皿がないため、快楽物質ドパミンもあまり出ないということになります。しかし、バレニクリンによって放出される少量のドパミンによって、禁煙に伴う離脱症状は緩和することができます。

 こうして、バレニクリンを12週間内服することによって、タバコを吸ってもそれほど快感を得られないことを次第に体が覚えていき、禁煙に導くというのがバレニクリンの効果のメカニズムです。

禁煙指導を欠かさず受け、受診から4週間以内に禁煙開始へ

 日本人喫煙者におけるバレニクリンの有効性・安全性を検討するために行われた臨床試験では、1日2回、12週間のバレニクリン服用によって、持続禁煙率(禁煙開始後9~12週の間に1本も吸わなかった人の割合)はプラセボ(偽薬)の40%に対して65%と明らかに高い結果となりました。
 副作用としては、4人に1人(24%)に嘔気(吐き気)がみられ、それを抑える薬との併用なども重要であることが分かりました。

 このバレニクリンを使って、北里大学北里研究所病院で2008年6月から9カ月間、72人を対象に禁煙指導を行った結果は、禁煙成功率63%。先の臨床試験とほぼ同じ内容になりました。この禁煙成功者の共通点を探ると、次のようなポイントが浮かび上がりました。

 (1)病院での禁煙指導を欠かさず受診する(失敗者は受診回数が少ない)
 (2)受診を始めてから4週間以内に禁煙に踏み切る(成功者の81%が2週間以内、15%が次の2週間以内に禁煙を開始)
 (3)禁煙を始めたら早めに喫煙本数をゼロにする(成功者のほとんどは2週間以内にゼロに)

 また、禁煙中は食事の管理や運動習慣による体重増加(肥満)対策も重要になります。上記12週間の禁煙指導中の体重増加をみると、禁煙成功者は平均2.9kg増でしたが、失敗者では3.9kg増と多めでした。喫煙に対する意識だけでなく、食事や運動といった健康全般に対する注意度、コントロール力の差があらわれた結果とみられています。

 なお、病院での禁煙指導(禁煙外来)にはバレニクリンだけでなく、ニコチンパッチを使うコースもあります。健康保険が適応されるのは、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上などの条件を満たす喫煙者が、施設の敷地内全面禁煙などの条件を満たした医療機関で禁煙指導を受ける場合です。禁煙指導は初診+再診4回(2、4、8、12週目)の計5回行われます。

本人の意志のみによる禁煙は難しい

 バレニクリンを製造・販売しているファイザー株式会社では、同社のサイトでニコチン依存度チェックを受けた200人の男女を対象に、2009年3~4月に禁煙に関する調査を行いました。その結果、明らかになったことは次のとおりです。

 この1年間で喫煙者の4人に1人が禁煙に挑戦。しかし、成功したのは3割以下(28%)。禁煙の方法は、「自分の意志のみ」という人が8割近く(77%)を占め、そのうち73%が失敗していました。北里大学北里研究所病院での成功率63%(医師の指導で、経口禁煙補助薬を使用)と比べると、本人だけの禁煙はいかに難しいかが伺われました。また、失敗した人の半数以上が、禁煙開始後1週間以内に再喫煙しており、「禁煙は最初の1週間が勝負」ということが改めてはっきりしました

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
鈴木 幸男先生


北里大学北里研究所病院 呼吸器内科部長
北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター 生体制御学准教授
1982年 慶應義塾大学医学部卒業。1987年 慶應義塾大学大学院医学研究科修了。1989年 米国スタンフォード大学留学。1992年より北里研究所病院勤務。2001年より呼吸器内科部長。研究部部長、予防医学センター副センター長、健診事業室室長などを兼務。2008年 北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター生体制御学准教授。日本内科学会認定医・指導医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、インフェクション・コントロール・ドクター、日本臨床腫瘍学会暫定指導医、日本禁煙学会認定専門医など。

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