生活習慣を改善して仮面高血圧などの高リスクを改善しよう

「正常高値血圧」は高血圧になりやすいという警告

合併症も加味して新しくなった高血圧の分類、重要視される家庭での血圧測定、食塩摂取量は1日6g未満に

高血圧分類の呼び方が変わった

 医師が治療の際に参考にするものに「治療ガイドライン」があります。高血圧に関して最新の治療ガイドラインは、日本高血圧学会が作成した『高血圧治療ガイドライン2009』です。その特徴は、国内での大規模な臨床試験の結果を参考とし、日本人の高血圧治療に有効と考えられる科学的な根拠がある生活指導と治療の方法を示していることです。

 そのなかから、私たちも知っておいたほうがよい内容として、(1)血圧値の分類、(2)診療室外での血圧測定も重要視されている理由、(3)薬による治療の前に医師が指導する生活習慣改善の内容――などについて解説していきます。

 まず、最新のガイドラインでは血圧値を次のように分類しています。

 分類の数値はこれ以前(2004年版)のガイドラインと変わりませんが、高血圧の程度を表す名称が変わりました。以前は高血圧の程度の軽い順から「軽症」、「中等症」、「重症」としていました。それを2009年版は「I度」、「II度」、「III度」と変えています。これは、糖尿病の合併症がある人だと、たとえ「軽症」の高血圧でも、症状の経過は必ずしも軽くはないことがある点を考慮した表現です。また、「正常高値血圧」というのは、高血圧ではないが正常でもない、境界域にあり、放っておけば今後高血圧になる可能性が高いという警告です。

診察室外での血圧測定でわかる仮面高血圧

 表の分類は診察室で測ったときの値です。2009年版では診察室での血圧値のほかに、診察室外での血圧値が将来、脳血管疾患(脳卒中)や心血管疾患(心疾患)の発症予測に大変有用ななことから、重要視しています。これには「家庭血圧値」と携帯型自動血圧計で測る「24時間自由行動下血圧値」があります。これらの血圧測定は、家庭では正常値なのに診察室で測ると高い値を示す「白衣高血圧」や、診察室では正常値なのに家庭や職場などで測ると高血圧を示す「仮面高血圧」を見つけるために欠かせません。

 「白衣高血圧」はただちに治療しなければならないということはありませんが、注意が必要です。「仮面高血圧」は普通の健診などでは高血圧であることが見逃されたり、降圧薬服用者では診察時は薬の効果で血圧が低下していて、早朝に測ると薬の効果がきれて高くなっていることがあり、危険性が高い高血圧です。
 そのため2009年版では、家庭血圧値は収縮期135mmHg以上または拡張期85mmHg以上を高血圧とし、24時間値は1日の平均で収縮期130mmHg以上または拡張期80mmHg以上などを高血圧としています。

まずは生活習慣の改善から

 高い血圧に加え、そのほかにも危険因子(リスク)をもっていると脳血管疾患や心血管疾患を起こしやすいため、2009年版ではその危険度を階層分けしています。例えば高血圧としてはまだ軽い「I度高血圧」だと、何も危険因子がなければ「低リスク」ですが、糖尿病をはじめとする危険因子をもっている数によって「中等リスク」、「高リスク」と階層分けされます。

 そして高リスクとされた人にはただちに降圧薬による治療が必要とされ、中等リスクだと1カ月以内の生活指導で目標血圧に下がらなければ降圧薬治療、低リスクだと3カ月以内の生活指導で目標血圧に下がらなければ降圧薬治療――と治療の指針を示しています。

 また、「正常高値血圧」も「至適血圧」と比べれば危険度が高いことから、ほかの危険因子があれば「中等リスク」や「高リスク」に階層分けされ、まず生活習慣の改善から取り組み、必要に応じて降圧薬を使用します。

 2009年版で示された生活習慣改善の具体的な目標は以下のとおりです。これは生活習慣の改善が必要な人向けのものですが、正常血圧の人にとっても役立つ内容ですから、明日といわず今日からでも実践するとよいでしょう。

食 塩:1日の摂取量は6g未満に
栄 養
 ・野菜・くだものを積極的にとる(これらに豊富なカリウムは体内のナトリウムが尿中に排出されるのを促す効果がある)
 ・コレステロールや動物性脂肪の摂取を控える
 ・魚(EPA、DHAなどの魚油)を積極的にとる
体 重:BMI(「体重kg÷身長m÷身長m」で計算)が25未満に
運 動:心臓病や動脈硬化が強くなければ、軽く汗ばむ程度の有酸素運動を毎日30分以上を目標に行う
アルコール:1日の摂取量は、エタノール量換算で男性は20~30ml(日本酒なら1合、ビールなら500ml、焼酎なら2分の1合弱に相当)以下、女性は10~20ml以下に
タバコ:禁煙する

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
猿田 享男先生


日本高血圧協会理事・慶應義塾大学名誉教授
1964年慶應義塾大学医学部卒業。同大学大学院医学研究科、聖路加国際病院を経て、69~71年米国テキサス州立大学に留学。帰国後、慶應義塾大学医学部専任講師、伊勢慶應病院内科部長などを経て、86年慶應義塾大学医学部内科教授。同大学医学部長、慶應義塾常任理事などを歴任後、現在に至る。専門は高血圧、腎臓病、内分泌など。日本内科学会理事、日本高血圧学会理事長、国際高血圧学会理事など、多くの学会役員を歴任。2004年版の高血圧治療ガイドライン作成委員会委員長。

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