喫煙者の発症率は2倍!せき・たん・息切れはCOPDかも

まず禁煙、スパイロメトリーで「肺年齢」のチェックも

喫煙が最大の原因となる肺の生活習慣病。潜在患者500万人以上と推計されるが、治療を受けている人は少数

喫煙者のほうが非喫煙者の2倍以上もかかりやすい

 COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、かつて「肺気腫」、「慢性気管支炎」と呼ばれた病態を合わせた病気。最大の原因は喫煙であることから肺の生活習慣病といわれ、たばこの煙や微小な粒子による気管支や肺の慢性的な炎症によって、徐々に肺の破壊が進行し、命にかかわることもあります。

 COPDで亡くなる人は年々増加しており、2008年1年間の死亡者は1万5520人。日本人全体の死亡原因の10位、男性では7位を占めています(厚生労働省『平成20年人口動態統計』)。
 患者数は500万人以上と推計されていますが、治療を受けている人は22.3万人にとどまり、「放置された患者さん」が多いのもCOPDの特徴です。

 喫煙習慣の有無でCOPDにかかっている人の割合(有病率)を比較してみると、たばこを吸ったことがない人では5%弱でしたが、「現在、喫煙している人」や「過去に喫煙していた人」ではその2倍を超える12%以上にもなっています。喫煙年数や体力の衰えも発病の引き金になるため、70歳以上では17%以上、60歳代で12%以上の人がかかっており、働き盛りの50歳代でも5%、つまり20人に1人はCOPDの患者さんとみられています。(福地ら、NICE Study,2001年)

階段や坂道では同年代の人についていけない

 患者さんは喫煙者のほうが非喫煙者の2倍以上も多いというデータから、喫煙がCOPDに影響を及ぼしていることは明らかです。さらに、「戦後のたばこ消費量の増加に約30年遅れてCOPDによる死亡者が増えている」とのデータからもたばことの密接な関係が裏づけられています。

 またCOPDは多くの生活習慣病などを併発しやすいこともわかっています。その主な病気をあげると、心筋梗塞・狭心症(COPD患者の50%が罹患か)、骨粗しょう症(運動制限の影響が強い)、呼吸器感染症(COPDを悪化させる原因の80%)、睡眠障害(中等症のCOPDでも夜間低酸素血症が多い)、糖尿病(運動制限の影響)、うつ病(呼吸困難などのストレスに起因)などです。

 このようなCOPDの主な症状は次のようなものです。
(1)階段の上り下りで息切れがする。
(2)せきやたんが出る(とくに朝、起きたとき)。
(3)かぜをひきやすく、治りにくい。
(4)呼吸のたびにゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)がある。

 以上のうち(4)の症状によって、COPDはぜんそくと間違えられることがあります。しかし、ぜんそくが小児期を含む若い頃に発症し、発作的に症状が現われ、夜間や早朝に多いのに対して、COPDは中年以降に発症し、ゆっくりと少しずつ進行し(急速に悪化することもある)、たとえば階段や坂道の上り下りのときなどによく息切れを起こします。

 以下のチェックリストで、2つ以上に当てはまればCOPDが疑われます。たばこを吸っていれば、まず禁煙。そして、できるだけ早めにCOPDを見つけるための専門の検査を受けましょう。

●COPDのチェックリスト
□1日に何度もせきをする
□1日に何度も黄色がかったり粘ったりするたんが出る
□同年代の人に比べて息切れがしやすい(一緒に坂道を上れない)
□40歳以上である
□現在、たばこを吸っている、または以前吸っていた

啓発イベントなどで「肺年齢」を測ってみよう

 COPDは肺の病気ですが、胸部X線の検査では診断できません。これが、COPDでありながら治療どころか診断も受けていない「放置された患者さん」を多数生み出している一因になっています。COPDの診断にはスパイロメーターという検査装置を使った呼吸機能検査(スパイロメトリー)が必要です。

 スパイロメトリーは息を吐き出す力を数値化できる検査で、この数値によってCOPDの診断が可能になります。さらに、測定結果をだれにでもわかりやすい「肺年齢」として示すこともできます。肺の機能は年齢とともに衰えていきます。「自然な衰え方をした場合の何歳の人の肺に相当するか」が肺年齢です。肺年齢が実年齢と同じか若ければ健康、実年齢より上だった場合は要注意で、COPDの危険性もある、と判断できます。

 残念ながらスパイロメトリーはまだ一般の医療機関に普及しているとはいいがたいのが現状です。「呼吸の日(5月9日)」「肺の日(8月1日)」(いずれも日本呼吸器学会)、「世界COPDデー(11月18日)」(GOLD日本委員会)などに行われるCOPD啓発イベントなどを利用し、スパイロメトリーを体験して肺の健康を見直すのもよいでしょう。
 そして何より、まだたばこを吸っている人はまず禁煙を実行することが大切です。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
木田 厚瑞先生


日本医科大学呼吸器内科教授、同大学呼吸ケアクリニック所長
1945年石川県生まれ。70年金沢大学医学部卒業、75年同大学大学院医学研究科修了、東京都老人医療センター呼吸器科勤務。77~80年カナダ・マニトバ大学に留学。94年東京都老人医療センター呼吸器科部長、2003年より現職。主な研究領域はCOPD、気管支喘息、慢性呼吸不全、在宅呼吸ケアなど。日本内科学会指導医・認定医、日本呼吸器学会および日本老年病学会の指導医・専門医・評議委員。2008年厚生科学研究「COPDと禁煙」研究班班長。著書に『慢性呼吸不全の包括的呼吸ケア』(南江堂)、『肺の生活習慣病(COPD)』(中公新書)など多数。

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