体に良い「油」を上手にとって-1日1食、魚を食べよう

油の種類と特徴を知り、量だけでなく質にも気を配ろう

リノール酸を減らし、青背魚の油(EPA、DHA)を意識して増やそう。1日1回は魚料理を

日本人の脂肪摂取量は50年前の3倍、高脂肪食の人が増えている

 「油(脂肪)は悪者。とらないほうがいい」と思っていませんか?
 油をとりすぎれば、肥満を招いたり、動脈硬化からさまざまな生活習慣病を引き起こしたりするのでよくありません。
 しかし一方で、油は体にとって欠かせない存在です。エネルギーになるだけでなく、体の細胞膜やホルモンの原料になり、代謝機能にもかかわっているからです。とりすぎは問題ですが、必要量は食事からとらなければいけません。

 日本人の1日あたりの脂肪摂取量は約60g。これは50年前のおよそ3倍です。また、摂取エネルギーに占める脂肪の割合は20~25%未満が適切だとされています。しかし、実際には約半数の人が25%以上とっており、30%を超える高脂肪食の人が増えているのが現状です。
 これだけ脂肪摂取量が増え、摂取エネルギーに占める割合が高くなってしまう原因の一つは、脂肪が1gあたり9kcalと、少量で高エネルギーだからです。脂肪とともに三大栄養素とされる糖質、たんぱく質が、いずれも1gあたり4kcalですから、その違いは歴然としています。

 必要だけれどとりすぎてはいけないとしたら、とり方に注意しなければいけません。量と同時に質にも気をつける必要があります。油の主成分である脂肪酸の種類、体内での機能に注目しましょう。

植物性脂肪でもリノール酸はとりすぎに注意

 日常の食事でとる油(油脂)にはいろいろな種類があります。肉、魚、乳製品、サラダ油、ごま油、オリーブ油、マヨネーズなど、数え出したらきりがありません。ひとことで「油」といっても、脂肪酸の種類によっていくつかのグループに分類することができます。
 脂肪酸は、大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の二つに分けることができます。さらに不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、多価不飽和脂肪酸にはn-6系とn-3系があります。つまり、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、n-6系多価不飽和脂肪酸とn-3系多価不飽和脂肪酸の4種類に分けることができるのです。

 飽和脂肪酸は、いわゆる動物性脂肪で、体内でも合成されます。肉の脂身、バター、ラード、牛乳、生クリームなどに多く含まれます。人も動物と同様にこの種の油を自分の体内で作れるので、栄養学的には食事からとくにとる必要はなく、肥満防止の意味からは摂取を控えることがすすめられます。

 一方、不飽和脂肪酸は種類によって特徴や機能が異なります。
 一価不飽和脂肪酸は、オリーブ油、なたね油などに含まれるオレイン酸などですが、これも飽和脂肪酸と同様に体内で合成されるので、ほどほどにとればよいでしょう。加熱しても酸化しにくいので、炒めものの調理に向いています。

 最も注意が必要なのは、n-6系とn-3系の違いです。
 n-6系は、大豆油、コーン油、ごま油、マヨネーズ、マーガリンなどに含まれるリノール酸で(*ごま油はオレイン酸も多く含む)、体内でアラキドン酸を増やします。このアラキドン酸からは人間が生きていく上で必要な生理活性分子が作られますが、とりすぎると、その生理活性分子が炎症物質として働いて、その過剰反応を通じて心疾患やアレルギー反応を促進します。

 これに対してn-3系は、えごま油、しそ油、亜麻仁油(あまにゆ)などに含まれるα-リノレン酸、魚介類(とくに青い背の魚:いわし、さんま、ぶりなど)に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)です。n-3系は、脳や網膜の神経機能を維持する上でたいへん重要です。また、心疾患やアレルギーの予防にも有効な脂肪酸です。ただし、酸化しやすいので、できるだけ加熱しないでとる、食用油も開封後は冷蔵庫で保管して早めに使い切るなどの注意が必要です。

 n-6系もn-3系も体内で合成されないため、食事でとる必要のある必須脂肪酸ですが、両者をどんなバランスでとるかが重要です。n-6系とn-3系を4対1の比率でとるのが目安とされています。

揚げ物やドレッシングのリノール酸を減らし、1日1回魚料理をメインに

 前述のようにn-6系のとりすぎは体内の炎症物質を増やしますが、n-3系にはn-6系の働きを競合的に抑制する作用があるため、n-3系を増やすと炎症物質を少なくすることができます。
 また、n-3系で魚介類に豊富なEPAとDHAからは、すでに起こっている炎症を鎮める物質もつくられることがわかっています。さらに、n-3系には動脈硬化や心筋梗塞などの危険性を小さくする働きがあることが明らかになっています。日本の調査でも、魚介類を多く食べる人は心筋梗塞を起こすリスクが低いという結果が出ています。

 しかし日本では、n-6系のリノール酸が健康によい油として一時期盛んに宣伝されたためか、リノール酸をとりすぎる一方、魚介類をあまり食べない人が増えています。動脈硬化を防ぐには、n-6系を減らしn-3系を増やすことがすすめられます。

 そのためには、調理油はリノール酸ではなく一価不飽和脂肪酸のオレイン酸を、ドレッシングにはしそ油や亜麻仁油などのn-3系を使い、リノール酸を多く含む加工食品や菓子類の食べすぎに注意しましょう。そして、意識して魚介類を食べることです。といっても、魚づくしの食事が必要というわけではなく、青背の魚なら1日1回主菜としてとる程度でよいのです。

 さらに、抗酸化物質の豊富な野菜をたっぷりとれば、体内でも酸化されやすいn-3系の酸化を防ぎ、食物繊維が脂肪や塩分の吸収を抑えるなど、動脈硬化のリスクを減らし生活習慣病予防に役立ちます。伝統的な和食を、もう一度見直しましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
小林 哲幸先生


お茶の水女子大学大学院
人間文化創成科学研究科生命科学コース教授
東京大学薬学部卒業、東京大学大学院薬学研究科博士課程修了(薬学博士)。「脂質分子から細胞機能・病態を探る」をメインテーマとして、生体膜脂質代謝と機能の生化学的解析、並びに食餌脂肪酸と生体機能の関係(脂質栄養学)について研究。主な著書に『やさしい細胞の科学』(共著、オーム社)、『Brock微生物学』(共訳、オーム社)、『バイオサイエンス事典』(共著、朝倉書店)、『油脂とアレルギー』(共著、学会出版センター)ほか。

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