病気の治療や療養に悩んだら医療ソーシャルワーカーに相談しよう

患者さんのよりよい治療・療養、社会復帰に向けての相談支援

病気になって困ったり悩んだりしたときは、医療ソーシャルワーカーに相談してみませんか。

自ら語ることで、患者自身で解決策をつかむことも

 自分自身が大病を宣告されたり、家族が突然入院してしまったとき、 頭の中が真っ白になってしまい、何をしたらよいのかわからなくなる人は多いのではないでしょうか。
 そんなときに頼りになるのが、医療ソーシャルワーカー(MSW)です。医療ソーシャルワーカーとは、社会福祉の立場から、患者や家族からのさまざまな相談に応じてくれる専門職。治療中の心理的・社会的な問題から退院後の療養、社会復帰、医療費などの経済的問題まで、幅広い内容の相談支援を行っています。

 東京共済病院・がん相談支援センターに医療ソーシャルワーカーとして勤務する大沢かおりさんは、患者さんやその家族への相談支援で行っていることについて、次のように説明してくれました。相談支援では、「心理的なサポート」、「ニーズの把握」、「理解度の確認」、「情報提供」、「今後の方向性の明確化」を行っていきます。

●心理的なサポート まず相談内容をしっかりと聴き、信頼関係を築くようにします。相談者の不安を受け止め、軽減を図るとともに安心感を与えるように心がけます。相談者は自ら語ることで自分に気づき、今何が問題で、その解決策は何なのかを自らつかむことができることもあります。
●ニーズの把握 言葉にされた内容のほかに、表面化していない、相談者が自分でも気づいていない訴えがないかどうかにも気を配ります。
●理解度の確認 相談者が自身(や家族)の病状をどのように把握しているのかを確認し、相談者が自ら話すことで客観的に状況を把握していくことを促します。
●情報提供 求められている情報、参考になる情報を相談者が理解できる形で提供します。
●今後の方向性の明確化 相談者が納得でき、希望する、よりよい治療を受けられるように支援し、今後の具体的な動き方、アクセスすべき窓口の情報を具体的に伝えます。

 東京共済病院・がん相談支援センターには、多くの患者さんや家族がさまざまな相談に訪れます。その内容は、治療開始にあたって準備すべきもの、確定診断時や再発・転移がわかったとき、今後の治療の見通しについての相談や、経済的なこと、仕事を辞めるか休職にするかといった職場との交渉に関する相談もあります。

 家族関係にかかわる相談も増えています。DV、虐待、ネグレクト……。入院が必要でも親の介護や子どもの養育で困難な場合、関係機関と連携しながら調整したり、強い不安等で日常生活や治療に支障が出ている場合は、専門治療の必要性を判断し精神医療の専門家につなぎます。
 さらには在宅で終末期を過ごす場合の諸手配、緩和ケア病棟への入・転院、最期を迎えるまでの過ごし方、そして残された家族からの相談なども受けています。

支え合いと情報交換の場「乳がん患者サロン」を開設

 毎年10月は、乳がんの早期発見啓発のための「ピンクリボン月間」ですが、東京共済病院では2008年3月から毎月2回患者さんの希望に応える形で、支え合いと情報交換の場として「乳がん患者サロン」を開設しています。
 院内の会議室で開催されるサロンでは、病状に応じて初発の患者さんのテーブルと、再発・遠隔転移の患者さんのテーブルの2つに分けています。そうすることで、初発の患者さんはその状態での悩みを話せますし、病状が進行している患者さんは、自身の厳しい局面を迎えた話が初発の患者さんを怖がらせてしまうのではないかなどの余計な気遣いをすることなく話をすることができます。

 サロンでは、患者さんが安心して自分の話ができ、仲間の話が聞けるくつろぎの場となるように心がけ、一緒に話を聞きながら、正確な情報が流れているか気を配っています。内容によっては医師に相談して対応してもらうこともあります。
 サロンは、自分の話をすることで人の役に立てる、仲間の話を聞くことで不安が軽減できる、がんが転移しても適切な治療を受けながら普通に暮らせている仲間の姿を見ることで希望を抱けるといったように、患者さんたちの支え合いの場となっています。

 院内での活動にとどまらず、大沢さんは、小さい子どもがいる方ががんになったとき、その親子をサポートするプロジェクト「Hope Tree」を立ち上げ、代表を務めています。
 親ががんになったとき、子どもは生活の変化を余儀なくされ、心理的ストレスを受けますが、子どもにどう対応してよいのかわからずに、病気を隠したまま治療を続ける親は少なくありません。しかし、子どもは何かが違っていることに気づき、かえって不安をつのらせてしまいます。
 米国の研究では、親ががんになった子どもは不安や気分の落ち込みを感じることが多いが、年齢に応じた適切な情報を提供することで子どもは安定し、さらに家庭内のストレス軽減や、親の抑うつ気分の改善にもつながるという報告があります。

 「Hope Tree」は、親ががんの子どもを理解しサポートするのに役立つ、日本の文化的背景を踏まえた社会資源を開発することを目指しています。そのサイト「Hope Tree~パパやママががんになったら~」では、子どもを理解するのに役立つ翻訳資料や、子どもとがんについて話し合うきっかけ作りに役立つ絵本などを紹介しており、Q&Aコーナーもあります。

医療ソーシャルワーカーの果たす役割に対する期待はますます大きくなっている

 医療ソーシャルワーカーは、主に病院や老人保健施設などで患者さんや家族への支援を行っています。ソーシャルワーカーとは社会福祉に携わる専門家のことをいい、その中の保健医療分野で働く人を、医療ソーシャルワーカーと呼んでいます。医療ソーシャルワーカーには国家資格である「社会福祉士」や「精神保健福祉士」が携わることが多いようですが、法律上の規制はありません。

 厚生労働省は「医療ソーシャルワーカー業務指針」(2002年改訂版)の中で、「保健医療の場において、社会福祉の立場から患者のかかえる経済的・心理的・社会的問題の解決、調整を援助し、社会復帰の促進を図る医療ソーシャルワーカーの果たす役割に対する期待は、ますます大きくなっている」と指摘。その主な業務内容をあげています。詳しくは上記サイトをご覧ください。

 現在、自分自身や家族の治療・療養で困り事がある場合はもちろん、いざというときのためにも、医療ソーシャルワーカーさんがいる最寄りの医療機関を調べておくとよいでしょう。

「公益社団法人日本医療社会福祉協会」>会員マップ

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
大沢 かおりさん


東京共済病院 がん相談支援センター 医療ソーシャルワーカー
1990 年上智大学文学部社会福祉学科卒業。91年より現職。社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員。2007年、乳がん闘病中に入会した患者会での活動を通じ、米国のMDアンダーソンがんセンターでがんと診断された親とその子どものケアを専門に行うマーサ・アッシェンブレナー氏と出会う。同氏の「がんを持つ親の子ども」に対するケアの取り組みに共感し、08年、「子どもを含めた家族全体の支援が大切」という視点を持った小児科医、看護師、臨床心理士、チャイルド・ライフ・スペシャリストらと協力し、がんになった親とその子どもをサポートする「Hope Tree」を立ち上げ、代表を務める。

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