動脈硬化の予防にはコレステロール値を下げるのがポイント

モチベーションがアップする心臓病・脳卒中予防対策を

男性は40代を過ぎると、女性は更年期以降が危険年齢。その人に合った方法で心臓病や脳卒中を防ごう

動脈硬化の予防に重要な鍵となるコレステロール対策

 狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳出血・脳梗塞などの脳卒中、これら循環器の病気が日本人の死亡原因の30%近くを占めています。循環器の病気の主な原因は動脈硬化です。動脈硬化は、血管に余分なコレステロールなどがたまり、血管が狭くなったり弾力性がなくなった状態をいい、脂質異常症(高脂血症)や高血圧、糖尿病、喫煙などが原因で起こります。
 動脈硬化の起こっている血管には、多量のコレステロールの蓄積が見られます。コレステロールは生命を維持するため体にとって重要な物質ですが、多すぎると重大な病気の原因となります。心臓病や脳卒中を引き起こす動脈硬化の予防のために、コレステロール対策は重要な鍵となるのです。

 先般、「働き世代の心臓病・脳卒中対策!~コレステロールとどう付き合うか」をテーマとした講演会(主催:財団法人東京顕微鏡院、医療法人社団こころとからだの元気プラザ)が、都内で開催されました。講師を務めた帝京大学医学部長・内科教授の寺本民生先生は、科学的根拠を踏まえつつ、「一人ひとりに合わせたモチベーションが高まるコレステロール対策が大切」と話します。

 コレステロールのうち、体の組織にコレステロールを運ぶ働きをするのがLDLコレステロール、コレステロールを回収する働きをするのがHDLコレステロールです。そのため、前者を悪玉、後者を善玉と呼ぶこともあります。
 LDLコレステロールが140mg/dl以上になると脂質異常症と診断されます。しかし、この数値が高いだけで、高血圧や糖尿病などそのほかの病気がなく、心臓病や脳卒中などに対する差し迫った危険がない場合、治療の第一選択は生活習慣の改善になります。

「体重の減量が薬」。まず食生活の改善でコレステロール値の改善を

 生活習慣のなかでもとくに大切なのが食生活の改善です。食べ物で動物性脂肪を多くとると、血液中のLDLコレステロールが増えることがわかっています。
 寺本先生は治療を行うとき、患者さんに「1カ月間実験しましょう。減量が薬です」と伝えて食生活を改善してもらい、それでコレステロール値が下がりやすいタイプかどうか判断しています。個人差はありますが、1カ月で10%以上下がる人もいて、実際に数値がよくなることがわかれば、患者さんの生活改善に対するモチベーションもアップします。そのまま生活改善を続ければ、さらに数値が下がって薬を使わないですむこともあります。元の数値より20~30%下がれば、心臓病や脳卒中のリスクは薬物療法と同等まで減らせると考えられています。

 ただし、一定期間がんばっても生活改善だけではなかなか下がらない人もいるため、その場合は、薬を使うことを検討します。
 生活改善も薬物療法も、心臓病や脳卒中に至らないための手段であり、薬をむやみに怖がらず、上手に使うことが肝心です(家族性高コレステロール血症の人など、生活改善だけではコントロールしにくい人、ほかのリスクを併せもつ人も薬物治療が第一選択になります)。

LDLコレステロール値を下げ、動脈硬化を予防する食事

 食事では、LDLコレステロール値を下げるだけでなく、動脈硬化の予防につながる工夫が大切です。

●動物性脂肪をとりすぎない
 卵、魚卵、乳製品、レバー類など、コレステロールが多い食べ物のとりすぎに注意。肉類、とくにその脂はコレステロールを下げにくくするので、脂の少ない部分を選ぶ。

●野菜や果物などを心がけてとる
 野菜や果物には食物繊維やカリウムが豊富。食物繊維にはコレステロールの吸収を抑える働きがある。カリウムにはナトリウムを体外に排出する働きがあり、高血圧予防や動脈硬化予防につながる。

●魚を多くとる
 1週間に1回程度魚をとる人と、1日(毎日)1回以上とる人とを比べると、後者では心筋梗塞のリスクが半分以下になるというデータがある。魚を食べる頻度は、多ければ多いほどよいといわれる。

●塩分を控える
 日本人の1日に摂取する塩分は、1965年の平均20gから現在11gまで減り、脳卒中も半分以下に減っている。日本高血圧学会では、1日6g未満の摂取をすすめている。

●トランス脂肪酸の摂取を減らす
 トランス脂肪酸とは、主に植物性の油を固めて油脂を製造するときに用いられる「水素添加」によって生成され、マーガリンやファストブレッド、ショートニングなどに含まれる。また、油を加熱すると生成されるので、フライドポテト、ポテトチップスなどの揚げ物にも多く含まれる。トランス脂肪酸の摂取を減らすと、心臓病・脳卒中が減るといわれている。

 現在、コレステロール値に問題がない人は、予防のために厳しく食事を制限する必要はありません。普通の牛乳(ローファットなどにしなくても)は1日に400mlくらいまでなら、とくに問題ないという調査結果があります。牛乳は、カルシウムを含んでおり、骨粗しょう症予防に大切なもの。むやみに制限する必要はないでしょう。牛や豚、羊など「赤肉」と呼ばれる肉類も、1日70gまでならよいと考えられています。

 飲酒も適量であれば、かえって動脈硬化が少なくなるともいわれています(1日2合より多くなると、肝臓の病気などで死亡率が増える)。ただしたばこは、LDLコレステロールの酸化を促し、動脈硬化を進める原因になるので、やはり禁煙が不可欠です。

運動でHDLコレステロールを増やす

 多すぎが問題となるLDLコレステロールに対して、HDLコレステロールは多いほどよいとされ、少ないことが動脈硬化の原因になります(40mg/dl未満で脂質異常症と診断される)。ただし、100mg/dl以上になると、高くなる原因になんらかの異常が隠れているおそれがあるため、専門医に相談するほうがよいでしょう。

 運動不足や肥満、喫煙はHDLコレステロール値を下げる要因になります。HDLコレステロールそのものを増やす薬はありませんが、HDLコレステロールは運動で増えやすいという性質があるので、この数値が低い人は運動を生活に取り入れるとよいでしょう。
 「平成7年国民栄養調査」でも、よく歩く人ほどHDLコレステロール値が高いことがわかっています。少し息切れがするくらいの速さで歩くのがおすすめで、歩数計で歩数をモニターしながら行うと、モチベーションも高まります。なんらかの持病がある人は、医師と相談してから始めましょう。

男性も女性もライフステージに合わせて、継続可能な対策の実行を

 コレステロール対策に生活習慣の改善は大切ですが、コレステロール値以外に問題がない人でも、40~50歳代の働き盛りで、どうしても生活が不規則になりがちな人の場合は、まず薬を使うケースもあります。その場合でも、60歳を過ぎてからなど、時間や気持ちにゆとりが出た時点から生活改善に力を入れ、薬をやめることができた、という人も少なくありません。

 近年の食生活の欧米化ともかかわっていますが、加齢とともにどうしても動脈硬化関連疾患のリスクは高まります。とくに、男性は45歳以上に心筋梗塞などの突然死がぐんと増えます。脳卒中は40歳以上が要注意といわれます。また、女性はホルモンの関係で閉経後に血圧やLDLコレステロール値が高くなります。
 そうした年齢になったら、定期健診などできちんと数値をモニターし、コントロールしていくことが大切です。

 定期的に健康診断を受けているグループは突然死が少ない、というデータを示しながら、寺本先生は、「年齢やライフステージも考慮して対策を立て実行していくことで、心臓病や脳卒中のリスクをかなり減らすことができます。コレステロール値や血圧だけでなく、肥満の改善、禁煙、ストレス対策なども含めて、生活全般から動脈硬化を予防していくことが大切です」と強調しました。

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
寺本 民生先生


帝京大学医学部長・内科教授
1973年東京大学医学部医学科卒業。日立総合病院、小平記念東京日立病院、アメリカ・シカゴ大学留学後、東京大学第一内科医局長を経て、1991年帝京大学医学部第一内科助教授に就任。同教授、同主任教授を経て、2010年より現職。専門は動脈硬化、脂質代謝、糖尿病、肝臓病。日本内科学会理事長、日本動脈硬化学会副理事長、日本成人病(生活習慣病)学会理事などを務める。著書に『ガイドライン/ガイダンス脂質異常症―こう診る・こう考える』(日本医事新報社)、『健診で中性脂肪・コレステロールが心配ですよと言われた人の本』(法研)など多数。

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