狭心症・心筋梗塞の原因は? 予防のための11個のポイント

最大の原因・冠動脈の動脈硬化をしっかり防ごう

症状を見逃さず一刻も早い受診につなげることが重要。同時に、動脈硬化を予防・改善する生活習慣を

血管壁にLDLコレステロールが取り込まれ、血栓を作って血流を妨げる

 日本人の死亡原因の第2位は心臓病。なかでも多いのが狭心症と心筋梗塞です。中高年に多い病気ですが、最近は若い人にも増えています。

 狭心症は、心臓に酸素や栄養を運んでいる冠動脈が狭くなって血液が十分に流れなくなり、急に胸が圧迫されるような発作が起こる病気です。一時的に血流が不足しても数分のうちに回復して症状が治まるのが特徴で、タイプによっては心筋梗塞に移行しやすい狭心症もあり、十分な注意と備えが必要です。
 一方心筋梗塞は、冠動脈が完全に詰まって血流が止まってしまい、心筋が壊死(えし)を起こす病気で、胸痛が10分以上持続します。その結果、心臓の機能が失われたり致命的な不整脈を起こして命を落とすこともあります。発作後急死することも少なくありません。心筋梗塞の発作が疑われたらすぐに救急車を呼び、一刻も早くCCU(冠動脈疾患集中治療室)のある病院で治療を受ける必要があります。

 冠動脈を狭くする最大の原因は、粥状(じゅくじょう)硬化と呼ばれる動脈硬化です。血管の内壁は、高血圧や高血糖、脂質異常などの状態が続くと傷つきやすくなります。この内壁にLDLコレステロールが取り込まれると、ドロドロの塊(粥腫=アテローム)をつくって内壁を盛り上げます。この内壁が破綻し傷口ができると、それを修復するために血液中の血小板という成分が集ってきて、血液の塊である血栓をつくり、血管の内腔が狭くなっていきます。さらに血小板が集まって血栓が大きくなり、血管の内腔はますます狭くなって、ついにはふさがってしまうこともあります。

狭心症は安定型から不安定型、心筋梗塞へ移行も

 冠動脈が狭くなっていても、運動時のみ胸痛が起こり、安静時は安定しているタイプは安定型狭心症と呼ばれます。行動に制限はあるものの日常生活が可能ですが、激しい運動をするとそれに見合った血液を心臓に送ることができず、胸痛発作が起こることがあります。この場合発作は2~3分以内におさまり、ニトログリセリンという血管を広げる薬がよく効きます。

 狭心症にはもう一つ、安静時にも胸痛が起こるほど冠動脈の狭窄が高度で、さらに血管を閉塞して心筋梗塞に進む危険性が高いタイプがあり、これを不安定狭心症といいます。不安定狭心症は心筋梗塞と合わせて「急性冠症候群」と呼ばれることもあり、どちらもできるだけ血行を再建する治療を受ける必要があります。不安定狭心症と診断されたら、心筋梗塞と同レベルの対応をすることが重要なのです。

 安定型狭心症と診断されていた人が不安定型、さらには心筋梗塞に移行するケースもあります。いつもはニトログリセリンで治まっていた発作が、治まらなくなり、痛みや不快感が10分以上も続くようなら心筋梗塞の疑いがあります。すぐに救急車を手配してください。
 「発作が頻回に起こるようになった」「1回の発作が長引くようになった」「軽い動きでも発作が起こるようになった」などが、安定型から不安定型へのアラームとされています。これらの変化を見逃さないことが大切です。

 一方、動脈硬化とは無関係に起こる狭心症もあります。冠動脈がけいれんして一時的に血管が狭くなる冠れん縮性狭心症です。深夜から早朝の眠っている間に起こることが多く、女性より男性、特にたばこを吸う人に多く見られます。ニトログリセリンはこのタイプの発作を抑えるためにも有効です。
 さらに、動脈硬化がそれほど進んでいるわけでもないのに、アテロームや血栓が急激に脹らんで血管をふさぎ、心筋梗塞を発症するケースもあることがわかってきました。健診では「特に異常なし」でも、急激に狭心症から心筋梗塞を発症することがあり得るのです。

 狭心症や心筋梗塞の典型的な症状は「激しい胸の痛み」ですが、症状の出方、感じ方には個人差があります。不快感程度の痛みであったり、みぞおちや背中、肩、首、奥歯など胸部以外に痛みを感じる場合も珍しくありません。すでに狭心症をはじめ、心臓病の治療を受けている人はもちろん、「特に異常なし」の人も含めて、胸部を中心に経験したことのない痛みや不快感を感じたら、少しでも早く受診してください。

 狭心症と心筋梗塞の治療には薬物療法、カテーテル治療、バイパス手術などがあり、症状や患者さんの状態により選択されます。カテーテル治療は短期間の入院で低侵襲(体への負担が少ない)ですが、心筋梗塞の再発を防がない、生命予後は改善しないとのエビデンスが多く出てきました。バイパス手術は入院期間は長いのですが、将来の心筋梗塞予防効果、生命予後改善効果があることが知られています。狭心症の治療は循環器系の内科医と外科医の合同チーム(ハートチーム)で行うことがすすめられており、こういったチームのある施設で治療を受けることが大切です。

たばこ、塩分、脂質……生活習慣の見直しで狭心症・心筋梗塞を防ぎ、改善する

 狭心症と心筋梗塞の予防・改善には、動脈硬化を予防・改善するための生活習慣の見直しが基本となります。次のような生活習慣の改善を心がけましょう。

●狭心症・心筋梗塞を防ぎ、改善するための生活習慣の改善
(1)たばこは吸わない
 たばこの有害成分が血管を傷つけ、動脈硬化の引き金になります。
(2)栄養バランスのとれた規則正しい食事
 冠動脈の負担を減らすために大切です。
(3)塩分を減らす
 塩分のとり過ぎによる高血圧は動脈硬化の大きな誘因となります。
(4)脂質・コレステロールはとり過ぎない
 動物性脂肪のとり過ぎはアテロームの元になるLDLコレステロールを増やします。
(5)魚や野菜は十分にとる
 魚や野菜は血液中のLDLコレステロール減らしに有効です。
(6)肥満を解消する(適正体重を維持する)
 肥満は動脈硬化を悪化させます。
(7)お酒はほどほどに
 大量飲酒は血圧を上昇させ、中性脂肪を増やして動脈硬化を悪化させます。
(8)ウオーキングなどの有酸素運動を1日20分以上、1週間に3日以上
 有酸素運動は動脈硬化の予防や改善に有効、かつ心臓の機能を高めます。
(9)ストレスをため込まない
 ストレス過多は動脈硬化を悪化させます。
(10)「せっかち」を改める
 「せっかち」「完璧主義」などの「性格」も、ストレス過多から動脈硬化のリスクになり得ることを知っておきましょう。
(11)暑さ・寒さ対策を十分に
 寒さは血管を収縮させ、暑さで汗をたくさんかくと血液が濃くなって固まりやすくなり、血管への負担を増やします。

※家族に狭心症・心筋梗塞の患者さんがいる方は、特に注意が必要です。

(編集・制作 (株)法研)


【監修】
高本 眞一先生


三井記念病院院長、日本心臓血管外科学会理事長
1973年東京大学医学部卒業。三井記念病院外科医員、ハーバード大学医学部、マサチューセッツ総合病院外科研究員を経て、埼玉医科大学第1外科講師、公立昭和病院心臓血管外科主任医長、国立循環器病センター第2病棟部長、東京大学医学部胸部外科教授、同大大学院医学系研究科臓器病態外科学心臓外科・呼吸器外科教授などを歴任。2009年より現職。日本胸部外科学会会長(第59回)、アジア心臓血管外科学会常務理事、日本外科学会理事、日本心臓病学会理事(第56回会長)、厚生労働省診療関連死死因究明等に関する検討会委員、東京大学医療政策人材養成講座プログラムディレクター(04~09年)などを務める。

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