糖尿病とメタボの人は、がんになりやすい?3つの改善ポイント

糖尿病とがん。一見無関係のようで、実は密接な関係が

インスリンが血液中にだぶついている「高インスリン血症」は、細胞のがん化を進めると考えられています

増え過ぎたインスリンで進む「がん化」

 血液中のブドウ糖(血糖)を細胞に取り込んでエネルギー源として使うためには、膵臓でつくられるインスリンというホルモンが十分に働く必要があります。
 このインスリンの働きが弱いと、ブドウ糖を十分に体内に取り込むことができず、血液中にブドウ糖があふれた状態となります。これが、血液中のブドウ糖(血糖)値が高い、すなわち高血糖の状態であり、一定の基準を超えると糖尿病と診断されます。

 一方、「インスリンの働きが弱い」という“指令”を受けたすい臓では「働きの弱さを量でカバーするために」大量のインスリンをつくり血液中に分泌しようとします。このため、すい臓の機能がまだ残っている患者さんでは、血液中にブドウ糖だけでなく、インスリンも増えすぎた状態(高インスリン血症)となります。この傾向は内臓肥満がある、すなわちメタボ状態であれば、より顕著になり、メタボだけでも高インスリン血症がしばしばみられます。
 高インスリン血症は、高血糖とともに動脈硬化を促進させ、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高める要因となると考えられていますが、さらに、がんのリスクを高める要因であることも示されました。

 川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の加来浩平教授は、「増え過ぎたインスリンは、がん細胞の発生や増殖にかかわっていると考えられています」と話します。

糖尿病があるとがんの危険性が高まるという疫学調査も

 加来教授は「糖尿病とがん」に関する海外の文献(※)から、「糖尿病の人は、糖尿病でない人に比べて、がんになる危険性が1.2~2.5倍も高まります」と警告しています。
 データによると、糖尿病でない人を1とした場合、糖尿病の人ががんになるリスクは、肝がんで約2.5倍、子宮体がんで2.1倍、すい臓がんで1.8倍、大腸がんで1.3倍、乳がんや膀胱がんで1.2倍となっています。
 ※Johnson J:ADA 70th Scientific Sessions,2010,Orlando.

 こうした疫学調査は国内でも行われており、国立がん研究センター研究班による多目的コホート研究(JPHC Study)では、糖尿病になったことがある人は、そうではない人に比べて、何らかのがんになる危険性が男性で約1.3倍、女性で1.2倍高かったことがわかりました。
 臓器別にみると、糖尿病になったことがある人が特にかかりやすいのは、男性では肝がん(約2.2倍:糖尿病既往なしの人を1としたときのリスク、以下同)、腎臓がん(1.9倍)、すい臓がん(1.9倍)、大腸がん(結腸がん)(1.4倍)、胃がん(1.2倍)、女性では卵巣がん(2.4倍)、肝がん(1.9倍)、胃がん(1.6倍)でした。

糖尿病とがんの共通危険因子「肥満」「運動不足」「喫煙」

 糖尿病があるとがんの危険性が高まる背景として、加来教授は「血液中にインスリンが増えすぎた状態」のほか、肥満、運動不足、喫煙などの生活習慣が共通の危険因子になっていることを指摘しています。
 国立がん研究センター研究班でも、「糖尿病の既往があるとがんにかかりやすくなる理由は完全に解明されているわけではなく、がんの種類によっても理由はさまざまと考えられる」としたうえで、「糖尿病とがんには、運動不足や肥満、ホルモンの状態など、共通のリスク要因がある」ことや、「(インスリンをつくる)すい臓機能の衰えや、慢性ウイルス性肝炎から肝がんになるプロセスで糖尿病が誘発されるという報告もある」ことを指摘しています。

 加来教授は「喫煙、肥満、運動不足をはじめ、多くの生活習慣病に共通する危険因子を改善・解消することが、がんを含めた生活習慣病全体の予防・改善につながります」と強調。
 さらに、「特に、空腹時の血糖値は“正常”でも、食後に血糖値が上がりやすい“食後高血糖”があると、糖尿病、さらには神経症や網膜症・腎症などの合併症にまで進みやすいことがわかっています」と述べ、健診での空腹時血糖値に加え、血糖値の自己測定器具などを利用して食後の血糖値もチェックし、早期の生活改善に生かすことをすすめています。

<がんや糖尿病を予防・改善する生活習慣改善のポイント>
肥 満
 脂肪(特に内臓脂肪)が増えると、インスリンの働きを抑える物質が血液中に増え、インスリンの働きがいっそう低下します。するとブドウ糖があふれて高血糖が進み、働きの悪さを量でカバーするためにインスリンが増えてがんの危険性も高まります。
 まず食事制限を守り、運動習慣も加えて、肥満を改善・解消しましょう。

運動不足
 インスリンが適正に働くためには、筋肉などにあるインスリン・レセプター(受容体)が必要です。運動不足で筋肉量が減ると、筋肉中のこの受容体も減ってしまい、インスリンが働きにくくなります。
 ウオーキングの習慣をベースに、スクワット運動や掃除などの軽い筋トレも加えて、運動不足を解消し、筋肉の維持に努めましょう。

喫 煙
 喫煙が多くのがんの発症・悪化にかかわっていることは明らかです。糖尿病との関係でも、喫煙はインスリンの働きを低下させることがわかってきました。
 喫煙している人は、「禁煙外来」なども利用して、まず禁煙することが大切です。

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
加来(かく) 浩平先生


川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科学主任教授
同大学附属病院副院長
1973年山口大学医学部卒。77年同大大学院医学研究科修了後、同大医学部講師(第三内科)、米国ワシントン大学内科学代謝・内分泌部門研究員、山口大学助教授(第三内科)、ノボノルディスク社開発本部長・学術本部長を経て、98年川崎医科大学教授(糖尿病内科)に就任。2000年同大教授(糖尿病内分泌内科)、02年同大附属病院副院長(兼務)、10年より現職。研究テーマは糖尿病薬物治療、糖質・脂質代謝。日本糖尿病学会常務理事、日本糖尿病学会中国四国支部長、日本糖尿病療養指導士認定機構理事などを務める。

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