1回の採血でAICS検査-アミノ酸濃度でがんリスクが分かる

「アミノインデックス技術」を用いてがんである可能性を評価

がんへの新しいアプローチ。「アミノインデックス」がんリスクスクリーニング(AICS)とは?

AICSでがんのリスクを評価、ごく初期のがんも発見できる可能性が

 最近、人間ドックや健康診断で“「アミノインデックス」がんリスクスクリーニング(AICS)”と呼ばれる検査を導入する医療機関が増えています。どこかで耳にしたことはありませんか?

 「アミノインデックス」とは、血液中のアミノ酸濃度を測定して健康状態や病気の可能性を調べる技術を活用した解析サービスのことを言います(味の素(株)が開発し、商標登録している)。
 AICS(「AminoIndex」Cancer Screening)は、この「アミノインデックス」の技術を用い、健常な人の中からがんのリスク(可能性)の高い人をふるい分ける“リスクスクリーニング”検査です。
 その方法は、血液中の約20種類のアミノ酸の濃度を測定し、健康な人とのアミノ酸濃度のバランスの違いを統計的に解析することで、がんである可能性を評価するというもの。2011年4月から、胃がんなど5種類のがんを対象に検査が行われ、2012年5月には婦人科がん*1(子宮がん・卵巣がん)が加わりました。

*1:婦人科がんは子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんが対象。いずれかのがんであるリスクを評価できますが、それぞれのがんのリスクについて区別することはできません。

 がん検診は、自覚症状のないがんを早く見つけて早期治療に結びつけることで良好な予後やがんの治癒(ちゆ)を目指す二次予防(*2)を目的としていますが、AICSは血中のアミノ酸濃度によって統計的にがんであるリスクを評価し、既存検査で陽性とならなかったがんや画像で見逃しやすい小さな大きさの早期がんにも対応するため、がんの発見率向上につながることが期待されています。

*2:生活習慣などを改善し、がんにならないように努めることを一次予防、早期発見・早期治療を行って、良好な予後や治癒を目指し、がんによる死亡を防ぐことを二次予防という。

血液中のアミノ酸濃度のバランスでがんであるリスクがわかる

 なぜ、アミノ酸でがんであるリスクがわかるのでしょうか?

 私たちの体には、外部や内部の環境変化に対して、生体を常に安定した状態に保とうとする仕組み(生体恒常性)が備わっています。何か病気が発生すれば生体恒常性に異常が生じ、同時にそれを修復しようとする仕組みが働きます。
 人の体の約20%はたんぱく質で構成されていますが、そのたんぱく質は約20種類のアミノ酸からできています。血液中のアミノ酸も健康なときはその濃度は常に一定に保たれるようコントロールされていますが、体に何か異常があれば、疾患に応じて特徴的な変化があるはずと、アミノ酸に着目してさまざまな研究が行われてきました。

 現在では研究が進み、がん患者さんの血液中のアミノ酸濃度について調べたところ、アミノ酸濃度バランスに変化が見られ、明らかに健康な人と異なる増減を示していました。さらに、がんの種類によってその変化のパターンに特徴があることがわかりました。そこで、アミノ酸濃度バランスの変化のパターンをみることで、がんであるリスクを評価しようというのが、AICSなのです。

 AICSは現在、胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん(男性のみ)、乳がん(女性のみ)、子宮がん・卵巣がん(女性のみ)の6種について行われています。
 受診者のデータは統計的に解析され、リスクの低い順にランクA、B、Cに分類されます。ただし、確定診断ではないため、ランクAならがんの心配はまったくないということはありませんし、ランクCだから必ずがんであるということでもありません。AICSはあくまで受診時点でのがんであるリスクを評価する検査で、他の既存検査の結果とともに総合的に判断されます。

1回の採血で複数のがんのリスクスクリーニングができる

 現在、がんを見つける主要なアプローチは画像診断です。たとえば、肺がんには胸部CT検査、胃がんや大腸がんには内視鏡検査と、がん種ごとにそれぞれの検査を受けるため、検査時間が長時間にわたり、できるだけ簡便な検査で済ませたいという要望には応えられていない状況です。また、X線による放射線被曝や内視鏡検査の苦痛など、体に負担となりますし、婦人科がん検診は恥ずかしいという精神的な負担も大きいでしょう。このような負担の大きさが、がん検診受診率が上がらない理由のひとつと考えられています。

 これに対してAICS は、1回5mlの採血で複数のがん(男性4種、女性5種)のリスクスクリーニング検査ができ、苦痛や精神的負担が少ないため、がん検診の受診率向上が期待できます。

 一方、がんが産生する物質の存在とその量を測定する腫瘍マーカー検査が広く行われていますが、腫瘍マーカーはがんがある程度進行しないとはっきりとした変化が見られず、やはり早期がんへの感度は低くなります。この点、血液中のアミノ酸濃度はがん発症の早期でも変化することが知られています。このため、AICSはごくごく早期のがんも発見できる可能性があり、治療も軽度で済むといったメリットにつながると考えられています。

<AICSのメリット>
・1回の採血(5ml)ですむ
・放射線被曝のリスクがない
・早期がんにも対応
・複数のがんの検査が同時にできる(男性4種、女性5種)

 実際に、臨床検査の結果人間ドックでは発見できなかった早期のがんが発見されています。簡便にできて体への負担も少なく、がんの早期発見が期待できるAICSは、がんに対する新しい切り口でのアプローチと言ってよいでしょう。
 今後は、現状では早期発見が難しいすい臓がんや、生活習慣病などがん以外の病気への応用が期待されます。

 AICSには健康保険は適用されず、検査費用は医療機関によって異なります。受診可能な医療機関に直接問い合わせてご確認ください。三井記念病院 総合健診センターでは、男性AICS(4種:胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん)と女性AICS(5種:胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮がん・卵巣がん)を1万8,900円、女性AICS(2種:乳がん、子宮がん・卵巣がん)は7,800円で実施しています。また、妊娠中の人は、AICS値に影響が出るため検査を受けることはできません。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
山門 實先生


三井記念病院 総合健診センター 特任顧問
1972年群馬大学医学部医学科卒業。三井記念病院内科、東京大学医学部第二内科、米国オハイオ医科大学内科(PJ Mulrow教授)留学を経て、91年三井記念病院健康管理科部長、94年同病院総合健診センター所長に就任。2003年昭和大学医学部衛生学教室客員教授兼任、12年より現職。専門分野は内科(高血圧)、予防医学(人間ドック)。医学博士、日本内科学会認定総合内科専門医、日本人間ドック学会認定人間ドック健診指導医・専門医、日本高血圧学会認定高血圧指導医・専門医、日本医師会認定産業医。

この記事を見ているひとはこんな記事も見ています

親の喫煙が子どもの健康に与える恐い影響

毎年5月31日は、WHO(世界保健機関)が定める世界禁煙デーです。2008年は、若者がタバコの常習使用者になることを防ぐために、「若者へのタバコの売り込みをやめさせよう」というテーマが掲げられました。
わが国では、未成年者の喫煙防止の... 続きを読む

そろそろ「がん検診」を受けよう-受診の目安と検査方法

9月はがん征圧月間です。この四半世紀、がんは日本人の死亡原因の第1位。戦後がんの死亡者数はずっと増え続け、今年の6月に厚生労働省が発表した「平成18年人口動態統計の概況」によると、昨年は全死亡者の約3割にあたる33万人近くががんのために亡... 続きを読む

話題のアミノ酸を食べて摂ろう!タンパク質


ビタミンB1とともに、夏の食生活で不足しがちなのがタンパク質。タンパク質は、私たちが生きていく上で必要不可欠な栄養素です。

人間のからだはほとんど水とタンパク質で構成されています。とくにダイエッターに重要なの... 続きを読む

性格から【将来なりやすい病気】を診断 ネガティブは病気リスクが高い?

遺伝子検査を行えば、将来かかりやすい病気がわかるようになりましたが、遺伝子検査を行わなくても、性格タイプを見れば病気のかかりやすさがわかるという考え方があるのをご存じですか? せっかちで怒りっぽい「タイプA」は心臓病リスクが高い 性... 続きを読む

知らないと危険!?玄米のリスクと正しい食べ方

こんにちは、コラムニストの愛子です!
玄米は、ビタミンやミネラル、食物繊維が多く低GI値で、美容や健康効果抜群です。しかし実は、お米の選び方や炊き方を間違えると体に悪影響を及ぼす危険性もあるのです。そこで今回は、安心して玄米を召し上がれ... 続きを読む

妊娠中、夫のサポートが必要なとき-その2 旅行計画は慎重に

前回は、妊娠がわかったときに夫に知っておいてもらいたいことを7カ条にまとめて紹介しました。(「二人のための「イクメン」大作戦
1」)。今回は、その中の1~4カ条について、少し詳しく説明します。
そのときにならないと、なかなか実感できない... 続きを読む

乳がんを予防するには-生活習慣をあらためるだけでも効果アリ

10月は乳がん月間です。国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によると、2011年に日本で新たに乳がんと診断された女性は約72,500人、生涯で乳がんにかかるリスクは12人に1人と高く、現在日本人女性がかかるがんで最も... 続きを読む

有名人のがんにまつわるニュースが多い?後悔しないためのがん検診のススメ

歌手のテイラー・スウィフトが自身のブログで、母親ががんと診断されたと発表しました。クリスマスプレゼントとして贈った健康診断を受けたところ、がんが発見されたそうです。プライベートなことなので病気の詳細は書かれていませんが、彼女の母親から... 続きを読む

「検診は意味がない?」乳がん検診3つの疑問 自己検診だけじゃダメ?

北斗晶さんが乳がんを公表されて以来、乳がん検診への関心が高まっており、中には数ヶ月待ちの検診機関もあると聞きます。一方で、「検診は意味がない」「自己検診だけで十分」といった情報もネットなどで飛び交っていて、何が正しいのかわからず不安・・... 続きを読む

遺伝子で分かる将来の病気リスク検査は現代ではあてにならない?

最近、健康な人向けの遺伝子検査サービスがインターネット通販などで簡単に購入できるようになっています。その多くは、がんや生活習慣病などの病気のかかりやすさ、太りやすさなどの遺伝的体質を調べ、病気予防やダイエットなどに役立てようというもの。 ... 続きを読む