日本人は糖尿病になりやすい?予防は生活習慣から

糖尿病といえば「肥満」「男性」は、誤った“思い込み”

健康に悪影響を及ぼす生活習慣を放置しないよう、正しい知識を持ち、高血糖や糖尿病を予防しましょう

日本人は欧米人に比べてインスリンの分泌力が弱い

 「糖尿病は太っている人や男性がかかる病気」と思っている人は多いのではないでしょうか。確かにそういった人に糖尿病が多いのは事実ですが、やせている人や女性で糖尿病にかかる人も決して少なくありません。
 今年の『全国糖尿病週間』(11月11日~17日)のテーマは、「正しい知識で 予防と治療を」。この機会に、糖尿病に関する誤った“思い込み”を改めましょう。

 血糖値を上げるホルモンはいくつかありますが、下げるホルモンはインスリンだけです。インスリンはすい臓から分泌され、食事によって血液中に増えたブドウ糖をエネルギー源として体内にとり込む働きをします。インスリンにより、血液中のブドウ糖(血糖)が減って、食事で上昇した血糖値が元(食前のレベル)に戻っていきます。

 日本人は欧米人に比べ、このインスリンの分泌力が弱いため、年齢や性別を問わず、血糖値を下げられず高血糖の状態が長く続きやすい(血糖値が上がりやすい)体質を持っていることをよく理解しておきましょう。家族に糖尿病の人がいる場合は、特に注意が必要です。

こんなにある、糖尿病に関する誤った“思い込み

●肥満ではなくても・・・日本人は内臓脂肪をためやすいが外見ではわかりにくい
 日本人は欧米人に比べ、脂肪のなかでも内臓脂肪をためやすい体質を持っています。皮膚のすぐ内側につく皮下脂肪の蓄積は、外見でもわかりやすいのに対して、内臓周囲(体の中心部)につく内臓脂肪の蓄積は外見ではほとんどわかりません。このため日本人では、外見上は特に肥満ではなくても、内臓脂肪がたまり過ぎているケースが珍しくありません。

 内臓脂肪がたまると、内臓脂肪から分泌される「インスリンの働きを悪くする」物質が増え、血糖値が上がりやすくなります。元々インスリンの分泌力が弱いうえに内臓脂肪をため込みやすい(インスリンの働きが悪くなりやすい)日本人は、外見上の肥満の有無にかかわらず、糖尿病になりやすいのです。

●「甘いもの好き」ではなくても・・・脂質も含め、エネルギーのとり過ぎが引き金に
 糖尿病はその名前から、「糖」すなわち甘いもののとり過ぎで起こると思われがちです。実際、甘いもの、特にお菓子や清涼飲料に含まれる糖質は血糖値を上げやすいことがわかっています。
 ただし、糖尿病の引き金になるのは、単に甘いもの(糖質)というより、脂質なども含めたエネルギーのとり過ぎです。消費しきれなかったエネルギーは、元が糖質でも脂質でも、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられ、このうち内臓脂肪の蓄積がインスリンの働きを悪くするのは前述のとおりです。

●空腹時血糖値は「正常」でも・・・食後に血糖値が急上昇するタイプは糖尿病に進みやすい
 健康診断では多くの場合、朝食を食べずに空腹時血糖値を測ります。ここで異常値が出れば当然、糖尿病の疑いが出てくるわけですが、空腹時血糖値は正常でも、食後に血糖値が急上昇して正常値を超えるケースがあります。
 これは「食後高血糖」と呼ばれ、そのまま放置していると、次第に空腹時の血糖値も高くなり、糖尿病に進みやすいことが知られています。「家族に糖尿病の人がいる」など、糖尿病になりやすい条件にあてはまる人は、空腹時血糖値だけで安心せずに、医療機関に相談して食後血糖値も測ってみることをおすすめします。

●女性でも・・・女性ホルモンの分泌が減少する更年期以降はリスクが高まる
 女性は男性よりも糖尿病が少ないことは明らかです。女性ホルモンが内臓脂肪の蓄積を抑えているため、インスリンの働きが低下しにくいからです。しかし、女性ホルモンの分泌が急激に減少する更年期以降は、女性でも糖尿病のリスクが高まります。

 「平成22年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、女性で「糖尿病が強く疑われる人の割合」は50歳代では5.6%ですが、60歳代では倍以上に増えて13.5%、70歳以上では16.5%となっています。男性は50歳代で15.6%、60歳代22.1%、70歳以上22.4%となり、70歳以上では男女差はかなり縮まっています。
 年齢とともにインスリンの分泌力が低下して、血糖値が上がりやすくなるのは男女共通。更年期以降の女性は、年齢に加えて、それまでのような「女性ホルモンの助け」は得られなくなることをよく理解してください。女性の糖尿病では間食(特に就寝前)が肥満などの問題につながりやすいので、食生活を中心に生活習慣を見直しましょう。

「野菜が先」で食後の血糖上昇を緩やかに

 このように、糖尿病に関する誤った“思い込み”は多く存在しますが、それによって高血糖状態であること、または高血糖になりやすい体質に気づかず、改めるべき生活習慣を放置してしまうことが問題です。正しい知識を持ったうえで、次に挙げるような生活習慣を心がけ、高血糖や糖尿病を予防しましょう。

●喫煙
 喫煙によってインスリンの分泌力が低下したり、働きが悪くなることから、喫煙を続けていると糖尿病になりやすくなります。タバコは糖尿病だけでなく、生活習慣病をはじめとする多くの病気の原因となります。まず禁煙から始めましょう。

●食事
 1日3食規則正しくとり、栄養バランスを整えましょう。腹八分目を心がけ、食べ過ぎないことが重要です。これらを基本に、「野菜を先に食べる」ようにしてみましょう。
 食物繊維が豊富な野菜を、主食(ごはんなど)や主菜(メインのおかず)よりも先にとると、食後の血糖値の上昇が緩やかになって、少ないインスリンでも血糖値を元に戻しやすくなります。また、よくかんで食べるほうが、血糖値の上昇は緩やかになりますので実践してください。

●運動
 よく歩くことを基本に、筋力を維持できる軽い運動も行いましょう。運動を続けていると、内臓脂肪を減らし、インスリンの働きをよくすることにつながります。筋肉は、食事でとり入れたエネルギーを最も多く消費する器官の一つであるため、筋肉が衰えると、消費エネルギーが減り、内臓脂肪が蓄積して血糖値が上がりやすくなります。
 また、運動時はブドウ糖の筋肉への取り込みが増えるため、血糖値が下がります。そのため食後の運動は、食後高血糖を抑えるのに効果的です。

●睡眠(休養)
 睡眠不足はインスリンの分泌力を低下させ、働きも悪くして、血糖値が上がりやすくなります。十分な睡眠(休養)が大切です。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
西村 理明先生


東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 准教授
1991年東京慈恵会医科大学卒業。97年東京慈恵会医科大学臨床系大学院(内科)修了。1998年Graduate School of Public Health, University of Pittsburgh修了。同校Adjunct Assistant Professor、富士市立中央病院内科医長などを経て、2002年東京慈恵会医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科助手、06年講師、11年より現職。

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