若い世代に増える心筋梗塞-動脈硬化を予防する4つのポイント

30~40代の発症も珍しくない心筋梗塞。予防のポイントは

食事は肉より魚、こまめに動き肥満を解消。最大の原因である動脈硬化を予防する生活習慣で心筋梗塞を防ごう

動脈硬化の若年化で心筋梗塞の若年発症が増えている

 心筋梗塞というと50歳以上の中高年の病気というイメージが強いかもしれませんが、最近は30~40歳代で心筋梗塞を発症する人も珍しくありません。2011年にはサッカー元日本代表の30代の男性が心筋梗塞で急死し、今年5月には40代の女優が心筋梗塞で入院したことは記憶に新しいでしょう。

 心臓は心筋と呼ばれる筋肉からできていて、収縮と拡張をくり返して全身の細胞に血液を送り、酸素や栄養を供給しています。その心臓が働くために必要とする酸素や栄養を送り込んでいるのは、心筋の表面を冠(かんむり)のように取り巻く冠動脈(かんどうみゃく)です。
 冠動脈が動脈硬化や血管のけいれんなどで狭くなって一時的に血流が悪くなり、心筋に血液が十分に供給されなくなった状態を「狭心症」といいます。さらに、冠動脈が何らかの原因で詰まってその先への血流が途絶え、血液が届かなくなった部分の心筋が壊死(えし)する(細胞が死んでしまう)のが「心筋梗塞」です。壊死した部分が大きければ、心臓が収縮できなくなるなどの機能低下が起こり、命の危険があります。

 心筋梗塞や狭心症のように、冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで心臓を動かす血液が不足する病気を、虚血性心疾患と呼んでいます。日本では心臓病で亡くなる人はがんに次いで2番目に多く、なかでも多いのが虚血性心疾患です。
 虚血性心疾患の最大の原因である動脈硬化は加齢とともに進むため、虚血性心疾患は中高年に多く見られます。しかし最近では、若くても動脈硬化を起こしている人が増えており、そのため若い人にも心筋梗塞などの虚血性心疾患が増えているのです。

一見心臓とは無関係に見える症状で発症したり、痛みを感じない場合も

 心筋梗塞の典型的な症状は、激しい胸の痛みや圧迫感、締めつけられるような感じです。これが30分以上も続き、冷や汗を伴います。こんなときは一刻も早く救急車を呼び、冠動脈疾患集中治療室(CCU)のある病院に運ぶ必要があります。狭心症の場合症状はそれほど激しくなく発作も一時的ですが、放っておくと心筋梗塞につながる恐れもあり、できるだけ早く医療機関を受診する必要があります。

 心筋梗塞も狭心症も、胸の痛みではなく、左の肩や腕、みぞおちなどが痛んだり、奥歯がうずく、のどが詰まる、吐き気がするなど、一見心臓とは無関係に見える症状で発症することもあり、これらを見逃さないようにすることが大切です。
 また、高齢者や糖尿病患者は痛みを感じにくくなっていることもあり、息苦しい程度にしか感じないこともあるので注意が必要です。

 ところで、心筋梗塞の約半数には前兆として狭心症がありますが、半数は何の前ぶれもなく突然発症します。
 冠動脈の動脈硬化は、血管壁が傷つくことから始まります。高LDL(悪玉)コレステロールや高血圧、高血糖などによって傷ついた血管の内壁にコレステロールなどの脂質が入り込み、ドロドロの塊(アテローム)を作って血管壁を盛り上げ、内腔を狭くしていきます。そこに、アテロームが壊れて血液のかたまり(血栓)ができると、内腔がさらに狭くなったり、ふさがってしまいます。
 しかも、この状態は必ずしも徐々に進むわけではなく、動脈硬化はそれほど進んでいなくてもアテロームが突然破裂して冠動脈をふさぎ、心筋梗塞を起こすケースが多いことがわかってきました。

 そのため、今は動脈硬化が進行していなくても、動脈硬化を進めやすい体質や生活習慣を持つ人は注意しなくてはいけません。

動脈硬化の危険因子を予防・改善する生活習慣で心筋梗塞を予防

 動脈硬化は血管の老化現象なので、誰もが加齢とともにある程度は進んでいきますが、脂質異常や高血圧、糖尿病、肥満などがあると動脈硬化を加速させ、若いうちから動脈硬化が進む原因となります。これらの危険因子に影響する生活習慣の改善が、心筋梗塞の予防につながります。
 なかでも、心筋梗塞の若年化の背景には、若者の食生活の乱れと運動不足が関係しているとみられています。食事や運動を中心に、次のような生活習慣を心がけましょう。

●食事は肉より魚を多く
 若い人は肉料理を好む人が多く、魚料理は少なくなりがちですが、魚介類を多くとる人は心筋梗塞などの虚血性心疾患を起こすリスクが低いことがわかっています。
 特に青背の魚(いわし、さんま、さば、ぶりなど)に多く含まれる不飽和脂肪酸EPA(エイコサペンタエン酸)には、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らし、動脈硬化を予防する働きがあります。

 一方、肉類や卵、リノール酸(植物油)などに多く含まれる不飽和脂肪酸アラキドン酸は、とり過ぎると動脈硬化やアレルギー性疾患などを引き起こすといわれます。健康な人の血液中の脂肪酸濃度を比較した研究では、アラキドン酸に対するEPAの割合が若年者ではきわめて低く、若年者の食生活が魚より肉に偏りがちであることが明らかでした。
 肉・植物油は控えめに、魚を多めにして、動脈硬化・心筋梗塞を防ぎましょう。

●運動不足を解消、普段の生活でできるだけ体を動かそう
 若い人に「運動不足」が増えていることも、動脈硬化・心筋梗塞の若年化の原因と考えられます。運動不足は肥満をもたらし、肥満は動脈硬化の進行を早めます。
 ウオーキングなどの有酸素運動を中心に、軽い筋力トレーニングを行いましょう。有酸素運動を続けると中性脂肪が減って善玉コレステロールが増え、心肺機能を高めることもできます。筋トレで筋肉量を維持し、筋肉での消費エネルギーを促すことも大切です。
 ウオーキングや筋トレに限らず、家事などでまめに体を使ったり、駅や職場でなるべく階段を使うなど、普段の生活のなかで体をよく動かすようにしましょう。

●家族のためにも禁煙を
 たばこはHDLコレステロールを減らしてLDLコレステロールの酸化を促し、血管壁を傷つけ、動脈硬化を進行させます。家族に受動喫煙させないためにも禁煙しましょう。

●ストレスを回避、または解消しよう
 過剰なストレスは血管を収縮させて血圧を上げ、LDLコレステロールの酸化を促し、動脈硬化を悪化させます。また、ストレスによって冠動脈がけいれんを起こし、心筋梗塞を起こすことがあります。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
島田 和典先生


順天堂大学 大学院医学研究科 循環器内科学 准教授
1989年順天堂大学医学部卒業後、同大学医学部循環器内科学講座入局。2004年より米国エモリー大学医学部留学。06年順天堂大学医学部循環器内科学講座講師、07年准教授、08年より現職。専門は、生活習慣病の予防と治療、動脈硬化症における基礎的・臨床的研究、心臓リハビリテーション。心血管疾患の一次および二次予防に力を注ぐ。日本心臓病学会特別正会員、日本動脈硬化学会評議員、日本心臓リハビリテーション学会評議員ほか、所属学会多数。

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