皮下脂肪、内臓脂肪に続く「第3の脂肪」が怖い4つの理由

心臓、肝臓、筋肉などにたまり、生活習慣病の原因にもなる

太っていてもやせていてもため込んでいるかも。運動すると真っ先に燃やされる脂肪なので、ぜひ運動習慣を

皮下脂肪、内臓脂肪に続く「第3の脂肪」とは

 東アジアと南アジアの約112万人を対象とするコホート研究のデータ解析を基に、BMIと心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)による死亡リスクの関連が検討されました。その結果、東アジア人(日本、韓国、中国、台湾、シンガポール)では、BMI*が25以上の人は基準値(22.5~24.9)の人に比べ、心血管疾患死のリスクが高く、これは欧米人と同様でした。ただ、BMI 17.4以下でも心血管疾患死リスクが高いことがわかり、この点は欧米人と異なっていました(文献1)。
 * BMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)2

 また、WHOの2008年のデータでは、成人でBMI30以上の人は、アメリカの31.8%に対し、日本は4.5%にすぎません。それにもかかわらず、糖尿病の有病率はアメリカで8.0%、日本で7.4%と、日本人は肥っていなくても糖尿病になりやすい傾向があります。また、メタボリックシンドローム(日本基準)の疑いのある人あるいは予備群は、40~74歳男性の2人に1人、女性の5人に1人です。糖尿病だけでなく、高血圧や脂質異常症も、それほど肥っていなくてもリスクが高まる傾向が認められます。

 こうした民族的な差はどうして起こるのでしょうか。一つの理由として、脂肪の中身の差があげられ、特に、皮下脂肪、内臓脂肪に続く「第3の脂肪」に関心が高まっています。

 「第3の脂肪」とはいったい何者でしょう。体の中には、皮下脂肪と内臓脂肪があることは、皆さんご存じだと思います。お尻のあたりがぷっくりしている「洋ナシ型肥満」は皮下脂肪が、おなかがぷっくり出ている「リンゴ型肥満」は内臓脂肪がたまった状態です。
 でも、リンゴ型でも洋ナシ型でもない、そもそもあまり肥っていない人が糖尿病だったり肝機能が悪かったりする、いわゆる「隠れ肥満」の人がいます。

 脂肪はそもそも脂肪細胞にたまります。その代表格が皮下にある脂肪細胞(皮下脂肪)、その次が腹部を覆う腸間膜にある脂肪細胞(内臓脂肪)です。「第3の脂肪」はそれ以外の臓器、例えば心臓、肝臓、筋肉など、今のところ14カ所の臓器にたまると報告されています。脂肪は臓器の周りにたまったり、その臓器の細胞の中にたまったりします。
 研究者によっては、臓器の周りの脂肪組織は内臓脂肪の仲間と考えて、細胞の中にたまったものだけを狭義に「第3の脂肪」と命名している人もいます。ここでは、あまり細かく分けないで、皮下脂肪と内臓脂肪以外の脂肪を「第3の脂肪」と呼ぶことにします。

脂肪の貯蔵タンクは、皮下、内臓、「第3の脂肪」の順?

 食べ過ぎや運動不足などで、消費されずに余ったエネルギーは、まず皮下脂肪としてたくわえられます。皮下脂肪を構成する脂肪細胞は伸縮自在の貯蔵タンクのようなもので、新たな脂肪をたくわえると大きく膨らみます。それでもため込めない場合には、脂肪細胞が分裂して数を増やす、と言われています。
 一生の中で、数を増やすことができるのは、新生児、乳幼児、思春期、女性の妊娠期と言われています。小さいときに肥満だった場合には、成人になっても肥満となる可能性が大きい理由がここにあります。

 一般的にやせている人に比べて太っている人には、皮下脂肪細胞の数が多いので、より多くの脂肪をため込むことができます。相撲の力士は、まるまると太っていますが、脂肪のほとんどが皮下脂肪です。内臓脂肪は多くないため、意外にも高血圧や脂質異常症、糖尿病は力士には少ないのです。一方、隠れ肥満の人は、皮下脂肪が少ないので肥満とは見えないのに、内臓脂肪や「第3の脂肪」がたまっているので、動脈硬化のリスクが高くなります。

 どのような因子が「皮下脂肪」、「内臓脂肪」、「第3の脂肪」への振り分けを決めているのか、まだはっきりわかっていませんが、日本人は皮下脂肪にため込む量が欧米人よりも少なく、内臓脂肪や「第3の脂肪」に流れ込みやすいと考えられています。

さまざまな臓器にたまって体をむしばむ「第3の脂肪」

 内臓脂肪からは、さまざまな物質が分泌されており、「アディポサイトカイン」と呼ばれています。なかでもTNF-α(ティーエヌエフ-アルファ)と呼ばれる物質は、体に炎症を起こし、糖尿病や動脈硬化の引き金になります。レプチンという本来は食欲を抑えてくれるホルモンも、出過ぎると脳が反応しなくなり、食欲が抑えられなくなります。これら内臓脂肪からの悪い影響に加え、臓器のそばにある「第3の脂肪」は、さらにその臓器に局所的なダメージを与えることがわかってきました。

●心臓にたまると不整脈を起こすことも
 そもそも心臓の周りの脂肪は、アディポネクチンという良いホルモンを出して、血管を拡張させることが知られていました。ところが脂肪がある程度の量を超えると、この良いホルモンが減ってしまい、結果として血管を収縮させてしまうのです。また、TNF-αを分泌してマクロファージという炎症細胞を血管壁に呼び込み、血管の炎症を起こすことがわかってきました。

 心臓の周りの脂肪が多いと、冠動脈の石灰化を起こして血管を硬くします。また心房細動という不整脈も起こりやすくなります。「第3の脂肪」は、心臓の周りだけでなく、心筋細胞の中までため込まれます。心筋細胞の中まで脂肪が入り込むと、心筋細胞の働きが悪くなり、心臓の収縮力が低下するとも言われています。

●肝臓にたまると非アルコール性脂肪肝になりやすい
 心臓と同じような現象が、肝臓にも起こります。皆さんがよくご存じの脂肪肝です。GOT(AST)よりもGPT(ALT)が高い、γGTPが高いなどの肝機能異常を指摘される人は、要注意です。γGTPは飲酒者では値が高いことが知られていますが、実はアルコールを全く飲まなくても脂肪肝となり、値が上がってくることがあります。これを非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルド)と呼んでいます。

 ちょっと寄り道ですが、健康診断の肝機能の正常値は、男女で同じことが多いのですが、実は、女性の基準値は男性よりもかなり低いことがわかっています。基準値というのは、多数の健康な人の値を分析し、平均値および標準偏差で決める値のことです。基準値は年齢とともに上昇し、女性の場合は閉経後にさらに上昇することがわかっています。閉経前の女性の肝機能の基準値は男性の6割程度ですので、男性基準の正常値以下だから大丈夫、ということではありません。今までの値よりも上がってきている場合は、たとえ正常値内でも要注意です。

 肥満の人はもちろん、肥満でなくても肝機能が異常な場合は、肝臓に「第3の脂肪」がたまり、脂肪肝になっている可能性が高いのです。初期の場合は、後戻りが可能ですが、肝臓に炎症が続くと、非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)となり、肝硬変や肝臓がんに進行する可能性があります。

●膵臓にたまると糖尿病になりやすい
 膵臓には消化酵素を分泌する腺房細胞とインスリンを出すβ細胞などがあります。膵臓では、脂肪は腺房細胞やβ細胞の周り、そしてβ細胞の中まで入り込んでたまります。β細胞の中まで脂肪がたまると、インスリンの分泌が悪くなり、また細胞の自滅を引き起こす、と言われています。インスリン分泌が悪くなると糖尿病になりやすくなります。
 日本人があまり肥っていないにもかかわらず糖尿病になりやすい理由として、皮下にためられない脂肪が膵臓のβ細胞に入り込み、β細胞の障害を引き起こすからだとも考えられています。

●筋肉にたまっても糖尿病になりやすい
 筋肉はインスリンの働きによって、食後に血中に出た糖質を取り込み、筋肉に蓄えます。運動をするとインスリンの働きが良くなるため血糖値が下がります。筋肉細胞の中に脂肪が入り込むと、このインスリンの効き目が悪くなり(インスリン抵抗性と言う)、糖尿病になりやすくなります。

 そのほか、腎臓に脂肪がついた場合は、高血圧や慢性腎臓病を起こしやすくなると言われています。このように、脂肪細胞以外に取りついた「第3の脂肪」は、いろいろなところで体をむしばんでいきます。

第3の脂肪は運動などで落としやすい

 太っている人もやせている人も安心できない「第3の脂肪」ですが、内臓脂肪と同様に生活習慣の改善で比較的減らしやすいことがわかっています。運動をすると初めに燃やされるのが「第3の脂肪」で、数時間の運動で効果がみられると言われます。

 やせているからと、これまで運動に関心のなかった人も、これからはぜひ、運動を習慣化してください。まずは仕事や家事など普段の生活のなかで、こまめに体を動かすことから始めましょう。できるだけ歩くこと、特に上り階段には果敢に挑戦してみてください。「新しい朝が来た・・・♪」で始まるラジオ体操は、体だけでなく心の準備体操としても、とても気持ちが良いのでおすすめです。

 「第3の脂肪」をためない自分らしい方法をぜひ編み出してください。

(文献1) Yu C et al,Association between body mass index and cardiovascular disease mortality in east Asians and south Asians: pooled analysis of prospective data from the Asia Cohort Consortium.BMJ2013;347:f5446.

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
荒木 葉子先生


産業医・内科医、荒木労働衛生コンサルタント事務所所長
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。2008~2011年3月東京医科歯科大学女性研究者支援室特任教授。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。

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