脚の冷えや痛み、しびれは動脈硬化が原因かも-最悪は脚の切断に

早期発見が足の切断や心筋梗塞、脳卒中の予防につながる

脚に動脈硬化があれば脳や心臓にも! 脚の動脈硬化の早期発見には、手足の血圧比を測るABI検査が有効

脚が冷たい、しびれる、歩くと脚が痛いなどは要注意

 末梢動脈疾患(PAD:Peripheral Arterial Disease)は、脚の動脈が狭くなったり詰まったりして血液が流れにくくなる病気で、閉塞性動脈硬化症とも呼ばれます。喫煙や高血圧、糖尿病などが動脈硬化の原因となります。ごく初期には症状はなく、動脈硬化が進むにつれ次のような症状が現れます。

●PADの重症度別の主な症状(フォンテイン分類)
 I度 無症状、または足が冷たい、足がしびれる
 II度 少し歩くと足が痛くなり、歩けなくなるが、
     しばらく休むと、また歩けるようになる(間歇性跛行)
 III度 じっとしていても足が痛む
 IV度 足の皮膚がただれたり(潰瘍)、壊死したりする


 動脈硬化症は全身の病気ですが、これらの症状は脚の片側だけに起こることもあり、冷たさは左右の脚を重ね合わせるとよくわかります。ふくらはぎや太ももの片方だけが細くなったり、脚の毛が抜けることもあります。階段や坂道を上るときなどに「脚が重く、脚を出しづらい」といった症状が出やすくなります。また血行障害のために水虫にかかりやすく、治りにくくなることも知られています。

 PADの典型的な症状である間歇性跛行(かんけつせいはこう)がなぜ起きるかというと、歩くことで脚の筋肉はより多くの酸素を必要としますが、血液が流れにくいために酸素が十分に供給できず、痛みが出るのです。ここでひと休みすれば、脚の酸素の必要量も減るため、痛みはなくなるというわけです。脚が痛んだとき、前かがみになったりして姿勢を変えても、PADの場合痛みは変わりません。これで痛みが和らぐ場合は、腰部脊柱管狭窄症などほかの異常が考えられます。

 ただ、脚の冷えや痛みといった症状は「年のせい」で片づけられてしまいがちです。このため、現在病気が明らかになった患者さんが全国に80~100万人いるのに対して、“隠れPAD”患者が300~400万人もいるのではないかと言われています。

脚の動脈硬化が進んでいれば、全身の動脈硬化も進んでいる

 PADの危険因子には加齢(65歳以上)、喫煙、糖尿病に加え、高血圧や肥満、運動不足、不規則な生活などがあげられ、男性に多いことが特徴です。
 このうち肥満や運動不足などは歩くことで改善できますが、「自動車通勤でデスクワーク、休日はごろ寝」といったほとんど歩かない人は、PADのリスクが高いうえに、歩かない分脚の痛みなどの症状に気づくチャンスを逃して重症化させやすいというリスクも併せもっているといえます。

 PADの怖さは、単に脚の不快な症状にとどまらないところにあります。安静時でも血流が不足すると足先に皮膚の潰瘍や組織が死んでしまう壊死(えし)を起こし、最悪の場合足の切断に至ることもあります。このように重症化すると、血流不足は酸素不足のほかに栄養や免疫力が低下している状態でもあり、けがが治りにくくなります。

 また糖尿病を伴ったPADでは、糖尿病神経障害のためにけがや傷口からの感染症などに気づきにくくなるため、いっそう注意を払う必要があります。

 さらに、脚の動脈硬化が進んでいるということは、全身の動脈硬化も進んでいると考えられ、心臓や脳では心筋梗塞や脳卒中の危険性が高まることも忘れてはいけません。
 PADがあると、心筋梗塞や脳卒中のリスクは2倍前後まで高まり、たとえ無症状であっても、症状が出ている場合と同様に危険であることがわかっています。
 また、日本人の死亡原因の1位はがんですが、これらの動脈硬化性疾患を合わせると、がんとほぼ同率となっています。PADの患者さんの5年生存率は大腸がんや乳がんと同じと言われています。PADは「たかだか脚の病気ではない」のです。

腕に比べて足の血圧が低い。ABI値0.99以下は「PADの疑い」

 PADの早期発見には、ABI(Ankle Brachial pressure Index)検査が有効です。これは、腕の血圧と足の血圧の比を計算してPADの可能性と重症度を判断する検査です。左右の上腕と両足首の4カ所の血圧を同時に測り、「足首の血圧(最大血圧)÷上腕の血圧(最大血圧)」でABI値を求めます。
 健康な人では腕より足の血圧が高くなりますが、足のほうが低い場合はPADが疑われます。脚の血流が十分でないために、足首の血圧が低めになっていると考えられるのです。ABI値が0.9以下は異常、0.91~0.99は境界値と判断されます。

 ABI検査は服を着たまま5分くらいで終わり、痛みもありません。測定装置もかなり普及してきたようです。前述したさまざまな症状に1つでも当てはまる人はもちろん、特に自覚症状はなくても「65歳以上」「喫煙」「糖尿病」の三大リスクに1つでも当てはまる人は、医療機関でABI値を測ってもらってはいかがでしょうか。

 このABI検査を使ってJR仙台病院の市来正隆病院長らは、PADの危険因子を複数持つ人が多いと考えられるタクシーの乗務員560人を対象にPADの有無などを調べました。その結果、糖尿病が106名(19%)、喫煙歴は469人(84%)と危険因子を持つ人が多く見られました。「PADは有り」が4.3%、「PADの疑い」が11.4%、「PADは無いが動脈硬化はある」が28.2%で、平均年齢が57歳であったにもかかわらず、何と43.9%という高い確率で動脈硬化症が発見されました。

 PADの予防には、禁煙をはじめ、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの治療はきちんと受けてリスクを少しでも減らすことが大切です。早期発見のためには、「歩かない」と症状の発見が遅れるのでしっかり歩く習慣が重要です。しかし糖尿病があるとPADの進行が速く、それに気づかず運動を続けることで、靴ずれや水虫などからPADを悪化させてしまうことがあるため注意が必要です。
 「動脈硬化は脚にも来る」ため、生活習慣病のある人は定期的にフットチェックを行い適切な運動習慣を身につけることが、動脈硬化の予防と早期発見に大切です。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
市来 正隆先生


JR仙台病院 病院長・血管診療センター長
1979年東北大学医学部医学科卒業。山形県長井市総合病院、東北大学医学部附属病院第二外科を経て、90年よりJR仙台病院に勤務。94年外科部長、2000年副院長、09年より現職。医学博士、日本外科学会指導医、日本脈管学会認定脈管専門医、麻酔標榜医。日本血管外科学会評議員、日本脈管学会監事、日本静脈学会理事、日本交通医学会理事などを務める。

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