人工透析が必要になる病気とは?-5つの腎機能低下リスク

機能が失われた腎臓に代わって血液をろ過する腎代替療法

腎機能は低下しても自覚症状がなく、進行すると元に戻らない。早期発見・早期治療のため定期的な健診を

透析を受ける人が増え続けている

 日本では人工透析(透析療法)を受ける人が増え続けています。1990年には約10万人だったのが、2000年には約20万人になり、現在は30万人にものぼります(日本透析医学会調べ)。そのため最近は、人工透析を専門に行う病院をよく見かけるようになりました。

 透析療法とは、腎臓の機能がほとんど失われる末期腎不全になったときに、腎臓の働きを人工的に補う治療法です。
 かつて透析が必要になる病気で最も多かったのは、慢性糸球体(しきゅうたい)腎炎でしたが、現在は糖尿病の合併症の腎臓病(糖尿病性腎症)が最も多く、半数近くを占めています。高血圧による腎硬化症が原因となっているケースも増え続けています。

 腎臓は一旦機能が失われると元に戻すことができないため、末期腎不全になると腎移植か透析を行うしかありません。腎移植を受けることができる患者さんは多くありませんから、ほとんどの方は透析を受けることになります。

 ところで、慢性糸球体腎炎は腎臓そのものの病気であり、糖尿病性腎症や腎硬化症は腎臓以外の原因で起こります。最近では、このように原因は異なっても腎機能が慢性的に低下する病気を総称して「慢性腎臓病(CKD)」と呼ぶようになっています。
 日本では現在CKDの潜在患者は成人の8人に1人にも及ぶと推計され、透析療法に至らないよう早期発見・早期治療が求められます。

失った腎臓の機能を代替する透析療法

 腎臓は、体内を流れる血液をろ過し、必要な成分を再吸収して、不要な老廃物や有害物質、水分を尿として体外に排泄する働きをしています。このほか、体内の水分量やナトリウム、カリウムなどの電解質濃度の調節、血圧調節なども行う大変重要な臓器です。

 その腎臓の機能が低下してほとんど働かなくなる状態になると、本来なら尿として排泄される老廃物や毒素が血液中にたまり、さまざまな症状が出ます。尿毒症といって、食欲の低下やむくみ、倦怠(けんたい)感、神経症状、貧血、吐き気、呼吸困難、心不全など、全身にさまざまな症状があらわれ、放置すれば死に至ります。
 この段階になると食事療法や薬物療法では治療できず、腎臓に代わって老廃物などを取り除く腎代替療法(透析療法や腎移植)が必要になります。

 透析療法には血液透析と腹膜透析の2つのタイプがあり、前者が多く行われています。
●血液透析
 血液を体外にあるダイアライザーという透析装置に送って余分な水分や老廃物を取り除き、きれいになった血液を体内に戻します。手首近くの動脈と静脈をつないでシャントと呼ばれる太い血管をつくり、ここから血液の出し入れを行います。治療にかかる時間は1回約4~5時間で、週に3回通院することが必要。

●腹膜透析
 自分のおなかの腹膜を透析膜として利用する方法です。おなかに埋め込んだカテーテルから透析液を注入し、血液中の余分な水分や老廃物がしみ出た透析液を体外に取り出します。透析液の交換は1回約30分程度かかり、1日4回必要です。また、夜だけ機械を使って腹膜透析を行うこともできます。自宅や勤務先で行えるため、通院は月に1~2回程度ですみますが、腹膜炎を起こしやすくカテーテルの衛生管理に注意が必要。腹膜のろ過機能が低下したら(5~10年)、血液透析に切り替えます。

 透析療法を行うと尿毒症の症状がなくなりますが、透析で腎臓のすべての機能を補うことはできません。たんぱく質やカリウム、塩分などを制限する食事療法や血圧管理などの生活上の管理が必要ですし、通院・治療に時間をとられるなど、日常生活にかなりの制約を受けることになります。

 さらに、透析療法には1人年間約500万円の医療費がかかり、しかも生涯にわたって続ける必要があるため、国の財政負担は莫大なものになっています(自己負担は月1~2万円程度)。

自覚症状がない腎機能低下の早期発見には、定期的に健康診断を

 腎機能が低下しても初期には自覚症状がなく、症状が出たときにはかなり機能低下が進んでいることが少なくありません。ですから、定期的に健康診断を受け、症状がないうちに発見して治療を始めることが大切なのです。
 早期発見には尿たんぱく検査や血清クレアチニン検査が有効です。もしも検査値の異常を指摘されたら、自覚症状がなくても放置したりせず、腎臓専門医を受診しましょう。

 また、以下はCKDのリスクを高めます。一つでも当てはまる人は特に注意しましょう。
・加齢
・糖尿病
・高血圧
・肥満・メタボリックシンドローム
・喫煙、遺伝など
 加齢や生活習慣病がCKDの大きな原因となっています。原因となる病気の治療とともに、生活習慣の改善を行うことが大切です。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
飯野 靖彦先生


あだち入谷舎人クリニック院長
日本医科大学名誉教授
1973年東京医科歯科大学医学部卒業後、自治医科大学、米国国立衛生研究所、ハーバード大学、東京医科歯科大学などを経て、89年日本医科大学第二内科助教授、98年教授、2013年名誉教授に。同年あだち入谷舎人クリニック院長に就任。湘南医療大学学部長予定。専門は内科学、腎臓病学、透析療法、腎移植、高血圧など。日本内科学会認定医、日本透析医学会認定専門医、日本腎臓学会認定専門医。一般書に『専門医が答えるQ&A腎臓病』(主婦の友社)、『世界で一番やさしい腎臓病』(エクスナレッジ)など。

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