貧血のカギはヘモグロビン-鉄欠乏性貧血は女性の病気の疑いあり

一般健診では赤血球と赤血球に含まれるヘモグロビンを調べる

日本人女性に多い鉄欠乏性貧血。健診で貧血を指摘されたら、自覚症状がなくても血清鉄などの再検査を

健康診断の貧血の検査項目ではヘモグロビンが重要

 貧血とは血液中の赤血球やヘモグロビンが減少した状態をいい、血液検査で調べることができます。健康診断における貧血検査の項目は、労働安全衛生規則に基づく一般健診ではヘモグロビン(血色素:Hb)と赤血球数の2つです。通常人間ドックでは、この2つに白血球数、血小板数、ヘマトクリット値、赤血球指数といわれるMCV、MCH、MCHCを加えた8項目(全血球算定CBC:complete blood cells)を測定します(表)。
 一般に大きな病院や検査機関などでは、自動血球分析装置という器械を用いて8項目を同時に測定しています。

 ヘモグロビンと赤血球数は比例関係を持つことが多いのですが、特にヘモグロビンの数値は重要です。ヘモグロビンは赤血球に含まれる成分で、肺で酸素を受け取って体中の組織に運ぶ重要な役割をしています。
 そのためヘモグロビン濃度が低下すると酸素を運ぶ効率が下がり、体中の組織が酸素不足の状態になって各組織にある細胞の活動性が低下します。その結果、だるさや労作時の息切れなどの症状が現れます。

 ヘモグロビンの基準値は女性で11.2~15.2g/dL、男性で13.6~18.3g/dLと、男女で異なります(健診機関や病院により基準値は少し異なります)。女性で11未満は貧血と考えられ、10未満では鉄剤内服などの治療が考慮されます。

日本人女性の10%弱が鉄欠乏性貧血

 貧血の中で最も頻度が高いのが、体内の鉄分不足によって生じる鉄欠乏性貧血で、鉄を成分とするヘモグロビンが十分作られないことで起こります。鉄欠乏性貧血は女性に多いのが特徴で、日本人の女性の10%弱にみられ、貧血のない鉄欠乏状態なら約40%にも達するという調査報告もあります1)。

 血液中の鉄分である血清鉄が低いと鉄欠乏性貧血が疑われますが、血清鉄は健診項目には含まれていないことが多く、8項目中のMCVが80未満の低値(基準値は83~101fL)の場合に鉄欠乏性貧血を疑います。
 MCV(mean corpuscular volume:赤血球平均容積)は赤血球の大きさを示す数値で、鉄欠乏があると赤血球は小さくなるため(小球性)、低値を示します。MCVが低値の場合、二次検査で血清鉄(Fe)、フェリチン、総鉄結合能(TIBC)などを測定して貧血があるか確認します。

鉄欠乏性貧血でも無症状のことが多いが、無性に氷を食べたくなることも

 血液検査で鉄欠乏性貧血が明らかであっても、無症状のこともしばしばあります。ヘモグロビンが8~9前後の重度の貧血でも、長期間続いている場合は、疲れ易さ(易疲労感)や階段の上り下りなどの際の息切れ(労作時息切れ)などの自覚症状に乏しく、鉄剤の内服治療で貧血が改善して初めてそれらの症状があったことに気づく人も多くみられます。

 鉄欠乏性貧血では、異食症(pica)といって通常は食べないようなものを摂取しようとする行為がみられることがありますが、特に氷を食べたくなる氷食症(pagophagia)は、日本人の鉄欠乏性貧血の15~20%にみられるといわれています。
 氷食症は、鉄欠乏性貧血の軽快とともにみられなくなるものの、鉄欠乏の再発に伴って再び出現することも多く、再治療を始める目安になることもあります。

女性の鉄欠乏性貧血は過多月経や子宮筋腫が原因のことが多い

 鉄欠乏性貧血の原因としては、女性では生理の出血量が異常に多い過多月経や子宮筋腫による慢性的な出血が大部分を占めますので、まず婦人科を受診して出血を起こす病気がないか精査を受けることが大切です。
 男性や閉経後の女性では消化管からの出血がほとんどで、特に高齢者では、貧血をきっかけに胃がんや大腸がんが発見されることが少なくありません。痔から出血していたり、心臓の病気や脳血管障害のための抗血栓療法で出血傾向がみられ、消化管から出血している場合もあります。

 出血などのはっきりした原因がない場合、鉄欠乏性貧血の原因は、鉄摂取が不足しているか腸管での鉄の吸収が悪い場合がほとんどです。若い女性では過剰なダイエットによる鉄の摂取不足も多くみられます。
 成人の体内にある鉄の総量は男性では約5g、女性では約2gで、その3分の2がヘモグロビンの中に含まれています。約4分の1はフェリチンと呼ばれる貯蔵鉄として存在し、鉄が少なくなったときに使われます。

 鉄の主な供給源は肉や魚などの食べ物で、十二指腸や小腸で吸収されます。健康な人では食べ物に含まれる鉄の3~15%が吸収されます(逆にいうと摂取した鉄の85~97%は吸収されないことになります)が、個人差があります。
 1日に失われる鉄は男性で平均1mg、女性では平均2mgとされますので、1日に少なくとも10~20mgの鉄の摂取が必要とされています。

【参考文献】
1)内田立身. 日本人女性の貧血:最近の動向とその成因. 臨床血液 45:1085-1089,2004

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
石川 隆先生


丸の内クリニック理事長・院長
1981年東京大学医学部医学科卒。1983年東京大学医学部附属病院、都立駒込病院などで臨床研修の後、88年東大病院第三内科文部教官助手。90年カルフォルニア大学サンフランシスコ校ポストドクトラルフェロー。94年に帰国し、東大病院第三内科。99年東京大学保健センター講師。2011年丸の内クリニック理事長・院長に就任。専門は内科学・消化器病学・肝臓病学・健康管理など。著書に『生理学の基本がわかる事典』(監修)(西東社)、『わかっちゃう 図解 ウイルス』(監修)(新紀元社)。
丸の内クリニックのHP:http://www.marunouchi-c.org/

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