笑うことで難病を克服したジャーナリスト-その3つのポイント

ユーモアやジョークに大笑いして病気を早く治す

笑いは免疫力をアップさせます。アメリカでは、1980年代から医療における笑いの効用が研究されています。

1人のジャーナリストが「笑い」で難病を克服

 「笑い」は免疫力をアップさせます。実際に、漫才や喜劇を見て、おなかの底から大笑いをした後には、ウイルスやがんをやっつけるナチュラルキラー(NK)細胞という免疫細胞の働きが大幅に活性化したという国内からの報告もあります。

 アメリカでは1982年に、医師や心理学者を中心に「笑い療法学会」が発足されて以来、医療における「笑い」の効用が本格的に研究されています。学会発足に際して開かれたシンポジウムでは、以下のことが確認されました。

 (1) 大笑いによってリラックスすると、自律神経の働きが安定する。

 (2) 強力な鎮痛作用をもつエンドルフィン(モルヒネの6倍以上の鎮痛作用をもつ)という神経伝達物質が増加し、痛みを忘れてしまう。

 (3) 情動をつかさどる右脳が活性化され、ストレスで左脳を使う人にとって、リラックス効果があると考えられる。

 そして、この学会の発足に大きな影響を与えたのが、ノーマン・カズンズという1人のジャーナリストの「笑い」によって難病を克服した体験だったのです。

毎日笑い続けて半年で、仕事に復帰

 30年以上にわたり、アメリカ有数の書評誌「サタディ・レビュー」の編集長を務めていたノーマンは、1964年に強直性脊椎炎(注)という難病にかかり、医師からはほとんど治る見込みはないと伝えられました。

 そこで彼は、さまざまな文献や資料から集めた情報をもとに、自身で病気を治すための戦略を立てます。それが、「笑い療法」とビタミンCの大量投与でした。お笑い番組やコメディのフィルムを病室に持ち込んでは、映写機を回して観て大笑いする毎日。ちなみに、ノーマンが笑いの癒し効果を求めて観た映画フィルムは、おもにマルクス兄弟の主演する喜劇だったということです。

 笑いの効果はてきめんで、10分間腹を抱えて笑うと、少なくとも2時間は痛みを感じずに眠れました。そして、1週間ほどで症状が改善し始め、半年でもとの編集長に復帰してしまいました。非常にまれな例ではありますが、笑いで難病を克服してしまったのです。彼は、その経過をイギリスの医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に投稿。その後、カリフォルニア医科大学の教授に就任し、笑いの効用を研究するチームをつくりました。

明るく笑いのある病室なら、自然治癒力もアップ

 日本にも、ストレス解消を目的として、看護師ら職員に「笑いが取れる」話術の指導を実施しようという医療機関があります。

 暗くて陰気で静かな病室は、もう時代遅れです。ユーモアやジョーク、しゃれを連発する医師や看護師がいて、患者さんはいつも楽しそう。そんな雰囲気の病院が自然治癒力をアップさせてくれそうです。

(注)自己免疫疾患の1つで、脊椎(背骨)が固まり、硬直してしまう病気。背骨や股関節など靭帯のある部分が炎症を起こし、強い痛みをともなう。

(「免疫力がアップする50の法則」松下 祥監修、法研より)

松下 祥


埼玉医科大学医学部 教授 
九州大学医学部卒業。日本では珍しいライター病の症例との出合いを契機に遺伝学・免疫学の研究者に。熊本大学大学院助教授を経て2001年より現職。アレルギー、自己免疫などが対象の新世代ワクチンの開発に詳しい。

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