温泉は海・山・森と効能が違う-体調にあわせた温泉の選び方

気持ちいいだけじゃない。泉質を知って、体質改善!

海、山、森。温泉は所在地によって効能が異なります。
標高、湿度などの環境も効能に含まれるのです。

温泉がもつ4つの効能

 疲労回復や身心のリラックスを兼ねて、週末に、温泉旅行を計画している方も多いことでしょう。温泉につかるとリフレッシュできて、より健康になった気がしますね。これは、温泉がもつ4つの効能、「温熱」「水圧」「浮力」「含有成分」によるものです。

 「温熱」は、お湯の熱が血管を拡張させて血液の循環を促します。「水圧」は、マッサージの効果で血行を促進します。「浮力」は、お湯の中で体重が10分の1になり、足腰にかかる負担を軽減させてくれます。これらは、家庭のお風呂でも体験できる効能ですが、温泉では、その効能がさらに高まるのです。

 温泉の最大の効能は“温まること”=高い温熱効果です。温泉に入ると体の芯から温まるのは、温泉に含まれるミネラル成分が皮脂と結びつき、体の表面に被膜をつくるからです。そのため、温熱効果が持続して、長時間にわたって体がポカポカします。腰痛、肩こり、婦人病などは、体を温めることによって症状が改善するものもたくさんあるので、こうした持病のある人は積極的に温泉を利用してみてはいかがでしょうか。

温泉も楽しめます

 温泉とはそもそも、源泉に温泉法で定められた物質が、規定量以上に含まれているもの、あるいは成分は規定に満たないけれど、温度が25度以上あるものをいいます。温泉を飲んで、その薬効を取り入れるという楽しみ方もあります。飲泉許可がある場合は、体質に合わない泉質もあるので、注意事項をよく読んでから、実際に飲んでみるのもいいでしょう。

 温泉の泉質に、塩化物泉、炭酸水素塩泉と記載されている場合は、空腹時に飲むと胃液の分泌が高まり、食欲が刺激されることから、食前に飲むのが適しています。一方、鉄泉や放射能泉は、食後が適しています。鉄泉は、空腹時に飲むと胃腸の粘膜を刺激して胃腸障害を起こしやすくなるからです。また放射能泉は、食後の方が神経系を安定させる作用のあるラドンをより吸収するためです。ただし、いずれも天然の湧き水なので、持ち帰った場合は翌日までに飲み切るようにしましょう。

海、山、森。それぞれの温泉の特徴は?

 全国各地には、さまざまな効能をもつ温泉がありますが、海、山、森と、存在する場所によっても、その効果は異なります。それぞれの特徴をあげてみましょう。

 海にある温泉は、疲れた心と体を癒すのに効果的です。海辺はマイナスイオンの空気に包まれ、海水のヨード、塩分などが空気中に溶け出しています。この空気を吸い込んだり、からだに浴びたりすることで、自律神経のうち、副交感神経の働きが活発になり、身心がリラックスして、疲労回復やストレス解消に効果的です。また、適度に湿気を含む海の空気は、呼吸器の弱い人にも効果的です。ただし、この湿度は、腰痛や関節痛のある人には向いていません。

 山にある温泉は、今よりもっと元気になりたいという人に向いています。標高800m以上ある山の上の温泉は、平地に比べて空気が薄く、気圧が減少します。そのため、血行が促進され、新陳代謝が活発になります。自律神経のうち、交感神経が活発に働くので、元気度をアップさせてくれます。一方、イライラしているときには、気分が高揚しすぎてしまうため、避けたほうがいいでしょう。また、心臓に負担がかかるため、高血圧の人も向いていません。

 森にある温泉は、健康な人から病弱な人まで、比較的どんな人にも向いています。森林内の環境は、気温、風などの気象が比較的穏やかで静かです。しかも、フィトンチッドと呼ばれる樹木が発散する成分や香りには、気分を安定させるアロマテラピー効果があることから、身心ともにリラックスできるのです。

 このように、泉質による効能だけでなく、「温泉旅行をする」という行為そのものも、温泉の効能に含まれているのです。つまり、広い意味では温泉を取り巻く環境のすべて--標高、気温、湿度、風や音、新鮮な空気、宿泊地でのおいしい食事--が温泉の効能といえます。「効能」と「場所」、この二つを念頭におきながら旅先を決めれば、よりいっそうの効果が期待できるでしょう。

(「Just Health」、法研より)

【取材協力】
植田理彦氏


帝国ホテルタワー内幸町診療所 医学博士
1927年東京生まれ、1950年東京大学卒業後、同大学物療内科にて温泉医学を学ぶ。温泉療法専門医、医学博士、温泉医学の解説と普及に努め、わが国の温泉療養地の指導に当たる。温泉、入浴に関わる著書多数。

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