ピロリ菌やがんから胃を守る-こんな不調があったら要注意?

日常的な胃の不調を解決するセルフケア

ピロリ菌の除菌と食事、生活の見直しが胃の調子をととのえる

あなたの胃は大丈夫?

 食欲の秋なのに、なんとなく胃の調子がすぐれず「食べたいのに食べられない」と憂うつな気分になっている人はいませんか?
 「日本人は胃が弱い」とはよくいわれます。がんの部位別死亡率をみると、最近は肺がんにトップの座を譲ったものの、長い間、胃がんが第1位に君臨していましたし、罹患率に限れば、いまでも胃がんがトップです。

 もちろん、胃の不調がすべてがんにつながるわけではありません。胃炎や胃潰瘍(いかいよう)かもしれませんし、とくに治療を必要としない場合もあるでしょう。実際、病院へ行くほどの症状でもなく、市販薬で対処している人も多いようで、薬局に行くと胃薬の種類の多さに驚かされます。

 しかし、市販薬でいっとき症状が治まっても、すぐにくり返す人も多いのではないでしょうか。そんな人は胃の不調の原因が何なのか、一度きちんと調べておいたほうがよいでしょう。もし、次のような症状が続く場合は、専門医に相談し、検査を受けることをおすすめします。

○胃がもたれる
○胃がムカムカする
○胸やけがする
○頻繁に胃が痛む
○食欲がない
○胃やおなかに膨満感がある
○酸っぱいゲップが出る
○ものを飲むとつかえる感じがする
○おなかが張っておならが臭い
○便秘と下痢を繰り返している など

胃とピロリ菌の関係

 かつては、胃炎や胃潰瘍があると、食事やストレスとの関係が指摘されましたが、最近は、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)との関連が第一に考えられるようになりました。ピロリ菌は日常的な胃の不調の原因にもなっていて、胃がんとの関係も深いのではないかと強く疑われています。

 ピロリ菌は人の胃の粘膜に何十年と棲みつく細菌で、汚染された水などを介して子どもの頃に感染するといわれています。そのため、衛生状態が悪く、上下水道の整備が進んでいない国では、感染者が少なくありません。日本でも、半世紀ほど前までは衛生状態が悪かったため、50歳以上の人の8割はピロリ菌に感染しているといわれています。

 ピロリ菌は胃の粘膜を傷つけて炎症をおこし、炎症が続くと慢性胃炎になります。胃炎の状態が長期に及ぶと、胃の粘膜は次第に萎縮し、胃酸や粘液の分泌が少なくなり、胃の機能が低下します。この状態を萎縮性胃炎といいますが、これは胃の老化のようなもので、日本人の胃炎で最も多くみられます。

 萎縮性胃炎になっても胃・十二指腸潰瘍や胃がんになる人はわずかですが、これまでの研究で、胃・十二指腸潰瘍の患者さんの約90%がピロリ菌に感染していたことがわかっています。また、ピロリ菌の駆除(除菌)によって、1年以内に胃潰瘍を再発する割合は2.0~2.6%に抑えられていました。

 胃がんの発生については、ピロリ菌との関係を明らかにする確かなデータはありません。しかし、早期胃がんの治療後、ピロリ菌を除菌したグループとしなかったグループの胃がんの再発率を調べた結果、除菌したグループの再発率は3分の1に抑えられたという報告もあります。これは、胃がんの発生とピロリ菌の関係を強く疑わせる例です。

 現在、ピロリ菌の検査と除菌治療は、胃潰瘍あるいは十二指腸潰瘍と診断された患者さんに限り、健康保険が適用されます。したがって、慢性胃炎の治療や潰瘍・がんの予防のために除菌する場合は全額自己負担となり、1万数千円から2万円ほどの費用がかかります。
 また、除菌は胃酸の分泌を抑える薬と2種類の抗生物質を7日間飲むので体にも負担がかかります。今のところ、必ず胃がんの予防になるともいえないので、除菌の要不要は専門医と十分に相談するとよいでしょう。

毎日の食事と生活の注意で胃を守ろう

 胃炎や胃潰瘍とピロリ菌との関係が明らかになったとはいえ、胃の不調を改善するには、やはり毎日の食事と生活の見直しが不可欠です。次のようなことを心がけ、あなたの胃を守りましょう。

●寝る前に食事をしない。朝食を抜かない
●脂っこいものは胃の中に長く留まるので食べすぎない
●激辛の香辛料、塩辛いものや味の濃いもの、コーヒーなどは胃酸の分泌を促すため、空腹時は避け、とりすぎに注意
●野菜、果物を多くとる
●空腹時のアルコールは避け、飲みすぎ注意。アルコール度の高いものは薄めて
●タバコはやめる。それが無理なら減らす
●睡眠と休養は十分にとり、規則的な生活をする
●適度の運動をし、ストレスの解消を図る

(「へるすあっぷ21」法研より)

【監修】
佐藤 健先生


平塚胃腸病院副院長
日本医科大学卒業後、同大学外科学教室で研鑽。1987年より平塚胃腸病院勤務、外科手術と胃・大腸内視鏡の検査と治療に従事。2007年より現職。医学博士。日本消化器内視鏡学会専門医、日本大腸肛門病学会専門医、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会認定医。

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