口臭や歯のくすみ大丈夫? 加齢とともに口内環境は悪化する

加齢とともに唾液量が減って口内環境が悪化する

唾液分泌を促すこと、自分に合ったオーラルケアを行うことで口内環境を整えましょう

加齢とともに口の中の不快感や歯のくすみを感じる人が増えてくる

 「平成17年歯科疾患実態調査」(厚生労働省:6年ごとに行っている調査)によると、1日の歯みがき回数は調査ごとに増加し、口の中の健康に対する意識が高まっていることがうかがえます。

 一方、別の調査では、毎日歯みがきしているのに、口の中のネバつきや口臭などの不快感を感じている人が多く、その割合は年齢が高くなるほど増えていること、さらに、最近は歯のくすみや黄ばみに悩む人も増えていることが報告されています。

 これには、不十分・不適切なブラッシングによるみがき残しに加え、唾液分泌量の減少が問題になっていると考えられます。
 唾液の分泌量は加齢とともに減少し、とくに30代後半から40代にかけて徐々に減少し始めます。その年代に増えがちなストレスや疲れも一因でしょう。緊張すると口の中がカラカラになりますが、ストレス時は唾液の分泌が減少します。また、薬の副作用も唾液減少の原因になります。年齢を重ねるほど複数の薬を飲んでいる人が増えるのも、加齢による唾液の減少に拍車をかけているといえます。

 それでは、なぜ唾液が減少すると口の中の不快感が増すのでしょうか?

唾液分泌量の低下が口臭、むし歯や歯肉炎、歯のくすみの原因に

 健康な大人の場合、通常1日に1~1.5リットルもの唾液を分泌しているといわれます。唾液の働きでよく知られているのは、唾液中のアミラーゼという酵素がでんぷんを分解する消化作用でしょう。ほかにも、唾液は次のような働きをしています。

自浄作用:口の中の細菌や食べかすを洗い流す
緩衝作用:食後酸性になった口の中(酸が歯を溶かすためむし歯になりやすい)を中性に戻す
保護作用:粘性のたんぱく質が皮膜を作って粘膜や歯を保護する
抗菌作用:リゾチーム、ラクトフェリンなどさまざまな抗菌物質が細菌の繁殖を防ぐ
再石灰化作用:歯から溶け出したカルシウムやリンを唾液成分で補い、修復させる

 唾液は、このようにさまざまな働きをすることによって、口内を清潔にし、健康に保つ役割を果たしていたのです。だから唾液が減ると、口内が不潔になってネバつきや口臭をおこしたり、口の中が傷つきやすくなったり、むし歯や歯肉炎になりやすくなってしまうのです。

 さらに、唾液の減少による口内環境の悪化は、歯の白さを失う原因にもなります。高柳歯科医院副院長の高柳篤史先生はこう話します。
 「加齢とともに、歯はくすみ、黄ばんでいきます。その一因として、歯の表面を覆っているエナメル質の、光を散乱させる働きが低下し、もともと黄色っぽい象牙質が透けて見えることがあげられます」「それは、エナメル質にある電子顕微鏡でなければ見えないほど小さなすき間に、唾液成分のカルシウムやリンなどが堆積(たいせき)することによっておこります」

 唾液に含まれるカルシウムやリン、たんぱく質などの成分は、加齢とともに濃度が高まり、歯に堆積しやすくなります。唾液量の減少によって、唾液中のさらさらした成分が減ることで相対的に濃度が上昇するのですが、これらの成分は歯の表面にも堆積して、そこにコーヒーやタバコのヤニ、その他の飲食物の沈着汚れがつきやすくなることも、歯の白さを失う原因になります。

オーラルケアを見直して口内環境を整えよう

 唾液の減少による口内環境の悪化を改善するためには、どうしたらよいのでしょうか? まず一つ目は、唾液の分泌を増やすことです。
 高柳先生は「意識することで唾液は結構増やせるんですよ。耳の下やあごなどにある大きな唾液腺をマッサージするとか、梅干しのようなすっぱいものを食べたり思い浮かべるだけでも、唾液の分泌を促します」といいます。

 食生活も大切です。よくかんで食べることが唾液の分泌を促しますから、3食きちんと食べ、かみごたえのあるものをメニューにとり入れるとよいでしょう。砂糖の入っていないガムをかむのも効果があります。リラックスすると唾液の分泌アップにつながるので、少なくとも1日一度はリラックスタイムをもちたいものです。

 もう一つ大切なのが、毎日のオーラルケア(口の中のケア)を見直すこと。ていねいな歯みがきをこころがけ、口内を清潔に保ちましょう。眠っている間は唾液がほとんど分泌されないため、就寝前はとくに時間をかけてていねいにみがいてください。みがき残しやすい歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目はとくに意識して。舌の汚れを落とすことも口臭予防に有効です。

 どんなオーラルケア用品を選ぶかも大切です。さまざまなケア用品が市販されていますが、自分に合ったものを選ぶ目をもつようにしましょう。

歯ブラシ ヘッドが小さく毛先の平らな歯ブラシは、1本ずつていねいにみがける人にはよいが、短時間しかみがけない場合は大きめのブラシのほうが効率的。毛先が細いものを組み合わせて歯と歯の隙間をみがきやすいように工夫されたもの、歯ぐきにやさしい毛先が丸いものなど、さまざまなタイプがあるが、自分のみがき方、口の中の状態に合うものを選びたい。

歯磨き剤 フッ化物や抗菌成分、歯垢(しこう)を取り除く、つきにくくする、歯ぐきを引きしめるなど、むし歯や歯周病予防のための成分が配合されているもの、黄ばみをとる、つやを出すなど、歯を美しくする成分配合のものなどさまざまなものがある。

洗口液 液体のため有効成分が短時間で口の中全体に行き渡りやすいが、歯垢は取れにくいので、あくまで歯みがきの補助として。

 また、セルフケアとともに、歯科医院での定期チェックも忘れずに。歯みがきの仕方や、歯間ブラシ、デンタルフロスといった補助具の使用方法の指導を受けたり、歯石除去など自分ではできないところ、ケアしにくいところをみてもらいましょう。

 最後に、高柳先生はこう話しています。「毎日、ていねいに歯みがきするのがよいのはわかっていても、毎回ていねいにはできないこともあるでしょう。そんな場合は時間があるときに、例えば週末だけでも、鏡を見ながらしっかりみがくことが大切です。セルフケアがきちんとできない代わりに、定期的に歯科医にケアしてもらうというのも一つの方法だと思います。歯みがきしなきゃというストレスで、唾液の分泌を減らしてしまうことは避けたいですね」

【取材協力】
高柳 篤史先生


高柳歯科医院副院長
歯科医師、博士(歯学)。東京歯科大学卒業。同大学大学院修了(衛生学専攻)。平成10年より幸手市・高柳歯科医院にて父親とともに診療。平成14年花王ヘルスケア研究所嘱託研究員となる。平成20年より日本口腔衛生学会理事を務める。主な研究テーマは、(1)オーラル・ケアにおけるセルフ・ケアとプロフェッショナル・ケア、(2)唾液による口腔疾患のリスク評価、(3)歯の喪失に関する疫学的研究。

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