家族に介護が必要になったら-はじめの第一歩から相談できる機関

いざというとき、まず何をしたらよいのか知っておきましょう

突然家族や身近な人に介護が必要になったとき、あわてなくてすむように日頃から知っておきたいこと

誰もが高齢者、誰もが介護者の時代

 日本人の平均寿命をご存じですか? 男性79.2歳(世界第2位)女性86歳(世界第1位)。私たちの国は、世界に誇れる長寿国です。自立した生活が送れる「健康寿命」もやはり世界で第1位の75歳(全体で)。今から100年前の日本人の平均寿命は40代でした。医療技術の発達や衛生水準の向上が、こんなにも大きく私達の暮らしを変えたのです。

 高齢化率はどうでしょうか。現在の全国平均は22.1%(平成20年10月 総務省)、約4人に1人が高齢者です。デパートや公共の乗り物など身近な場所や地域でも、高齢者が増えていることを誰もが感じているのではないでしょうか。高齢化も世界に類のない速さで進行し、2055年には40.5%という推計が出ています。
 そして、少子化により高齢者を支える世代は減少しています。介護することもされることも、誰にとってもごく普通の暮らしの一部となりつつあるといえます。


歳を重ねるってどういうこと?

 突然の入院から介護が発生する場合もありますが、多くの場合徐々に、一人で身の回りのことをするのに不便が生じたり、あたりまえにしていた外出や食事など、日常のシーンが億劫になったりします。老化によって、心臓や肺など各臓器の機能や免疫力が低下し、病気にかかりやすくなったり、体の変化やさまざまな喪失体験(職業、配偶者、友人など)に伴い、心も不安になり消極的になりがちだからです。

 一般に65歳以上が高齢者とされていますが、老化には個人差があるということが特徴です。同じ70歳でも、寝たきりの方もお元気な方もいます。高齢者とひとまとめに考えずに、目の前の一人ひとりの体や心の様子、暮らしの様子をよくみつめることから始めることが大切です。自分の都合ではなく、よく話を聴いてありのままを受け止めましょう。しかし相手の身になるのはとても難しいことです。

 誰もが高齢者になるのは初めてですから、自分におこっている変化に戸惑っているはずです。身の回りのことが不自由だからとすべてお世話してしまうのではなく、本人の希望を聴いて、自分でやりたいことは工夫や手助けをしながら続けてもらうことも大切です。本人の意思を尊重することが、「自分らしく」生きることにつながります。

介護も社会化の時代

 少子高齢化が進む中、もはや介護は家族だけで対処できる問題ではなくなってきています。「老老介護」「認認介護」などという言葉や、虐待や孤独死などの切ない事件を耳にすることも多くなりましたが、介護も社会化の時代です。すべてを一人で抱え込まず、社会的なサービスを活用しながら支援していきましょう。

 2000年から始まった介護保険制度は、介護にかかる負担を社会全体で支える制度です。これによって、それまでのように決められたサービスを利用するのではなく、必要な人が必要なサービスを介護の専門家とともに選び、気がねなく利用できるようになりました。「与えられるサービス」から「選べるサービス」へと大きく変わったのです。

 40歳以上の国民は介護保険料を毎月支払っています。その中で介護保険サービスを受けられるのは、次の場合です。
(1)65歳以上の高齢者で介護が必要と認定された人
(2)40~64歳の医療保険に加入している人で、特定疾病により介護が必要と認定された場合
(特定疾病は老化に伴う病気:脳血管疾患や慢性関節リウマチなど16疾病)

 介護保険サービスには在宅サービスや施設サービスなどさまざまなサービスがありますが、だまっていてはサービスを受けることはできません。まず、お住まいの地域の市区町村の窓口で「要介護認定」の申請をすることから始めましょう。申請後、訪問調査員が利用者宅を訪れ、本人の心身の状況や日常生活の自立度などの調査を行い、その結果により要介護度が決定されます。
 要介護度は、介護にならないように予防が必要な「要支援1・2」、介護が必要な「要介護1~5」(最も軽い状態が1)という7段階に分類され、要介護度に応じたサービスを受けることができます。「自立」と認定されると介護保険によるサービスは受けられず、市区町村や民間のサービスを利用することになります。
 お住まいの近くの地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談しながら、介護保険やそのほかのサービスを上手に活用しましょう。


一人で抱え込まないで誰かに話してみましょう

 郷里の親は遠方で、なかなか市区町村の窓口まで出かけられない。地域の目が気になり相談しにくい。気になってはいるけれど仕事が忙しくて情報が得られない。さまざまな状況の中で親を心配しながらも一歩が踏み出せない方も多いのではないでしょうか。初めてのことは誰もが不安を感じます。

 まずは、はじめの第1歩として気軽に電話してみましょう。進む方向が見えると安心しますね。また、現在はインターネットで地域の介護サービス情報や介護保険の仕組みなどの情報を得ることもできます。いつでもどこでも自由に情報が得られるインターネット情報も上手に活用されることをおすすめします。

【相談機関】
●お住まいの地域の市区町村の介護保険課や高齢福祉課などの窓口
●お住まいの地域の地域包括支援センター(2006年より開設。担当地域の住民を対象に、介護保険に関するさまざまな支援を行う。要介護認定の申請も受け付ける)

【電話相談】
●「介護支え合い電話相談」0120-070-608
厚生労働省の助成を受けて国際長寿センターが実施

【インターネット情報】
●WAM NET(ワムネット):独立行政法人 福祉医療機構運営の福祉・保健・医療の総合情報サイト
介護事業者情報 http://www.wam.go.jp/kaigo/
介護早わかりガイド http://www.wam.jp/kaigo_guide/

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
川上 由里子先生 


介護コンサルタント
ケアマネジャー、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、産業カウンセラー。1984年より13年、大学病院、高齢者住宅(聖路加レジデンス)などで看護師として勤め、現在は三井不動産(株)ケアデザインプラザにて、シニアライフ提案のコンサルティングや講演を行う。著書に『介護生活これで安心』(小学館)。08年5月より、ニッポン放送「ラジオケア・ノート」(毎月第4週の月~金)にレギュラー出演中。08年春より自身も父親の遠距離介護を体験中。

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